個人的にはこの第二部で、いちばん感動したのはカムイと白い狼の
魂の交流とでもいうべき関係性のありようだった。
恐水病に罹ることを承知しながら、野犬の群れに闘いを挑み、
野犬を全滅させたあと、自ら噴火を始めた火山に飛び込んだ白狼カムイだが、
じつはカムイが救った、連れ合いのメス狼は白い狼を産んで死んでいく。
この仔狼をカムイは育てて行くことになる。
白狼カムイは最後にカムイの胸に傷跡を残して死んでゆく。
カムイと一太郎に救われた白狼の仔。
好奇心旺盛な白狼カムイの仔はすくすくと育っていく。
『カムイ伝第二部』の最後に語られる言葉、
この星にある
生きとし生けるもの、
あたえられた
時と空間に
全てをたくし
せまりくる宿命(さだめ)に立ち向かう……
そのさなかに
消えて行く魂も
群れの行くてに
甦る
個体として死ぬことを運命づけられた生命の魂は、
しかし類(群れ)として行くて(未来)に甦るのでという
白土三平のメッセージは、自然界の力強い描写のなかに生き生きと脈打っている。
人類が階級闘争において敗れることを宿命のように受け入れながらも、
何度も立ち直り、隊列を整え攻撃に転じる姿が、この第二部においてもっと描かれていれば、
この最後のメッセージはさらに重いものとして読者の胸に届いたのではないか。
それはもう描かれることのない、第三部で構想されていたのだろうか。
8月の初めから、約1ヶ月にわたって読み継いだ『カムイ伝第二部』も読み終えてしまった。
この作品は今は亡き白土三平さんの遺作にあたるわけだが、正直な気持ちを言えば主題が見えてこない。
いや、こちらが勝手に想像していた主題からの逸脱ではないかとさえ思ったりもした。
もちろん階級闘争が主題ではないことは分かりきっている。
明確に主題が示されるのは第三部においてだったのだろうか。
ようやくワタシの夏休みの宿題は終わった。
あらためて白土三平さんと岡本鉄二さんおふたりのご冥福をお祈りする。