大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年11月04日 | 植物

<1771> 余聞・余話 「帰り花」

      小春なる慈愛の日差し暖かく 帰り花咲く公園通り

 陰暦10月を小春という。現在の11月、初冬のころに当たる。この時期は風雨の少ない気象条件となり、穏やかに晴れて春を思わせるような暖かな日になることが多いことから、この時期を小さな春とみて小春と称し、この時期の晴れた暖かな日を小春日と呼び、そのような天気を小春日和と呼ぶようになった。『徒然草』の「十月は小春の天気」(155段)とあるから、小春は中世には用いられていた言葉であるのがわかる。誰が言い出したのか、小春にはほっこりとした心持ちが纏う。

        

  この小春のころ、ときならぬ花が咲き出すことがある。この花を帰り花という。サクラ、ナシ、ヤマブキ、ツツジなどの樹木によく見られ、草花でも実を成す時期のカキツバタの仲間や閉鎖花の時期であるスミレ類にも見られることがある。タンポポにも見られるが、セイヨウタンポポは年がら年中花を咲かせるので、帰り花には相応しくない印象が拭えない。

 帰り花はほかにも、帰り咲、返り花、返り咲、狂い咲、狂い花、二度咲、忘れ花等々の言い方が見られ、俳句では冬の季語として用いられている。和歌の世界では馴染みのない言葉で、もっぱら季節を込めて一句を成す俳句の世界に登場して来た言葉と言えるようである。冬の季語で言えば、小春、小春日、小春日和も然り、同じような意味の小六月(ころくがつ)にも言える。木守柿、冬至梅、凍蝶、冬木立なども俳句の世界に登場が多いと言えようか。みな自然に関わる言葉である。 写真は暖かな日差しを受けて咲くコヒガン(小彼岸)の帰り花(左)、スミレの帰り花(中)、スミレの閉鎖花と実(右)。

 それぞれにみなほっこりと帰り花

 


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