大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年09月06日 | 植物

<2077> 大和の花 (312) カラムシ (茎蒸)                                    イラクサ科 カラムシ属

                                                    

 道端の草叢などに生える高さが1メートルから1.5メートルほどになる多年草で、葉は長さが10センチから15センチの広卵形で、縁にはイラクサ科の中ではあまり大きくない鋸歯が見られ、先が尾状に尖る。表面はざらつき、裏面は綿毛に被われ、白く見え、互生する。

 雌雄同株で、花期は8月から10月ごろ。花は単性で、雄花序は茎の下部、雌花序は上部につく。イラクサ科の仲間は風媒花で、雄花は開花と同時に花糸がはじけ花粉をまき散らす。花は雄花も雌花も淡緑色で、雌花は球状に集まり、穂状につく。実は痩果。

 カラムシ(茎蒸)の名はこの茎(幹・から)を水に浸した後、蒸して繊維を取ることによる。別名はマオ(真麻)、クサマオ(草真麻)。別名の由来は繊維が丈夫なため、アサ(麻)に比したのだろう。漢名は苧麻(ちょま)。本州、四国、九州、沖縄に分布し、大和(奈良県)でも雑草然として群生しているのに出会う。繊維を取るため植栽もされている。

  茎から取れる繊維は強靭で、水に強く、網や消火ホースなどに利用される。この繊維で織った布は上布(じょうふ)と呼ばれ、越後上布、宮古上布(薩摩上布)などがよく知られる。なお、縄文人は釣り糸にした形跡があるという。 写真は群生するカラムシ。葉裏が風に翻って白く見える(左)と大量の花をつけたカラムシ(右)。   はて何処に近くに聞こゆ虫の声

<2078> 大和の花 (313) アカソ (赤麻) と クサコアカソ (草小赤麻)       イラクサ科 カラムシ属

      

  山野の少し湿り気のあるような草叢などに生え、枝を分けず高さが50センチから80センチほどに斜上して立つものが多い多年草で、茎や葉柄が赤味を帯びるのでこの名がある。葉は大きいもので長さが20センチほどの卵円形で、3脈が目立ち、先は浅く3裂し、中央の裂片が尾状に尖り、縁には不揃いの大きな鋸歯が目立ち、対生する。

  花期は7月から9月ごろ。雌雄同株で、雄花序は茎の下部につき、淡黄白色の雄花を穂状につく。雌花序は上部につき、雄花序より小さく、赤味を帯びる。雌花は球状に集まり、球状の塊が花序に密に連なる。ほかの草に紛れて生えるが、この赤味のため目につく。

  北海道、本州、四国、九州に分布し、大和(奈良県)でも見られる。なお、葉の先が3裂せず、尾状に鋭く尖るものをクサコアカソ(草小赤麻)、別名マルバアカソ(丸葉赤麻)という。 写真左はアカソ。右2枚はクサコアカソ。   一斉に穂を成し赤麻の一集団

<2079> 大和の花 (314) コアカソ (小赤麻)                                   イラクサ科 カラムシ属

                                               

  明るく湿った谷川沿いや林縁などに多く、岩場にも見られる落葉小低木で、高さは1メートルほどになり、群生することが多い。アカソ(赤麻)によく似るが、株立ちし、多数分枝する。葉は対生し、長さ5センチ前後の菱状卵形で、先端は尾状に尖り、縁に大きな鋸歯がある。葉はアカソよりも小さいのでこの名があるか。木本が最も特徴的なところである。

 雌雄同株で、花期は8月から10月ごろ。雄花も雌花も穂状花序につき、雄花序は枝の上部、雌花序は下部に集まる。本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島から中国に見られる。大和(奈良県)では、山道などで群生するのに出会う。枝や葉がバラ科の落葉小低木のコゴメウツギ(小米空木)に似るが、花の違いは明らかである。  

  コアカソの雄花の花被と雄しべは4個。雌花は数個の小花が固まって穂状に連なり、葉腋から伸び出す。 写真はコアカソ。谷川沿いに群生して花を咲かせていた(左)と霧雨に濡れて雌花を連ねる雌花序(右)  秋来たる世の騒動に関はらず

<2080> 大和の花 (315) ヤブマオ (薮芋麻) と メヤブマオ (雌薮芋麻)      イラクサ科 カラムシ属

        

  ヤブマオ(藪芋麻)は山野のそこここに見られる多年草で、茎は分枝せず、直立して1メートル前後の高さになる。対生する葉は長さ10センチから15センチの卵状楕円形、または卵形で、触るとざらざらしている。縁には大きく鋭い鋸歯があり、先は尾状に尖る。

  雌雄同株で、花期は8月から10月ごろ。茎の下部には雄花序、上部には雌花序がつき、球形に固まり、穂状に連なる緑白色の雌花がよく目につく。ヤブマオの名は薮に生えるカラムシ(茎蒸)のマオ(芋麻・真麻)に似ることによる。全国各地に分布し、大和(奈良県)でも普通に見られる。

  仲間には穂状花序が細く、葉が卵円形で、不揃いの大きな鋸歯を有するメヤブマオ(雌薮芋麻)があり、本種も雌雄同株で、分布も花期もほぼヤブマオに似て、大和(奈良県)でも見かける。 写真の左2枚は花を咲かせるヤブマオと雌花序のアップ。右の2枚は群生して花を咲かせるメヤブマオと雌花序のアップ。 撞くものの意思にしてある鐘なれど鐘とはいはば聴くものに鳴る