「歌舞伎十八番(かぶきじゅうはちばん)」の「毛抜(けぬき)」「鳴神(なるかみ)」「不動」の3作品の原型になっているお芝居として有名です。
とても古いものなので、上演台本は残っていません。
古典的な作品のだいたいの流れを書きます。最近の復活上演の内容も併記してみます。
いま上演される「毛抜」「鳴神」の部分についても、ここでは流れしか書きませんので、詳しい内容は当該作品のリンクをご覧ください。
全体を通しての悪役は、「早雲皇子(はやくもの おうじ)」という人になります。
この人は古典的上演では冒頭と最後くらいしか出ないのですが、復活上演ではお話の核になっています。
「早雲皇子」は今の帝の皇太子だったのですが、
「早雲皇子が即位すると世が乱れる」という予言がなされ、この予言のせいで「早雲皇子」は継承権を失います。
新たに生まれた皇子が皇太子として立つことになります。怒る早雲の皇子は世を呪います。
皇太子になった子供が無事に生まれるように祈祷をしたのが「鳴神上人(なるかみしょうにん)」です。が非常に効力がありました。
天皇はそれに対してお礼としてお堂を建ててくれるはずだったのですが、その約束をやぶりました。
怒った鳴神上人が龍神を結界の中に閉じ込め、世の中は大干ばつになります。
雨乞いをすることになり、雨乞いに必要なアイテムの短冊を持っている「小野」家に使者が立ちますが色紙はすでに盗まれています。
色紙を盗み、小野家乗っ取りをたくらんだのは、悪人の「八剣玄蕃(やつるぎ げんば)」です。
八剣玄蕃はそれ以外にもお姫様を病人に仕立ててその結婚をジャマしようとしていましたが
姫の婚約者である「文屋豊秀(ぶんやの とよひで)」が様子を知るために家来の「粂寺弾正(くめでら だんじょう)」を使者に立てます。
粂寺弾正の働きで悪人の玄蕃の陰謀は阻止され、色紙も取り戻されます。
この部分が、いま上演される「毛抜(けぬき)」にあたります。
「鳴神上人」の結界の術は堅固なようで雨乞いは効果がなかったらしく、
ついに鳴神上人を直接攻略する作戦が立てられます。
この部分が、今上演される「鳴神(なるかみ)」です。
攻略に派遣されたのが「雲絶間姫(くもの たえまひめ)」という美女です。
絶間姫が色っぽい話とカラダを張った色仕掛けの成果で鳴神上人は堕落して酒に酔って眠り、
その間に絶間姫は鳴神上人が作った結界を破壊して龍神を解放したので、雨が降り出します。
絶間姫がここまでがんばった理由は「文屋豊秀(ふんやの とよひで)」と結婚できるからでした。
文屋豊秀と言えば、前の「毛抜」のエピソードで小野家のお姫様と結婚するはずだったひとなので、
どっちと結婚するんだあんた!! と問い詰めたくなりますが、
平安時代のシステムからして、前に出た小野家の姫の「錦の前」が正妻になり、
この絶間姫が本命で側室になるのでしょう。
さて、ざんざか雨が降ったせいで、こんどはふもとの村が洪水になりかけます。
心配して絶間姫を探しに来た文屋豊秀と絶間姫が出会っていちゃいちゃしていたら、
色仕掛けでだまされた鳴神上人が怒り狂って絶間姫を追いかけてきます。
「槍持の伝内(やりもちの でんない)」と呼ばれる奴(やっこ)さんが出てきて鳴神上人を殺します。
「毛抜」のエピソードに出てきた粂寺弾正がやってきて豊秀たちを保護します。
絶間姫と豊秀の婚礼になりますが、ここに死んだはずの鳴神上人がガイコツで出てきて踊って暴れます。
ところで、最初に出てきた悪者の「早雲皇子(はやくもの おうじ)」も、「雲絶間姫」を好きだったのです。
絶間姫が文屋豊秀と結婚すると知って怒る早雲皇子。
「見影八郎(みかげ はちろう)」というひとが、皇子にたのまれてやってきてジャマをします。
いろいろモメているところにイキナリ「不動明王」が降臨してすべての悪人をやっつけ、
めでたしめでたしになります。
この最後の部分が、これも「歌舞伎十八番(かぶきじゅうはちばん)」の「不動」にあたります。
これは単独で上演されることはありません。
江戸初期のプリミティブな「荒事」は、このような神仏が降臨して悪人をやっつけるような内容が多かったのです。
その名残がこの部分なのだと思います。
最近の通し上演では、まず予言をする人の役として「安倍清行(あべの きよつら)」という陰陽師(おんようし)が出ます。
関係ないですが「安倍清行」は実在した人ですが、ふつうの官人で「陰陽師」ではありません。
これは、陰陽博士(おんようはかせ)として有名な「安倍晴明(あべの せいめい)」をイメージした名前で、
実在した「安倍清行」とは関係ないと思っていいのでしょう。
また、「早雲皇子(はやくもの おうじ)」が皇太子を降ろされて他の皇太子が立った、というのでなく、
すでに別の皇太子が天皇として即位したという設定です。「陽成帝(ようぜいてい)」といいます。
「陽成天皇」は実在した天皇で、たしかにこの時期は皇位継承でかなりゴタゴタした時期ですが、とくにモデルというほどではないと思います。
そしてこの陽成帝は、本当は女だったのを特別な術で男の体にして生まれさせた、という設定です。
この術を使ったのが、「鳴神上人(なるかみしょうにん)」なのです。
最近の上演では鳴神上人はかなり深く「早雲皇子」と結託しており、龍神を閉じ込めたのも、雨乞いに必要な短冊を盗んだのも
早雲皇子の陰謀ということになっています。
ストーリーに一貫性を持たせるための工夫ということだと思います。
=歌舞伎十八番の説明=
=50音索引に戻る=
とても古いものなので、上演台本は残っていません。
古典的な作品のだいたいの流れを書きます。最近の復活上演の内容も併記してみます。
いま上演される「毛抜」「鳴神」の部分についても、ここでは流れしか書きませんので、詳しい内容は当該作品のリンクをご覧ください。
全体を通しての悪役は、「早雲皇子(はやくもの おうじ)」という人になります。
この人は古典的上演では冒頭と最後くらいしか出ないのですが、復活上演ではお話の核になっています。
「早雲皇子」は今の帝の皇太子だったのですが、
「早雲皇子が即位すると世が乱れる」という予言がなされ、この予言のせいで「早雲皇子」は継承権を失います。
新たに生まれた皇子が皇太子として立つことになります。怒る早雲の皇子は世を呪います。
皇太子になった子供が無事に生まれるように祈祷をしたのが「鳴神上人(なるかみしょうにん)」です。が非常に効力がありました。
天皇はそれに対してお礼としてお堂を建ててくれるはずだったのですが、その約束をやぶりました。
怒った鳴神上人が龍神を結界の中に閉じ込め、世の中は大干ばつになります。
雨乞いをすることになり、雨乞いに必要なアイテムの短冊を持っている「小野」家に使者が立ちますが色紙はすでに盗まれています。
色紙を盗み、小野家乗っ取りをたくらんだのは、悪人の「八剣玄蕃(やつるぎ げんば)」です。
八剣玄蕃はそれ以外にもお姫様を病人に仕立ててその結婚をジャマしようとしていましたが
姫の婚約者である「文屋豊秀(ぶんやの とよひで)」が様子を知るために家来の「粂寺弾正(くめでら だんじょう)」を使者に立てます。
粂寺弾正の働きで悪人の玄蕃の陰謀は阻止され、色紙も取り戻されます。
この部分が、いま上演される「毛抜(けぬき)」にあたります。
「鳴神上人」の結界の術は堅固なようで雨乞いは効果がなかったらしく、
ついに鳴神上人を直接攻略する作戦が立てられます。
この部分が、今上演される「鳴神(なるかみ)」です。
攻略に派遣されたのが「雲絶間姫(くもの たえまひめ)」という美女です。
絶間姫が色っぽい話とカラダを張った色仕掛けの成果で鳴神上人は堕落して酒に酔って眠り、
その間に絶間姫は鳴神上人が作った結界を破壊して龍神を解放したので、雨が降り出します。
絶間姫がここまでがんばった理由は「文屋豊秀(ふんやの とよひで)」と結婚できるからでした。
文屋豊秀と言えば、前の「毛抜」のエピソードで小野家のお姫様と結婚するはずだったひとなので、
どっちと結婚するんだあんた!! と問い詰めたくなりますが、
平安時代のシステムからして、前に出た小野家の姫の「錦の前」が正妻になり、
この絶間姫が本命で側室になるのでしょう。
さて、ざんざか雨が降ったせいで、こんどはふもとの村が洪水になりかけます。
心配して絶間姫を探しに来た文屋豊秀と絶間姫が出会っていちゃいちゃしていたら、
色仕掛けでだまされた鳴神上人が怒り狂って絶間姫を追いかけてきます。
「槍持の伝内(やりもちの でんない)」と呼ばれる奴(やっこ)さんが出てきて鳴神上人を殺します。
「毛抜」のエピソードに出てきた粂寺弾正がやってきて豊秀たちを保護します。
絶間姫と豊秀の婚礼になりますが、ここに死んだはずの鳴神上人がガイコツで出てきて踊って暴れます。
ところで、最初に出てきた悪者の「早雲皇子(はやくもの おうじ)」も、「雲絶間姫」を好きだったのです。
絶間姫が文屋豊秀と結婚すると知って怒る早雲皇子。
「見影八郎(みかげ はちろう)」というひとが、皇子にたのまれてやってきてジャマをします。
いろいろモメているところにイキナリ「不動明王」が降臨してすべての悪人をやっつけ、
めでたしめでたしになります。
この最後の部分が、これも「歌舞伎十八番(かぶきじゅうはちばん)」の「不動」にあたります。
これは単独で上演されることはありません。
江戸初期のプリミティブな「荒事」は、このような神仏が降臨して悪人をやっつけるような内容が多かったのです。
その名残がこの部分なのだと思います。
最近の通し上演では、まず予言をする人の役として「安倍清行(あべの きよつら)」という陰陽師(おんようし)が出ます。
関係ないですが「安倍清行」は実在した人ですが、ふつうの官人で「陰陽師」ではありません。
これは、陰陽博士(おんようはかせ)として有名な「安倍晴明(あべの せいめい)」をイメージした名前で、
実在した「安倍清行」とは関係ないと思っていいのでしょう。
また、「早雲皇子(はやくもの おうじ)」が皇太子を降ろされて他の皇太子が立った、というのでなく、
すでに別の皇太子が天皇として即位したという設定です。「陽成帝(ようぜいてい)」といいます。
「陽成天皇」は実在した天皇で、たしかにこの時期は皇位継承でかなりゴタゴタした時期ですが、とくにモデルというほどではないと思います。
そしてこの陽成帝は、本当は女だったのを特別な術で男の体にして生まれさせた、という設定です。
この術を使ったのが、「鳴神上人(なるかみしょうにん)」なのです。
最近の上演では鳴神上人はかなり深く「早雲皇子」と結託しており、龍神を閉じ込めたのも、雨乞いに必要な短冊を盗んだのも
早雲皇子の陰謀ということになっています。
ストーリーに一貫性を持たせるための工夫ということだと思います。
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