前日までの台風の影響で、少し肌寒い出発となりました。
風が強いので、昨日カインズで買った298円の麦藁帽子がかぶれないんじゃないかと心配しましたが,
午前9時に出発してから1時間ほどして、風が少し弱まったので、無事、帽子もかぶることができました。
特に、あてはありませんが、とにかく西に向かいます。
西伊豆まで歩くには、峠を3つほど越えなければなりませんが、考えるとイヤになるので、とにかく歩きます。
まずは、冷川峠。
2時間ほど歩いたでしょうか、ちょっと休憩。
富士山をパチリ。
トマトが売っていたので、“150円は安い”、ひとつ食べました。
県道59号線(田んぼの中の細い道)を西に進みます。
伊豆(日本)は、水が豊富ですね。
今回、歩いていたときは、必ず水のせせらぎ(または潮騒)が聞こえてました。
田んぼの坂を上っていくと、稲が次第にわさびに変わって行きます。
(稲は少しだけ穂を出していました。)
出発して4時間。
お昼ごはんです。
全長2キロにも及ぶ広大なわさび田を抜けると、今度は、延々と続く(気がしました。)人工林の林道の上り坂続きます。
どうせ誰もいないので、時々大声を出しながら進みます。
しっかし、ヒノキの人工林というのは、全く生き物の気配がしませんね。(なにかいても困るけど。)
国士峠を越えます。
今度は、下り坂。
筋肉に負担のかかるのは、下り坂ですね。
左足の膝の裏と、右足のかかとが痛みます。
長い長い下り坂を下りると、そこは湯ヶ島です。
湯ヶ島を少し北上して、さらに西に向かいます。
歩き始めて8時間、休憩も20分ほどとりましたが、足がかなり悲鳴を上げ始めました。
そこに、通りすがりに日帰り温泉。
入るしかありません。
川沿いの露天風呂。
いい感じに1時間休憩。
6時20分に再出発。
再び歩き始めます。
しばらく歩くと、あることに気づきます。
土肥までは、あと15キロ。
歩けば3時間。
日が暮れるまでは、あと1時間。
ヤバイ!こんな山道、暗闇であるけるわけない。(後に歩くことになります。)
だんだん、心細く思ってきたとき、歩いていた反対側の斜面から“ブフォ”。
イノシシやんか!
動物よけのフェンスの向こうとはいえ、はじめて見る野生のイノシシです。(そのフェンスは、途中で途切れていました。げっ!)
イノシシにビビッたところに、今度は“キェー”と不気味な鳥の声。
ヤバイ。
おそらく、このまま歩いていけば、山奥の一軒家の明かりが見えて、その家の戸を叩くと笑顔の老夫婦が出迎えてくれて、そこで一晩過ごすことになり、目が覚めると、何年も人が住んでいない廃屋だった。
という、パターンに決まっている。
(-"-;A
イノシシに不気味な鳥の声、そして、老夫婦。
バスに乗ろう!
なでしこジャパンの影響は受けているものの、あきらめないことも大切かもしれないが、ここは、バスでしょ。
バスの本数は1時間に1本。
行き先を確かめるのに、バス停の表示は見ているので、それは知っている。
バス停まで、どれくらい歩くのかがわからない。
バス停を探します。
そこから3キロほど歩いたところにバス停はありました。
バスの時間までは10分ほどあるので、夕飯にします。
立ち止まると、汗が冷えて寒いのです。
バスに乗り込むと、一路土肥へ。
土肥に着いたのが、19時30分。
もう、完全に日が暮れてしまいました。
本来でしたら、西伊豆の綺麗な夕日や景色の写真をアップする予定だったのですが、すべては闇の中・・・。
同じ伊豆半島でありながら、西伊豆と東伊豆は空気が違います。
東伊豆のほうがジメッとしている感じ、西伊豆の方が明るい感じがします。
そんな西伊豆の空気を感じながら、また歩き始めたのですが、そろそろ寝床を確保しなければなりません。
が、この辺は、集落も少なく、なかなか適当な場所が見つかりません。
そこで、もう一度バスに乗り、松崎まで行くことに決めました。
時刻は8時30分。最終のバスです。
松崎の手前2キロのところでバスを下り、寝床を探します。
この日は、夜になるとまた風が出てきたので、ちょうど閉店しているスーパーの軒先に、風が防げる場所を探し、そこで休むことにしました。
生まれてはじめての野宿です。
なんだか悪いことをしているような気分がします。
人目につかないように、段ボールを下にして横になります。
さむっ。
2時間ほど横になってたでしょうか。
長袖、長ズボンには着替えたのですが、まさか、こんなに寒いとは思わず防寒対策をしてこなかったので、体が冷えてしまい、蚊も気になり、目が覚めてしまいます。
予定では、朝になってから出発して、松崎から東に抜ける予定でしたが、このままでは凍えてしまいます。
“歩こう”
また、歩くことにしました。
途中、カラオケボックスがあり、AM4時まであいているので、ここで仮眠しようかなっと迷いました。
このまま進んでいけば、真夜中に山道を通らねばなりません。
老夫婦に遭遇したら困るので、それだけは避けたかったのです。
しかし、なんとなくカラオケボックスは止めにして、また歩くことにしました。
時間は、0時過ぎです。
橋の手前を左に曲がりました。
その道をまっすぐ行けば、35キロ先に下田があります。
川沿いの道を東に進みますが、初めてきた土地なのに、なぜか記憶にあるような感じがします。
“この川の感じ、どこかで、う~ん”
しばらく行くと屋根のあるバス停があり、そこで仮眠することにしました。
200m先にセブンイレブンが見えたので、そこまで歩き、ビールとスルメを買い、バス停に再び戻り、プシュ。
そして、横になります。
蚊と寒さに再び起こされたのが、AM1時30分です。
セブンイレブンを左手に見ながら、また、歩き始めます。
“さっき、新聞紙買っとけばよかった”
(今回の旅?で持っていけばよかったものナンバーワンは新聞紙です。新聞紙があれば防寒ができました。)
この辺は、田んぼの中に民家が点在しています。
途中、田んぼの側道で、何回か時間稼ぎのための休憩を取ります。
しばらく歩くと、道が少しづつ上り坂になり、両脇の山が少しづつ近づいてきます。
そういえば、民家のもだんだん少なくなってきました。
街灯の感覚も長くなってきましたが、この日は、半月でしたが、月明かりで夜の景色ははっきりと見えます。
星が綺麗です。
と、思っていたら、最後の民家を通り過ぎたみたいで、街灯もなくなり、道は明らかに上り坂。
とうとう、真夜中の山の中へ。
時間は、草木も眠るAM3時。
“あと1時間すれば、夜が明ける”
と、自分を励ましながら進みます。
ここで、休憩する勇気はないので、もう歩き続けるしかありません。
真夜中の森は、幻想的な世界です。
紫色の木々シルエットや、モノクロの川の流れが気持ちを落ち着かせてくれます。
30分に一台くらいの割合で車が通りますが、ドライバーは私の姿にびっくりしたことでしょう。
まさか、こんな時間に、こんなところに、人が歩いているわけありませんから。
横になると寒く感じていた気温も、歩き始めれば快適に変わります。
足の痛みはしょうがないとしても、それ以外は気持ちよく歩くことができていました。
ところが・・・
ガサッ、バキッ!
藪の中から生き物の気配。
ひぇーーーー。
イノシシ?鹿?熊?まさか、老夫婦?
冷や汗が背中をつたうのがわかります。
もう、足が痛いとか言ってられません。
自然と歩くペースは早くなります。
携帯は、すでに圏外。車も通らなくなりました。
今、このエリアに存在するのは、私と、なぞの生物だけです。
慎重にあたりを見回しながら、歩く位置を考えながら進みます。
藪から離れて歩き、逃げる場所を確認しながら、突然の敵の襲来に備えます。
ためしに走ってみたりします。痛みはあるものの何とか走れるようです。
おそらく、なぞの生物は、私の動きを虎視眈々と見ているはずです。
“食べられてたまるもんか”
ようやく夜が明け始めたのが、婆沙羅峠のトンネルに差し掛かるときでした。
あのトンネルを越えれば、長い長い上り坂は終わりになります。
そして、なぞの生物との戦いも終わると信じていました。
トンネルを抜けると、そこは朝でした。すがすがしい朝です。
時間は、もう5時を過ぎようとしています。
2時間に及ぶなぞの生物との戦いも、もう既に過去の出来事になろうとしていた、そんなときでした。
ホッとしながらしばらく歩いていると、民家が見え始め“これでもう、完全に大丈夫”と思ったとき、
突然、藪の中から、ガサガサッ、ドタドタッと2頭のイノシシが道路に飛び出してきました。
ひぇーーーーーーーーーーーーー!
イノシシは、私の反対側の道路を突っ走り、藪の中に突進していきました。
私は、ガードレールの外側に飛び出だし、かなりビビリながらデジカメのスウッチを入れよとしたとき、藪の中から“ヴー”と、私を威嚇する声が聞こえてきました。
“写真は無理!”
そう悟った私は、なるだけ足音を立てないように、まるで忍者のようにその場所から逃げるのでありました。
あ~こわかった。
と、思ったとき、また藪の方でガサッ。
鹿?
そうなんです。
人工林に追われた本来奥山に住む動物は、もう山になんかいないのです。
こうして、エサを求めて民家の近くに出没するのです。
30分ほど歩くと人影が。
こんなに朝早くから、電線の工事をしているみたいです。
なんの工事だろうと思いながら、軽く会釈をして通り過ぎます。
そして、久しぶりの休憩。
昨日買ったトマトをまるごとガブリ。
ここまでくれば大丈夫、と思うと、再び足が痛み始めます。
今日は、このまま下田のひとつ手前の蓮台寺駅まで歩き、そのまま電車に乗って帰ることにしました。
もう、歩けません。(ムリッ!)
今度は、長い長い川沿いの下り坂を歩いていきます。
ふと、振り返ると、今まで歩いてきた山が霞んで見えます。
“あんなところから歩いてきたのか~”
時間は6時半。
もうすこし歩けば、駅に着きます。
終わり。
佐下橋聡 拝
さぼんどちの
今回歩いてる時は、いつでも水の音が聞こえてました。日本は本当に水の豊かな国です。しかし、この水がキレイかといえば、決してそんなこともないのです。農薬や合成洗剤など、この清流に紛れ込んでいます。日本の豊かさは、世界がうらやむ水の豊かさです。この豊かな水を無添加石けんで守ってみませんか。きっと、魚も喜ぶと思います。