<2174> 余聞、余話 「晩秋の一景 ~柿の木に寄せて~」
晩秋の一景子規と語らばや
晩秋と言えば、柿の稔る季節。大和で柿と言えば、正岡子規の「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」の句が思い起こされる。この句は歴史と自然の融合する「大和路」と呼ばれる奈良大和の土地柄を法隆寺の鐘の音と素朴な柿の実によって表し、「食へば」という言葉によって子規の大和に対する思い、即ち愛情の加味されている点が感じられるところであるが、なお加えて言えば、この句には赤い実を生らせる大和の柿の木の風景がバックボーンにあって、読むものにその風景を想像させるところがある。
晩秋の大和路を歩いていると、どこかでこうした柿の木の風景に出会う。十一月の末だったが、この赤い実を生らせる柿の木の風景に出会った。この日はよく晴れ、夕陽を受けて燃えるような周囲の紅葉の中で、葉をすっかり落とした柿の木が熟柿の時を迎え、ヒヨドリやツグミといった野鳥たちが来て、その赤い熟柿に夢中になっていた。それは日が西に傾き尽くすまでの見飽きることのない自然が醸し出す美しい風景のひとときだった。ここにそのときの写真を紹介したいと思う。 柿の木の一景大和なりにけり
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