アルコールは長寿薬か?

2010-11-25 23:38:08 | Weblog
アルコールの健康に対する影響について調べました。健康には社会的(つきあい、コミュニケーション等)、肉体的、精神的などいろいろな側面があり1面だけ強調すると間違うかもしれませんが、とりあえず肉体的健康に関して考察します。

まとめ(1-5で下に内容):中年以降で心臓病や脳硬塞などの危険のあるひとでは酒はほどほどで長寿薬となるが、週一升(ビールなら1日2缶)を超すとメリット無し(2,3)。ガンになりやすくなる(4,5)。
若い人にとっては事故死の危険が増える影響が大きく害となる(1)。

1.若い男性 (20才前)5万人 15年追跡
Andreasson, S., Allebeck, P., Romelsjo, A. Alcohol and mortality among young men: Longitudinal study of Swedish conscripts 1988 British Medical Journal 296 (6628), pp. 1021-1025
1週間にアルコールを0 1-100 101-250 250以上(ml)のんでいた若者の15年後の死亡率(1000人当たり)
心臓、血管による死亡  1.0 0.4 0.8 0.8 
ガンによる死亡 1.4 1.4 2.0 1.6
自殺(の疑いを含む)による死亡 3.1 4.9 6.9 18.9
死亡の合計 9.6 11.9 19.7 35.3
15年後の死亡リスクは1週間にアルコール100mlをこすと1.7倍(95%確信範囲1.4-2.0)(100ml以下とくらべて)
コメント:若い人は事故死の可能性が高く、アルコールによって確実に死亡増加する(自殺増に注目、ただし論文では統計的評価なし)。アルコールは心臓、血管による死亡を予防しているかもしれないが、若い人の心臓、血管による死亡は確率が低いのでアルコールのデメリットが大きくなる。

2. 医師 60-90才 1万2千人 13年追跡
Doll, R., Peto, R., Hall, E., Wheatley, K., Gray, R. Mortality in relation to consumption of alcohol: 13 years' observations on male British doctors 1994 British Medical Journal 309 (6959), pp. 911-918
1週間にアルコールを 飲まない 1-112 113-224 225以上(ml)のんでいた医師の死亡率(1000人当たり)
死亡の合計 74.7 56.9 55.8 70.6
死亡リスクは1週間にアルコール112mlまでなら全く飲まない人より低い(95%確信)。112mlを過ぎると112mlまで飲む人と比べて死亡リスク増(95%確信)。
コメント:喫煙率60%のため心臓、血管による死亡リスクが高く、アルコールのメリットがよく表われたと思われる。アルコールによる善玉コレステロール増加や血圧低下の作用によるかもしれない。

3.医療従事者 5万人 5年追跡
Rimm, E.B., Giovannucci, E.L., Willett, W.C., Colditz, G.A., Ascherio, A., Rosner, B., Stampfer, M.J. Prospective study of alcohol consumption and risk of coronary disease in men
1991 Lancet 338 (8765), pp. 464-468
心臓冠動脈病リスクは1週間にアルコール100mlで2割、200mlで4割減(95%確信)
コメント:量と効果の関係が明白。

4. 女性
Fuchs, C.S., Stampfer, M.J., Colditz, G.A., Giovannucci, E.L., Manson, J.E., Kawachi, I., Hunter, D.J., (...), Willett, W.C. Alcohol consumption and mortality among women 1995 New England Journal of Medicine 332 (19), pp. 1245-1250
心臓、血管による死亡リスクのある女性(喫煙、家族歴、BMI>29、高血圧、糖尿病、高コレステロール)では
死亡リスクは1週間にアルコール240mlまでなら0.84倍(95%確信範囲0.76-0.93)と2割防げ、長寿効果あり。心臓、血管による死亡リスクのない女性ではアルコールのメリットなし(死亡リスク0.96倍、統計的無為)。
240mlを過ぎると死亡リスク2.2倍(95%確信範囲1.31-3.72)特に乳ガンは1.7倍(95%確信範囲1.10-2.53)ガン全体は1.3倍(95%確信範囲1.04-1.58)(週当たり0mlの人と比較)
コメント:アルコールによるガンの増加は男にもあてはまると思われる。家族歴(心臓、血管による死亡か、ガンによる死亡か)はアルコールのメリット、デメリットを考える参考になる。

5. 男女30-104才50万人 9年追跡
Thun, M.J., Peto, R., Lopez, A.D., Monaco, J.H., Henley, S.J., Heath Jr., C.W., Doll, R. Alcohol consumption and mortality among middle-aged and elderly U.S. adults 1997 New England Journal of Medicine 337 (24), pp. 1705-1714
死亡リスクは1週間にアルコール168mlまでなら全く飲まない人より低い(95%確信)。168ml過ぎると死亡リスクがだんだん増える。ただし心臓、血管による死亡リスクの低いひとではアルコールのメリットないどころか、1週間に350ml過ぎると死亡リスク1.2倍(95%確信範囲1.1-1.3)
消化器のガンに関しては、1週間に350ml過ぎると死亡リスク3倍(95%確信範囲1.7-5.3)他のガン死亡リスク1.1倍(95%確信範囲1.0-1.3)
コメント:アルコールのメリット、デメリットは生活(喫煙など)家族歴(ガン)を参考に考える必要がある。

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