2007.2.26(月) 読売新聞朝刊より
日本
第2部 格差を超えて④
過疎地「がんばらまいか」
静岡県の北西部、愛知県境の山あいに位置する浜松市佐久間町は、集落が山林の傾斜地に張り付くように点在する過疎地だ。
約5400人の住民の46%を65歳以上のお年寄りが占める。
1月28日、34年目となる伝統行事「佐久間駅伝大会」が開かれた。
県内外からの参加選手に振舞う豚汁の炊き出しを手伝ったボランティアの竹内やす子さん(74)は「駅伝がつぶれないように私たちが支えなければ」と話す。
「地元が取り残されないようにするためです」と付け加えた。
長野大の大野晃教授(地域社会学)は、65歳以上の高齢者が半数を超えた集落や自治体を「限界集落」「限界自治体」と定義し、社会的な共同生活や財政の維持が困難となり、消滅や破たんに至ると警告する。
4年前のデータを基にした推計では、2030年に「限界自治体」となる市町村は全国で144あった。
このうち旧佐久間町など112市町村は「平成の大合併」で姿を消している。
地元住民には「合併しても過疎は過疎。自分達は見捨てられてしまう」そんな不安が募るという。
日本の地域間格差は、二重構造だ。
都道府県の県民所得(03年度)でも、1位の東京(426万7000円)と最下位の沖縄(204万2000円)の差は大きい。
だが、住民が実感しやすいのはむしろ、身近な都市部と周辺部の差だ。
「まるで違う国に住んでいるみたい」
1年前、青森市の郊外から引っ越して、駅前のマンションに住む近藤さん(71)。病院、図書館、買い物・・・どこに行くにも徒歩ですむ。吹雪に凍えながらバスを待ったり、頭上まで積もった庭の雪かきをしたりした苦労がうそのようだ。
中心市街地に住居や商店、公共施設を集積させる「コンパクトシティー」政策。
先進地の青森市では、中心部にこの5年で12棟850世帯分のマンションが建設された。
市は新年度から、中心部に移り住む郊外の高齢者宅を借り上げ、ゆとりのある家を望む子育て世帯などに貸す「住み替えバンク」事業も始める。
駅伝を手伝った竹内さんは、旧佐久間町住民によるNPO(非営利組織)「がんばらまいか佐久間」の会員だ。
世帯の7割が参加し、地元の行事を旧町の行政に代わって支える。
理事長で元旧助役の大平牧男さん(64)は「合併は財政難で避けられなかったが、格差には住民が気概を持って対応したい」と話している。 つづく
日本
第2部 格差を超えて④
過疎地「がんばらまいか」
静岡県の北西部、愛知県境の山あいに位置する浜松市佐久間町は、集落が山林の傾斜地に張り付くように点在する過疎地だ。
約5400人の住民の46%を65歳以上のお年寄りが占める。
1月28日、34年目となる伝統行事「佐久間駅伝大会」が開かれた。
県内外からの参加選手に振舞う豚汁の炊き出しを手伝ったボランティアの竹内やす子さん(74)は「駅伝がつぶれないように私たちが支えなければ」と話す。
「地元が取り残されないようにするためです」と付け加えた。
長野大の大野晃教授(地域社会学)は、65歳以上の高齢者が半数を超えた集落や自治体を「限界集落」「限界自治体」と定義し、社会的な共同生活や財政の維持が困難となり、消滅や破たんに至ると警告する。
4年前のデータを基にした推計では、2030年に「限界自治体」となる市町村は全国で144あった。
このうち旧佐久間町など112市町村は「平成の大合併」で姿を消している。
地元住民には「合併しても過疎は過疎。自分達は見捨てられてしまう」そんな不安が募るという。
日本の地域間格差は、二重構造だ。
都道府県の県民所得(03年度)でも、1位の東京(426万7000円)と最下位の沖縄(204万2000円)の差は大きい。
だが、住民が実感しやすいのはむしろ、身近な都市部と周辺部の差だ。
「まるで違う国に住んでいるみたい」
1年前、青森市の郊外から引っ越して、駅前のマンションに住む近藤さん(71)。病院、図書館、買い物・・・どこに行くにも徒歩ですむ。吹雪に凍えながらバスを待ったり、頭上まで積もった庭の雪かきをしたりした苦労がうそのようだ。
中心市街地に住居や商店、公共施設を集積させる「コンパクトシティー」政策。
先進地の青森市では、中心部にこの5年で12棟850世帯分のマンションが建設された。
市は新年度から、中心部に移り住む郊外の高齢者宅を借り上げ、ゆとりのある家を望む子育て世帯などに貸す「住み替えバンク」事業も始める。
駅伝を手伝った竹内さんは、旧佐久間町住民によるNPO(非営利組織)「がんばらまいか佐久間」の会員だ。
世帯の7割が参加し、地元の行事を旧町の行政に代わって支える。
理事長で元旧助役の大平牧男さん(64)は「合併は財政難で避けられなかったが、格差には住民が気概を持って対応したい」と話している。 つづく