低用量メソトレキセートはプラセボよりも皮膚癌の発生率が高かった.

2019-02-23 20:45:17 | Weblog

NEJM 2月21日号より (文献1)

方法
免疫抑制剤メソトレキセートが、メタボリックシンドロームの血管病(脳梗塞、狭心症など)予防に有効か調査。
4,786 人を低用量メソトレキセート( 15~20 mg/週))とプラセボに2分し、無作為化二重盲検試験。

結果
血管病発生に有意差はなかった。(201/2391 vs 207/2395, 100 人年あたり 4.13 対 4.31)
 それどころか、ガンの発生がメソトレキセート群で有意に多く、特に皮膚がんが多く発生した。(ガン52/2391 vs 30/2395, P = 0.02, 皮膚がん 31/2391 vs 10/2395, P = 0.002)。 低用量メソトレキセートが原因で250人につき1人がガンになったと推定できる。(発生率 100 人年あたり 1.03 対 0.60 より計算) ほか感染症、胃腸症状、口の痛みなどがメソトレキセート群で有意に多かった(それぞれ 17, 8, 2 %; P = 0.02, 0.006, 0.001)。
 そういうこともあって追跡2.3 年(中央値 )で治験は中止された.

コメント:
ガンの抑制に免疫は重要な役割がある。 どのような免疫抑制剤でも(ステロイド、タクロリムス、TNF阻害薬など)ガン発生の可能性があると考えられるため、メリットとのバランスで使用を判断するべきである。
 TNF阻害薬とメソトレキセートの発がんリスクの比較についてはTNF阻害薬の方が高いとする報告(文献2)と低いとする報告(文献3)がある。 いずれの報告も正しいとすれば、 rituximab はリスクがより低く、 adalimumab(ヒュミラ )、infliximab(レミケード )、etanercept(エンブレル ) はリスクがより高いということになる。 メソトレキセートとくらべてabatacept(オレンシア)は皮膚がんのリスクは高いが、ガン全体のリスクは低いという矛盾した結果となる。 リウマチの治療では、多剤を混ぜたり、切り替えたりして色々使う場合が多いから、疫学研究や追跡のみの調査ではそれぞれの薬剤のがんリスクを明らかにすることは難しく、あまり信用できない。

文献

Ridker et al. Low-Dose Methotrexate for the Prevention of Atherosclerotic Events. NEJM February 21, 2019;380:752

日本語要旨 https://www.nejm.jp/abstract/vol380.p752

2 (下に図)
Amari et al. Risk of non-melanoma skin cancer in a national cohort of veterans with rheumatoid arthritis. Rheumatology (Oxford). 2011 Aug;50(8):1431-9. PMID:21415022
TNF阻害薬は、メソトレキセートやシクロスポリンなどの免疫抑制剤と比べて有意にリスクが高いと報告されている(1.4倍)。 特に ヒュミラ(adalimumab)は、レミケード(infliximab)、エンブレル(etanercept)より有意にリスクが高いと報告されている。(それぞれ 1年治療で100人に3.6, 2.1, 2.8人に皮膚がん発生)

Solomon et al. Comparative cancer risk associated with methotrexate, other non-biologic and biologic disease-modifying anti-rheumatic drugs. Semin Arthritis Rheum. 2014 Feb;43(4):489-97 PMID: 24012043
皮膚がんに関してはアバタセプト(オレンシア)はメソトレキセートより有意にリスクが高かった(ハザード比15)。 ガン全体ではメソトレキセートは他の非生物製剤(leflunomide, sulfasalazine, hydroxychloroquine)より有意にリスクが高かった(ハザード比7)。 またメソトレキセートはTNF阻害薬(abatacept, rituximab )と比較した場合も有意にリスクが高かった(ハザード比3)。