ボツネタ・1月18日付け記事より。
http://d.hatena.ne.jp/okaguchik/20070118/p8
この記事によると,荒井裕樹弁護士の準備書面の例が雑誌に掲載されており,準備書面の長さは一般的な弁護士の3倍くらいあり,色は3色,下線を引いたり文字サイズを変えたりと,見やすさ重視の文章術を駆使しているそうです。
そういえば,同弁護士の著書『プロの論理力』にも,同じようなことが書いてあったような気がします。
黒猫は,荒井先生とは一応学生時代に面識があって(その後の交流はないので,彼の方は忘れているかも知れませんが),彼が法学部緑会の委員長,黒猫は会計をやっていました。もっとも,日常の会務は大体黒猫がやっていて,緑会委員としては彼より黒猫の方が知られていたと思います。司法試験では彼に1年先を越されてしまい,周囲にはなんであいつが受かって黒猫が落ちたんだなどと言ってくれた人もいましたが,理由は単純で,彼はたしか大学1年の頃から司法試験の勉強をしていて,しかも法学部の授業にはほとんど出ず予備校での勉強もアウトプット重視という超「合理的」な勉強の仕方をしていましたから。
一方黒猫の場合,司法試験の勉強を始めたのは大学3年からで,法学部の授業にも大体出ていて,しかも法学部卒業には90単位取れば済むところを,1年間司法留年した分を含めると160単位以上も取って,しかも留年時には,単位もつかないのに外国独禁法やら住民訴訟やらのゼミにも出席させてもらい,論文試験の直前には,単位は付くものの司法試験とは全く関係のない租税条約のゼミのレポートを書くのに没頭し(提出期限が試験の前日だった),おかげで直前対策がろくに出来なかったという,今考えてみればなぜあんなことをしたんだろうと思うほどに「不合理」な勉強の仕方をしていたのですが,それでもその年に合格できましたから。
実質的な受験勉強期間は,黒猫は彼と同程度かちょっと短いくらいでしょう。
でも,彼は良いボス弁には恵まれたようですね。それに引き換え,うちの所長と来たら・・・。
単なるひがみや愚痴はこのくらいにして,本題に入ります。
荒井先生の準備書面は,彼の著作に書いてあったことなどから察するに,おそらくボス弁の升永弁護士のやり方を踏襲した,いわゆる「升永流」の準備書面なのでしょうが,黒猫はその現物や書式例を見たことがないので,その当否自体についての意見はここでは留保します。以下では,準備書面の長さその他の各論について考察していきます。
1 準備書面の長さ
準備書面の長さは,事件の種類や性質にもよりますが,短いものであれば1~2枚のこともあるし,長ければ6~10枚くらいが標準的なところではないかと思います。
黒猫の場合は6~10枚くらいになることが多く,ある事件で裁判長に「力作だねえ」と言われた準備書面でも,せいぜい10枚くらいだったと思います(でも,結局その事件自体は負けてしまったので,力作でも何の意味もないのですが)。
ただ,このブログを見れば分かるとおり,黒猫の文章はどうしても長文になる癖があるので,準備書面も通常の弁護士よりは「やや長い方」だと思います。
荒井先生の著作によると,升永先生の事務所はかなり複雑困難な民事事件を多く取り扱うらしいので,自然と準備書面も長文になるのでしょう。
でも,準備書面も,ただ長ければよいというわけではありません。あまり長いと,裁判官がろくに読んでくれない可能性もありますからね。
正確には準備書面の話ではないかもしれませんが,黒猫が司法修習時代,独禁法の審判事件を傍聴したことがあり,そのときの公取委側の最終弁論(?)の書面が約60頁だったので,被審人側の最終弁論の書面もそれに対抗して60頁書くということで,その朗読(公取委の審判は事件数が少ないせいか,弁論の書面もいちいち全文を朗読していました。ただし,これは平成12年末の話であり,現在どうなっているかは知りません)を聞いていました。
ところが,その内容を聞いていると,要件事実的に意味がありそうなのは「公取委の出した調査結果は,被審人のライバル会社の関係者が出したものであるから信用性がない」といった程度のもので,あとは単なる愚痴ばかり。中には,公取委の「警告」に対する不服申立てが認められないのはおかしい,警告に対する不服申立ても認められるべきである,なんてものもありました。事件に関する弁論の書面で立法論述べてどうすんじゃい。(注:公取委の「警告」は,法律上の根拠規定がない「行政指導」の一種であり,法的強制力はないため,これに対する不服申立てや取消訴訟などを起こすことはできません。ロースクール生なら行政法もやっているので説明の必要はないでしょうが,念のため。)ちなみに,公取委側の最終弁論はもちろんまともな内容でした。
傍聴から帰ってから,黒猫は「何だあの弁論は。長いだけで何の意味も無いじゃないか!」と激怒したのですが,同じ班の某修習生には,「いや,僕は説得力のある書面だと思ったけど・・・」と言われました。
そうですか。おかしいと思ったのは私だけですか。おかしいのは黒猫のほうですか。
2 文字サイズ
裁判関係の文書は,現在ではA4横書き,文字の大きさは12ポイントというのが標準書式になっており,ほとんどの弁護士はこの標準書式で書いていると思われます。黒猫もそうしています。
文字サイズを変えるというのは,黒猫は準備書面でやったことはなく,やろうと思ったこともないですね。下手に大きな文字なんかを使うと,なんかふざけたような感じになって,書面としての品位が落ちるような気がするので。
3 文字の色・アンダーライン
一般論としては,黒一色が圧倒的多数派でしょうね。カラーの文字を使った準備書面など,修習生時代にも実務に入ってからも,ほとんど見たことないです。アンダーラインも使われる例はかなり少ないと思われます。
ただ,黒猫自身は,文字の色を赤にするとか,アンダーラインを入れるといったことも時々やります。実際にやったのは,どうしても強調したい一言があるときとか,相手方が露骨なミスをやらかしたのでそれを指摘するときとか。特に後者は,単なるからかい半分とかいたずら半分といった感覚ですね。時にはちょっとした遊び心もないと,弁護士なんて暗い仕事はとてもやってられません。
4 その他
文書の項目立てですが,公文書が横書きになってからの公式な項目立ては,
第1
1
(1)
ア
(ア)
といった感じだったと思います(ただし,黒猫は後述のとおりこれをあまり重視していませんし,実際の公文書もケース・バイ・ケースといった感じなので,あるいは記憶違いがあるかも知れません)。
弁護士の中には,この公式な項目立ての方式をきっちりと遵守している人もいますが,黒猫はあまり遵守していません。
上記の項目立てを見て,素朴な疑問として真っ先に挙がるのは「なぜ①とかを使わないのか」ということではないかと思います。黒猫が修習をしていた時期は,ちょうど裁判書式が縦書きから横書きに変わった時期なのですが,横書き用の項目立てを見た某裁判官は,「なんで(1)からいきなり「ア」なんだ。①でいいじゃないか」と言っていました。
察するに,公式の項目立てで①が使われないのは,①が機種依存文字なので,公文書をホームページで公開する際などに支障を生ずるおそれがあるということではないかと思われます。ただ,それならば,ホームページに公開されることもある判決文ならばともかく,訴状や準備書面の類をホームページで公開するなんてことは基本的にないから,別に①などを使っても構わないかということで,黒猫が作る準備書面では,平気で①なども使いまくっています。
以上ですが,何か考察というより与太話のような感じになってしまいましたね。
http://d.hatena.ne.jp/okaguchik/20070118/p8
この記事によると,荒井裕樹弁護士の準備書面の例が雑誌に掲載されており,準備書面の長さは一般的な弁護士の3倍くらいあり,色は3色,下線を引いたり文字サイズを変えたりと,見やすさ重視の文章術を駆使しているそうです。
そういえば,同弁護士の著書『プロの論理力』にも,同じようなことが書いてあったような気がします。
黒猫は,荒井先生とは一応学生時代に面識があって(その後の交流はないので,彼の方は忘れているかも知れませんが),彼が法学部緑会の委員長,黒猫は会計をやっていました。もっとも,日常の会務は大体黒猫がやっていて,緑会委員としては彼より黒猫の方が知られていたと思います。司法試験では彼に1年先を越されてしまい,周囲にはなんであいつが受かって黒猫が落ちたんだなどと言ってくれた人もいましたが,理由は単純で,彼はたしか大学1年の頃から司法試験の勉強をしていて,しかも法学部の授業にはほとんど出ず予備校での勉強もアウトプット重視という超「合理的」な勉強の仕方をしていましたから。
一方黒猫の場合,司法試験の勉強を始めたのは大学3年からで,法学部の授業にも大体出ていて,しかも法学部卒業には90単位取れば済むところを,1年間司法留年した分を含めると160単位以上も取って,しかも留年時には,単位もつかないのに外国独禁法やら住民訴訟やらのゼミにも出席させてもらい,論文試験の直前には,単位は付くものの司法試験とは全く関係のない租税条約のゼミのレポートを書くのに没頭し(提出期限が試験の前日だった),おかげで直前対策がろくに出来なかったという,今考えてみればなぜあんなことをしたんだろうと思うほどに「不合理」な勉強の仕方をしていたのですが,それでもその年に合格できましたから。
実質的な受験勉強期間は,黒猫は彼と同程度かちょっと短いくらいでしょう。
でも,彼は良いボス弁には恵まれたようですね。それに引き換え,うちの所長と来たら・・・。
単なるひがみや愚痴はこのくらいにして,本題に入ります。
荒井先生の準備書面は,彼の著作に書いてあったことなどから察するに,おそらくボス弁の升永弁護士のやり方を踏襲した,いわゆる「升永流」の準備書面なのでしょうが,黒猫はその現物や書式例を見たことがないので,その当否自体についての意見はここでは留保します。以下では,準備書面の長さその他の各論について考察していきます。
1 準備書面の長さ
準備書面の長さは,事件の種類や性質にもよりますが,短いものであれば1~2枚のこともあるし,長ければ6~10枚くらいが標準的なところではないかと思います。
黒猫の場合は6~10枚くらいになることが多く,ある事件で裁判長に「力作だねえ」と言われた準備書面でも,せいぜい10枚くらいだったと思います(でも,結局その事件自体は負けてしまったので,力作でも何の意味もないのですが)。
ただ,このブログを見れば分かるとおり,黒猫の文章はどうしても長文になる癖があるので,準備書面も通常の弁護士よりは「やや長い方」だと思います。
荒井先生の著作によると,升永先生の事務所はかなり複雑困難な民事事件を多く取り扱うらしいので,自然と準備書面も長文になるのでしょう。
でも,準備書面も,ただ長ければよいというわけではありません。あまり長いと,裁判官がろくに読んでくれない可能性もありますからね。
正確には準備書面の話ではないかもしれませんが,黒猫が司法修習時代,独禁法の審判事件を傍聴したことがあり,そのときの公取委側の最終弁論(?)の書面が約60頁だったので,被審人側の最終弁論の書面もそれに対抗して60頁書くということで,その朗読(公取委の審判は事件数が少ないせいか,弁論の書面もいちいち全文を朗読していました。ただし,これは平成12年末の話であり,現在どうなっているかは知りません)を聞いていました。
ところが,その内容を聞いていると,要件事実的に意味がありそうなのは「公取委の出した調査結果は,被審人のライバル会社の関係者が出したものであるから信用性がない」といった程度のもので,あとは単なる愚痴ばかり。中には,公取委の「警告」に対する不服申立てが認められないのはおかしい,警告に対する不服申立ても認められるべきである,なんてものもありました。事件に関する弁論の書面で立法論述べてどうすんじゃい。(注:公取委の「警告」は,法律上の根拠規定がない「行政指導」の一種であり,法的強制力はないため,これに対する不服申立てや取消訴訟などを起こすことはできません。ロースクール生なら行政法もやっているので説明の必要はないでしょうが,念のため。)ちなみに,公取委側の最終弁論はもちろんまともな内容でした。
傍聴から帰ってから,黒猫は「何だあの弁論は。長いだけで何の意味も無いじゃないか!」と激怒したのですが,同じ班の某修習生には,「いや,僕は説得力のある書面だと思ったけど・・・」と言われました。
そうですか。おかしいと思ったのは私だけですか。おかしいのは黒猫のほうですか。
2 文字サイズ
裁判関係の文書は,現在ではA4横書き,文字の大きさは12ポイントというのが標準書式になっており,ほとんどの弁護士はこの標準書式で書いていると思われます。黒猫もそうしています。
文字サイズを変えるというのは,黒猫は準備書面でやったことはなく,やろうと思ったこともないですね。下手に大きな文字なんかを使うと,なんかふざけたような感じになって,書面としての品位が落ちるような気がするので。
3 文字の色・アンダーライン
一般論としては,黒一色が圧倒的多数派でしょうね。カラーの文字を使った準備書面など,修習生時代にも実務に入ってからも,ほとんど見たことないです。アンダーラインも使われる例はかなり少ないと思われます。
ただ,黒猫自身は,文字の色を赤にするとか,アンダーラインを入れるといったことも時々やります。実際にやったのは,どうしても強調したい一言があるときとか,相手方が露骨なミスをやらかしたのでそれを指摘するときとか。特に後者は,単なるからかい半分とかいたずら半分といった感覚ですね。時にはちょっとした遊び心もないと,弁護士なんて暗い仕事はとてもやってられません。
4 その他
文書の項目立てですが,公文書が横書きになってからの公式な項目立ては,
第1
1
(1)
ア
(ア)
といった感じだったと思います(ただし,黒猫は後述のとおりこれをあまり重視していませんし,実際の公文書もケース・バイ・ケースといった感じなので,あるいは記憶違いがあるかも知れません)。
弁護士の中には,この公式な項目立ての方式をきっちりと遵守している人もいますが,黒猫はあまり遵守していません。
上記の項目立てを見て,素朴な疑問として真っ先に挙がるのは「なぜ①とかを使わないのか」ということではないかと思います。黒猫が修習をしていた時期は,ちょうど裁判書式が縦書きから横書きに変わった時期なのですが,横書き用の項目立てを見た某裁判官は,「なんで(1)からいきなり「ア」なんだ。①でいいじゃないか」と言っていました。
察するに,公式の項目立てで①が使われないのは,①が機種依存文字なので,公文書をホームページで公開する際などに支障を生ずるおそれがあるということではないかと思われます。ただ,それならば,ホームページに公開されることもある判決文ならばともかく,訴状や準備書面の類をホームページで公開するなんてことは基本的にないから,別に①などを使っても構わないかということで,黒猫が作る準備書面では,平気で①なども使いまくっています。
以上ですが,何か考察というより与太話のような感じになってしまいましたね。
AIR BLAN SERVICEっていうんだけど、そこのプロモーションビデオが
www.ganzis.jp に掲載されているからみてみて(^^)
ちなみにその動画コメント欄に動画専用クーポンがついていますよ。
全品 ~offになっているので必見!!
あとwww.hotpepper.jp/A_20100/strJ000064038.html にも掲載されているのでそちらもどうぞ!
準備書面の長さのことですが、荒井先生の書面は拝見していませんが、私個人的には、長いものは嫌いですね。裁判所が読んでくれるかどうかに関心があるのはもちろんですが、自分自身読み返すのも、長い文章だと嫌になります。
「与太話」で失礼しました。