yasminn

ナビゲーターは魂だ

ウンベルト サバ           われわれの時間

2011-02-14 | 

 一日で、 いちばん いいのは

 宵の時間じゃないか?     

             いいのに

 それほどは 愛されていない 時間。

                 聖なる

 休息の、 ほんの 少しまえに来る 時間だ。


 仕事は まだ 熱気にあふれ、

 通りには 人の波が うねっている。



 四角い 家並みの うえには、

 うっすらと月が、     
          穏やかな

 空に、 やっと 見えるか 見えないか。


 その時間には、   田園を あとにして、

 おまえの いとしい街を 愉しもうではないか。


 
 光に映える 入り海と、
   
            端正に

 まとまった 容姿の 山々の街を。



 満ちたりた ぼくの人生が、
 
 川が 究極の海にそそぐように、流れる時間。



 そして、  ぼくの想い、  
              足早に歩く

 群衆、
      高い 階段のてっぺんに いる兵士、


 がらがらと行く 荷車に、
              駆け出して

 跳び乗る少年。

          そのすべてが、
                   ふと
 静止するかに見えて。

             
            これら 生の営みが、

 不動のなかに たゆたうかに 見えて。



 偉大な時間、 収穫をはじめた われわれの

 年齢に、よりそっている 時間。



                    須賀 敦子訳