危ない本物志向、「本」わらびもち

2015-09-21 19:24:23 | Weblog

要点

1.ワラビ粉の入っているワラビもちはスーパーでも見かける。ワラビはあく抜きしても発ガン物質は残るようなので買わないほうがよい。(a,b,f

 

2.ワラビの花粉にも発ガン性が疑われるのでワラビ自生地で子供を遊ばせないほうがよい。(e,g)

 

3.ワラビは家畜の病気を起こすだけでなく、ワラビを食べた牛のミルクは発ガン物質が含まれるので、放牧農家はワラビの駆除に努めるとともにワラビの生える時期は放牧を控えるべき。(c,d)

 

4.伝統食ではあるが高齢化社会での安全性は検証されていない。江戸時代、貝原の著書の養生訓にはワラビ粉は「人を殺す」とある。(h

 

わらびの発ガン性

 

動物実験では;

 

a.現実的な量で発ガン

 ラットのえさの30%をワラビにするとほぼ確実にガンになる。

200日後、オスは腸のガン100%、膀胱ガン60%、メスは腸のガン93%、乳ガン87%、膀胱ガン47% (HironoCarcinogenesis 1983 v4,p885

 

b.アク抜きしてもラットに発ガン(Alonso-Amelot v9 p675, Hirono 1972, 1993

ワラビを、灰や重曹などのアルカリで煮こぼす、塩蔵してから煮こぼすという伝統的な処理を行った上でラットに与えた。 発ガン率は、処理なし78.5%に対し, 灰処理25%, 重曹処理10% 塩蔵処理4.7% と、低下はするものの残存した(Hirono 1972, 1993)

 

c.ワラビ毒は母乳に出て子供にガン

 ワラビを毎日300g与えて牛を育て、その乳を飲みたい放題ラットに与える。ラット34匹中、膀胱ガン7匹、腸のガン3匹、骨盤内のガン2匹。対照群ではガン0匹。(Pamukcu CancerRes.1978、v38、1556 )

ワラビを食べている牛の牛乳は発ガン性があることになる。放牧地とわらびの自生地は接近しているので現実的な心配といえる。はたして駆除しきれるのか。

 

d.牧場のワラビは家畜を病気にする

牛はワラビが生えていれば食べてしまう。牧場では厄介もので牛の膀胱出血、馬やブタのビタミンB1欠乏(Shahin v443 p69)、ヒツジの網膜変性(Wilson v52 p812)などの原因となる。

 

試験管のなかでは;

 

e.ワラビの花粉にも発ガン性があるかも

 DNA傷害作用が証明されている(Povey v74 p1342

 

 

 

疫学的には;

 

f.ワラビの多い地方でガンが多い

イギリスのスコットランドに消化管ガンと膀胱ガンが高率に発生する高地とほとんど発生しない低地が隣接。著者はワラビの関与を疑っている。(Jarret Nature1978v274 p215

 

 ベネズエラの高地(アンデス山地、ワラビ自生)と低地(マラカイボ湖周辺)とでは胃ガンの死亡が高地のほうが4倍高く、研究者はワラビの食用との関連をうたがっている。(Alonso-Amolet Int J Cancer 2001 v91 p252

 私の住む地域で高地と低地の市町村によるちがいでそのような傾向が見られるかガン統計を検討してみたが有意な違いはなかった。ただし距離が近いので輸送、訪問などでまざってしまうからかもしれない。 

 

 

g.山菜はガンのリスクになる場合も

 

日本の疫学調査で10万人を10年追跡。喫煙する人に限ってだが、山菜を毎日食べる人は月2回未満の人とくらべて、膵臓ガンの危険が高い(1.5-8.3倍)(Lin,Kikuchi Nutrition Cancer v56 p40

 喫煙とワラビ食が発ガンに相乗効果があるのかもしれない。たばこを吸わない人は常識的な山菜の楽しみ程度ならそれほど心配しなくてもよいととれる。ただしワラビは避けたい。この研究では子供への影響は不明なので与えないようにしたほうがよい。

 

 

h.昔は食べていたとは言うが...

 江戸時代、わらびの粉は葛粉とならんで一般的な食料であったようだ。ただし当時の寿命は何とか1歳児まで生きのびても残り30年ちょっとしか生きられなかった。だからガンができる前にほとんどの人が感染症や出産の合併症でなくなっていた。

(五島淑子「江戸の食に学ぶ」2015.4 臨川書店)

 

i. 国際がん研究機関 (IARC)によると、 わらび(Bracken fern)は、Group 2B に含まれる(possibly carcinogenic 発がん性がある可能性) 。 

 比較として、除草剤グリホサート(Glyphosate)は、 より高い危険度へ分類されている Group 2AProbably carcinogenic おそらく発がん性)。 ただし、 わらびの方は 公表された論文で動物の発がん性が明らかにされている(Hirono 1983Hirono Pamukcu 1978) 一方で、グリホサートでは見あたらない 2019年6月)。 したがって、筆者としては、わらびの方が危険が明白であると考える。

https://monographs.iarc.fr/list-of-classifications-volumes/ 2019.6月アクセス)

ついでにソテツ、フキノトウ、ツワブキ、ハンゴンソウ、コンフリーなどに発ガン性があることも知っておきたい(Hirono 1993)。

 

 

引用文献:

 

Alonso-Amelot, M.E., Avendaño, M., 2001. Possible association between gastric cancer and bracken fern in Venezuela: an epidemiologic study. Int J Cancer. 91, 252-9.

 

Alonso-Amelot, M.E., Avendaño, M., 2002. Human carcinogenesis and bracken fern: a review of the evidence. Curr Med Chem. 9, 675-86.

 

Galpin, O.P., Whitaker, C.J., Whitaker, R., Kassab, J.Y., 1990b. Gastric cancer in Gwynedd. Possible links with bracken. Br J Cancer. 61, 737-40.

 

Hirono, I., Aiso, S., Hosaka, S., Yamaji, T., Haga, M., 1983b. Induction of mammary cancer in CD rats fed bracken diet. Carcinogenesis. 4, 885-7.

 

Hirono I(廣野 巖). Edible Plants Containing Naturally Occurring Carcinogens in Japan. Jpn J Cancer Res. 1993 Oct;84(10):997-1006. PMID: 8226284 PMC5919061 (無料)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5919061/pdf/CAS-84-0997.pdf

ソテツ、フキノトウ、ツワブキ、ハンゴンソウ、コンフリーなどの発ガン性もレビューしている。

 

Hirono I. Carcinogenic Activity of Processed Bracken Used as Human Food. J Natl Cancer Inst. 1972 Apr;48(4):1245-50. PMID: 5023682

アク抜きワラビの投与実験

 

Lin, Y., Kikuchi, S., Tamakoshi, A., Yagyu, K., Obata, Y., Inaba, Y., Kurosawa, M., Kawamura, T., Motohashi, Y., Ishibashi, T., 2006. Dietary habits and pancreatic cancer risk in a cohort of middle-aged and elderly Japanese. Nutr Cancer. 56, 40-9.

 

Pamukcu, A.M., Ertürk, E., Yalçiner, S., Milli, U., Bryan, G.T., 1978. Carcinogenic and mutagenic activities of milk from cows fed bracken fern (Pteridium aquilinum). Cancer Res. 38, 1556-60.

 

Povey, A.C., Potter, D., O'Connor, P.J., 1996. 32P-post-labelling analysis of DNA adducts formed in the upper gastrointestinal tissue of mice fed bracken extract or bracken spores. Br J Cancer. 74, 1342-8.

 

Shahin, M., Smith, B.L., Prakash, A.S., 1999. Bracken carcinogens in the human diet. Mutat Res. 443, 69-79.

 

Wilson, D., Donaldson, L.J., Sepai, O., 1998. Should we be frightened of bracken? A review of the evidence. J Epidemiol Community Health. 52, 812-7.


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