歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「英執着獅子」 はなぶさ しゅうちゃくじし

2011年11月03日 | 歌舞伎
所作(踊りね)です。古い作品です。
「獅子」が付くのでおわかりの通り、
お獅子が長い毛を振る、有名な「鏡獅子(かがみじし)」などと同じジャンルの作品になります。
この作品が、だいたいルーツとしては「鏡獅子」の原型と思っていいように思います。

おお元の原型は「石橋(しゃっきょう)」という、能由来の作品です。
中国の清涼山(せいりょうざん)という霊山に、虹のような形の細い石の橋があります。人間には渡れません。
橋の向こうは浄土です。
ここに獅子がいて、牡丹が咲き乱れる中、蝶とたわむれっているという伝説があります。
それを舞台に写したのが「石橋」です。

『石橋」には獅子と、それを見るお坊さんしか出ません。
ここから発展して、前半を遊女やお姫さまにしたのが「執着獅子」です。
前半の女形(おんながた)の華やかな踊りから、後半、獅子の形に引き抜きます。

後続の「鏡獅子」との大きな違いは、
「鏡獅子」では一度女形(おんながた)で踊ったあと、役者さんは引っ込んで、獅子の衣装に着替えて出て来ますが、
「執着獅子」では、女形の衣装のままで上半身だけぶっかえり、獅子のかぶりものを付けます。
下半身は、裾を引きずった着物のままです。

今は前半は遊女で踊ることが多いと思いますが、お姫さまの型もあります。
どちらも、恋する相手に執着する女心を舞います。なので「執着獅子」です。

「鏡獅子」よりも女踊りとしての色っぽさが強いです。一方で古風な格式の高さも残っている舞台です。

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