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ナビゲーターは魂だ

石川 道雄        眼玉

2012-05-21 | 
 いつの年頃か 眼玉は 眼窩を躍(と)び出して

                無花果の葉蔭にぶらさがつた


 眼玉は 小鳥のやうに自由に翔けめぐり

                  廣い草原の中に棲んだ


 眼玉は 蚤のやうに人中にまぎれ込み

                柔い女人の膚を喰べた

  
 眼玉は 石ころのやうに道ばたに轉がつて

              雨に溶ろけて 土壌(つち)に滲みた


月光にけぶつて 霧となつた。。。

天道虫になつて 花に眠つた。。。

桃の實になつて熟れて落ちた。。。

それから。。。


 然し 眼玉は死ななかつた

      眼玉は いつまでも生きてゐる


 眼玉は今 天井から凝視めてゐる

     私が 此のまま死んで了(しま)はうと

        私の眼玉は 私を靜かに見送つて呉れる



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