大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年12月26日 | 写詩・写歌・写俳

<1823> 余聞・余話 「モズの速(早)贄」

       それぞれにこの世を背負ひ生きてゐる鳥獣虫魚も私(わたくし)たちも

 我が家の近辺には秋になるとモズ(百舌・鵙)がやって来る。けたたましい独特の鳴き声は「モズの高鳴き」と言われ、室内にいても聞こえ、その存在を知らしめるところがある。春のウグイスや夏のホトトギス、ほかにもホオジロ、ヨシキリ、ヒバリ、オオルリ、カッコウ等々、これらの鳥はみな季節の到来を告げて鳴くが、秋は何と言ってもモズである。

  よく高い木の頂や電線などに止まっているのを見かけるが、スリムな尾の長い体形に鋭い嘴、眼光炯然たる眼の持ち主、その精悍さに加え、あの独特の鳴き声が加わる。それはまさに鋭さを身に負う鳴き声である。このモズに、その鋭さ、精悍さを物語る今一つの特徴が見られる。それは捕えた獲物を木の枝先や棘などに刺し置くという習性である。

         

  餌の少なくなる冬場に備えて蓄えて置く備蓄の知恵の働きによるものか、それは定かではないようであるが、捕まえた昆虫のような小動物を直ぐには食べず、木の枝などに刺して置くという次第である。これを「鵙の速(早)贄(はやにえ)」といい、俳句では「鵙の贄」とか「鵙の贄刺」とも表現し、秋の季語である。モズ自身も秋の季語で、その鳴き声も同様である。

  このモズの速(早)贄がこの間収穫をした我が家の庭の柚子の木に見られた。柚子の木には枝ごとに堅くて鋭い大きい棘があり、モズの速(早)贄には絶好の枝で、鎌の肢と頭が失われたカマキリの腹の部分が棘に差し込まれ、ぶら下がっていた。モズはこの間から飛び回り、近くの電線なんかにも止まって辺りの様子をうかがう風が見られたが、多分、そのモズに違いない。

  いつまでカマキリは棘に刺さった状態でいるのか、観察してみたいが、モズの速(早)贄の賞味期限はどうなのだろう。また、刺された鎌の肢と頭のない無惨な姿のカマキリにはタマゴを産みつけた後かも知れない。近くの枝に淡褐色の麩のようなタマゴが見える。そうであれば、犠牲になったカマキリも浮かばれるというもの。こうでなくちゃあみんなが生きているこの世の中はうまく行くまいとも思われたりする。 

 写真は電線に止まって甲高い声で鳴くモズ(左)と柚子の棘に刺された鎌の肢と頭のないカマキリの速(早)贄(中)、柚子の枝に産みつけられたカマキリのタマゴ(右)。 

 


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