ゆりこはこの頃何度か変な夢をみている。寝ていると、背中に男の気配を感じ、誰だか分かっているが認めることなどできない、でも期待している、彼の手が伸びてくるのを、大体この繰り返しなのだ。
私は淫らな性格なのだろうか、いや願望があったのだ、それを抑えているから夢に出てくる、朝起きると体がだるい。
この間美術館で一緒になった井坂とは、結局また会う約束をしてしまった。彼は結婚していて子供はいないと言っていたが、奥さんの話はしなかった。
春に桜の絵を描いたそうで、それを観せてほしいと頼んでおいた。最初はあまり乗り気ではなかったが、是非に、と希望したのでようやく了解してくれた。
「ゆりこ、この頃元気がないみたいだけど、体調がよくないの?」
「そんなことありませんわ、大丈夫です」
「そうか、もうお彼岸だけど、暑い日が続くからね」
お墓は新宿区の早稲田にある。父は近くに移そうとは思っているが、生まれ育った地区だけにまだ拘りが捨てきれない。
土曜日の朝、お墓参りに出かけた。早稲田は小さなお寺が点在しており、地下鉄から上がると花束を抱えた人々が歩いていく。住宅に囲まれた狭いお墓なので、長くいると後から来た人の邪魔になるので、早々に帰路についた。
途中買い物をした関係で、中央線で三鷹駅にいき、そこからバスで調布駅に向かうことにした。
三鷹駅に着き、改札を出ようとした所で井坂とすれ違った。彼は気付かずに急ぎ足でホームに入っていったのだが、父と一緒だったので声を掛けなかった。
そういえば彼は国分寺に住んでいると話していた。確か西恋ヶ窪だったな、思い出したら気になって、自宅に着いてすぐに携帯のメールを送った。
先程三鷹駅でお見かけしましたが、父と一緒でしたので黙って帰りました。近々お会いできればと思っています。 ゆりこ
返信 気付かずすいません、明日会えませんか。 誠二
私は淫らな性格なのだろうか、いや願望があったのだ、それを抑えているから夢に出てくる、朝起きると体がだるい。
この間美術館で一緒になった井坂とは、結局また会う約束をしてしまった。彼は結婚していて子供はいないと言っていたが、奥さんの話はしなかった。
春に桜の絵を描いたそうで、それを観せてほしいと頼んでおいた。最初はあまり乗り気ではなかったが、是非に、と希望したのでようやく了解してくれた。
「ゆりこ、この頃元気がないみたいだけど、体調がよくないの?」
「そんなことありませんわ、大丈夫です」
「そうか、もうお彼岸だけど、暑い日が続くからね」
お墓は新宿区の早稲田にある。父は近くに移そうとは思っているが、生まれ育った地区だけにまだ拘りが捨てきれない。
土曜日の朝、お墓参りに出かけた。早稲田は小さなお寺が点在しており、地下鉄から上がると花束を抱えた人々が歩いていく。住宅に囲まれた狭いお墓なので、長くいると後から来た人の邪魔になるので、早々に帰路についた。
途中買い物をした関係で、中央線で三鷹駅にいき、そこからバスで調布駅に向かうことにした。
三鷹駅に着き、改札を出ようとした所で井坂とすれ違った。彼は気付かずに急ぎ足でホームに入っていったのだが、父と一緒だったので声を掛けなかった。
そういえば彼は国分寺に住んでいると話していた。確か西恋ヶ窪だったな、思い出したら気になって、自宅に着いてすぐに携帯のメールを送った。
先程三鷹駅でお見かけしましたが、父と一緒でしたので黙って帰りました。近々お会いできればと思っています。 ゆりこ
返信 気付かずすいません、明日会えませんか。 誠二