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ホラー映画 その5小林正樹『切腹』1

小林正樹が1962年に撮った『切腹』は以下のような話である。

〈寛永7年10月、井伊家の江戸屋敷に津雲半四郎(仲代達也)と名乗る浪人が現れ、
生活苦から切腹したいので庭先を貸して欲しいと申し出る。
近頃、江戸では金に困った浪人が他人の屋敷の玄関先で切腹すると申し出て
金品を巻き上げる手口が横行していた。
井伊家の家老・斎藤勘解由(三國連太郎)は半四郎に、
春先に同じ用件でやって来た千々岩求女(石濱朗)という浪人の話をする。
浪人たちの強請同然の手口に悩まされていた勘解由は、
死ぬつもりなどない求女に庭先を貸し与え、
竹光しかもたない求女を切腹するまで追い込む。
それも腹を十文字に切り開いてからの介錯となってしまう。
求女は竹光で腹を切り裂いたのだが、
介錯を遅らされた苦痛から舌を噛み切って自殺する〉

この切腹シーンはどのような怪奇映画よりもワタシには恐ろしかった。
いやそれよりも弱い人間をここまで追い込む人間がいるということが恐怖だった。

このあと複雑な事情がからみ津雲半四郎は井伊家の家臣たちを殺戮する。
最後には井伊家の奥書院に侵入し切腹するが同時に鉄砲隊により討死する。

この凄まじい殺戮シーンも恐ろしい。
小綺麗な東映時代劇の立ち回りに慣れていたワタシは度肝を抜かれた。

原作は滝口康彦が1958年に発表した小説「異聞浪人記」。
脚本は橋本忍。

この当時貸本マンガでは平田弘史がやはり残酷とも思える描写で
延々と武士の世界を描き続けていた。
この平田弘史のマンガも、ほかの怪奇マンガより恐ろしかった。
平田弘史は怪奇マンガではない。
追い詰められていく人間の姿を、〈武士道〉の中で描いていくのだが、
その理不尽さは小林正樹の『切腹』に通じるものがある。

「復讐つんではくずし」1961年。このマンガを読んだ夜は恐怖のあまり眠ることができなかった。

〈続く〉

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