goo blog サービス終了のお知らせ 

歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「松浦の太鼓」 まつうらの たいこ

2016年01月04日 | 歌舞伎
忠臣蔵が題材です。 明治に入ってからの「新作」です。 いわゆる=仮名手本忠臣蔵=等の「忠臣蔵」関連作品のなかで、 江戸期に作られた作品群は「実在の事件を題材にしてはいけない」という幕府の禁止があったので、関係者の本名を使っていません。 設定も表向き南北朝時代になったりしています。 これは新作なので登場人物もみんな本名です。 討ち入り直前の江戸の街が舞台です。 赤穂浪士は深く静かに潜伏しているので . . . 本文を読む

「小春穏沖津白浪(こはるなぎ おきつ しらなみ)」 -2

2015年12月30日 | 歌舞伎
前半は=こちら=です。 ・四幕目 瀬田の里 藤棚の場 ここで急にぜんぜん違う話になります。ついて行きにくいと思いますががんばって説明します。 通し上演でもここカットになる可能性があると思います。 「瀬田」は滋賀県の地名です。急に鎌倉を離れます。琵琶湖のそばです。 楠(くすのき)の巨木があり、その前に藤棚があります。藤は楠にまで巻き付いていて見事な眺めです。 この藤棚が見事なので見物客がやっ . . . 本文を読む

「小春穏沖津白浪(こはるなぎ おきつ しらなみ)」 -1

2015年12月28日 | 歌舞伎
「小春穏沖津白浪(こはるなぎ おきつ しらなみ)」 「小狐禮三(こぎつね れいざ)」という副題がついています。 これは江戸時代の初演時の脚本をもとに書いた説明です。 戦後「復活上演」された作品は、とくに後半部分はかなり書き換えられているようです。 こちらの記事については基本設定や作品の雰囲気を知る上での参考としてご覧いただくといいかと思います。 いまだ決定版というものはないと判断しますので、と . . . 本文を読む

「御所五郎蔵」 ごしょ ごろぞう (曽我綉侠御所染)

2015年12月05日 | 歌舞伎
「曽我綉侠御所染(そがもよう たてしのごしょぞめ)」というのが正式タイトルです。 タイトルの意味は下の方に書きます。 江戸末期の名作者、「河竹黙阿弥(かわたけ もくあみ)」の比較的初期の作品になります。 初演時はもっと長い作品で前後編になっており、 前編部分はとあるお大名家の話です。 お家騒動とかお花見でイケメン若衆が立ち回りとかお殿様の正妻の母親がお妾をなぶり殺しとか怨霊の祟りとか山賊とか殺 . . . 本文を読む

「競伊勢物語」 はでくらべ いせものがたり

2015年10月16日 | 歌舞伎
タイトル通り、古典作品の「伊勢物語(いせものがたり)」をモチーフにした作品です。 「伊勢物語」自体は短いお話の羅列で、まとまったストーリーはないのですが、 当時の大きな政権争いが作品の背景になっています。 この政権争いが、お芝居の題材です。 時代は9世紀、800年台前半です。 「文(もんとく)天皇」の死後、第一皇子だった「惟喬皇子(これたかのみこ)」が帝位に付けず、 弟の「惟仁皇子(これひと . . . 本文を読む

「一条大蔵譚」 いちじょうおおくら ものがたり

2015年09月29日 | 歌舞伎
「鬼一法眼三略巻(きいちほうげん さんりゃくのまき)」というお芝居の四段目にあたります。 三段目の「菊畑」は=こちら=です。 三段目のほうは有名ですし、ご覧になったかたもいるかと思いますが、 四段目と三段目はまったく関係ない物語なので、三段目は忘れて鑑賞して大丈夫です。登場人物は一人もカブりません。 平治の乱のちょっと後の時代、平家全盛の京の都が舞台です。 源氏再興を目指して源氏派のひとたちが . . . 本文を読む

「心謎解色糸」 こころのなぞ とけていろいと -3

2015年09月22日 | 歌舞伎
4幕目と5幕目はこちらです。これで最後です。 1幕目は=こちら=です。 2幕目と3幕目は=こちら=です。 4幕目 安納屋(あのや)店先 イキナリ「安納屋(あのや)」という知らないお店が舞台になります。 1幕目でチラっとセリフ名前は出ているのですが、誰も聞いてないと思います。 「糸屋」の後見人のような立場にいるのが、この「安納屋(あのや)」の主人です。 先代の時代に「糸屋」で働いており、信頼 . . . 本文を読む

「心謎解色糸」 こころのなぞ とけていろいと -2

2015年09月17日 | 歌舞伎
2幕目と3幕目はこちらです。 1幕目は=こちら=です。 4、5幕目は=こちらです。 一応、おさらい的に全体の構成をここにも書いておきます。 4つのお話が交差しながら進みます。 ・「お祭り左七(おまつりさしち)」という町人のイケメンと。「お糸(おいと)」という芸者の筋 ・「糸屋」という大きなお店(おたな)の一人娘の「お房(おふさ)」の婿取りをめぐる陰謀やゴタゴタの筋 ・とある大名家のお家騒動で濡れ . . . 本文を読む

「心謎解色糸」 こころのなぞ とけていろいと -1

2015年09月12日 | 歌舞伎
江戸後半期の代表作者、「東海道四谷怪談」で有名な「鶴屋南北(つるや なんぼく)」の 代表作のひとつです。 出るとしたら通し上演になると思います。 ここは1幕目を書きます。もっとも有名な茶屋での場面はここです。 4つのお話が交差しながら進みます。 ・「お祭り佐七(おまつりさしち)」という町人のイケメンと。「お糸(おいと)」という芸者の筋 ・「糸屋」という大きなお店(おたな)の一人娘の「お房(おふ . . . 本文を読む

「勢獅子」 きおいじし

2015年09月12日 | 歌舞伎
所作(しょさ、踊りね)です。 「獅子」と付きますが、「連獅子」や「鏡獅子」のように長い毛のりっぱなお獅子が出てくるやつではなく、 出るのはお祭りの獅子舞のお獅子です。 舞台は吉原のお花見のときのお祭の様子です。 獅子を見るというか、吉原のお祭りのにぎやかな様子を楽しむ踊りです。 設定として「鎌倉、大磯の廓」が舞台になることもありますが、 イメージは吉原ですので、吉原として見ていただいて問題ありませ . . . 本文を読む

「供奴」 ともやっこ

2015年08月19日 | 歌舞伎
「奴さん」の踊りです。とくにストーリーもなく単純ですので 気楽にお楽しみいただけるかと思います。 風俗としては元禄のころになります。なので古風で派手な雰囲気です。 奴さんのご主人はお侍で色男です。今日も吉原の遊郭に遊びに行きます。 お供についてきた奴さんは、ついうっかり遅れてしまって田んぼの中の近道を走って行くところです。 提灯を持っていますから急いで追いつかないといけません。 奴さんの仕事 . . . 本文を読む

「戻籠」 もどりかご

2015年08月18日 | 歌舞伎
所作(しょさ、踊りね)です。 もとは、上方にいた大物の役者さんが江戸に来たときに、江戸側の大物の役者さんとお目見え共演するための、 ごあいさつ舞台です。 江戸時代は移動がたいへんだったので江戸、上方間の役者さんの移籍はそう簡単ではなく、 大物の役者さんが移籍してくるとなると大きな話題になったのです。 内容そのものはとても単純です。 大阪の駕籠かきと江戸の駕籠かきがいっしょに駕籠を担いでいます . . . 本文を読む

「茨木」 いばらき

2015年08月14日 | 歌舞伎
歌舞伎には「松羽目もの」という作品群があります。 能や狂言を原作とする作品で、能舞台を模して舞台全体を杉の板で囲い、大道具類はなく、 背景は板地に大きな松の絵が描かれただけというセットを使うので 「松羽目もの」と呼ばれます。 この「茨木(いばらき)」も松羽目の舞台で演じるのですが、 能には「茨木」という作品はありません。 これは「松羽目風」、つまり「能っぽく」作ったオリジナル歌舞伎です。 時代 . . . 本文を読む

「太刀盗人」 たちぬすびと

2015年08月13日 | 歌舞伎
狂言由来の作品です。「松羽目(まつばめ)もの」と言われます。 「松羽目もの」というのは、能や狂言を原作とする作品群のことです。 能舞台をイメージして舞台全面を杉の板で覆い、背景も板地に大きな松の絵が描かれた特徴的なセットを使いますので、 「松羽目もの」と呼ばれます。 この作品は狂言由来ですので、とてもおもしろく、また、内容もわかりやすいです。 「万兵衛(まんべえ)」さんは田舎のひとです。 訴訟 . . . 本文を読む

「其小唄夢廓」 そのこうた ゆめもよしわら

2015年08月13日 | 歌舞伎
「白井権八(しらい ごんぱち)」というのは江戸初期の実在の人で、 若い浪人者だったのですが、 何人も人を斬ってお金を奪って捕まって死罪になりました。 お金がほしかった理由が、「小紫(こむらさき)」という遊女に貢ぐためで、 「小紫」のほうも「権八」が好きで恋人同士だったのもあり、 凄惨な連続強盗事件よりも、このふたりの悲恋物語のほうが後の世には強く記憶され、 いろいろな作品が作られました。 これは . . . 本文を読む