広く暗い部屋に一人の男が居た。彼は暗闇の中何かに集中するように両目を瞑り感覚を研ぎ澄ませていた。
そして目を見開いた瞬間一瞬部屋が明るくなった。
バンッバンッ
音が響き、まもなく部屋の明かりがついた。
なんと男の後方には見事真ん中を撃ち抜かれた二枚の的が落ちていた。
「こんなもんかな。」
そう言うと彼は肩から掛けたホルスターに手にしていた愛銃ドイツ製“ワルサーPPK”をしまった。
その時、部屋のスピーカーから声が流れた。
「キッド、仕事だ。至急事務所へ上がってくれ。」
それを聞き男は部屋を出た。
空母「天龍」の進水式翌日。時刻は午前9時前。瀬戸基地付近では異様な集団が走り回っていた。
「探せ!!まだこの辺りに居るはずだ。」
首から掛けたカメラを抱えた集団が公園の中を通り過ぎていったのを確認して一人の男が公園の植え込みの中から顔を出した。
「ふぅ、まいったなこりゃ。」
彼の名は一条輝。「天龍」の航空隊長に任命されたパイロットである。
彼はいつものように日課のジョギングをしようと朝起きて基地を出てしばらくした時、なんと軍事マニアの集団に見つかって追いかけられていたのだ。
彼らは前日の航空ショーが目当てであったのだが翌日何か話を聞けないかと張っていたところ何と輝が出てきたので基地から離れるのを待って追いかけたのだ。
「さてと、基地に帰ると…」
その時、輝は後ろから肩を叩かれた。
驚いて振り向くと目深に帽子をかぶった人物が腰をかがめて輝に話しかけてきた。女性の声のように輝には思えた。
「入り口は固められてます。こっちへ。」
そう言ってその人物は輝を路地裏へと誘った。輝は後に続いた。
しばらく進むと目の前が開けた。そこは船を係留する桟橋になっていてその先には瀬戸内海が広がっている。
すると帽子の人物は有るボートの前へと輝を連れて行った。
「これで基地へ行ってください。西側に係留用の桟橋があります。」
「ありがとう。君は?」
そう聞かれるとその人物は帽子を取った。その人物に輝があうのは2年ぶりのことであった。
「恵美ちゃん、君だったのか。」
その人物は輝の親友であり同僚の沖野誠二少佐の従兄弟である立木恵美であった。彼女は父親(誠二の伯父)と共にマクロスに乗っていた為輝のこともよく知っていた。
「ひさしぶりね、一条さん。お兄ちゃんが多分こうなるから警戒してくれって頼んできたんです。」
「そうだったのか。おじさんは元気かい?」
「ええ、昨日も二人でてんやわんやでした。お店近くなんでまた来てくださいね。それより、人に見つからないうちに。」
「ああ、すまない。」
そう言って彼はボートのエンジンをスタートさせた。訓練生時代にボートの扱いは習っていたので大体は知っていた。
「基地に着いたらあとはお兄ちゃんに頼んでください。」
「分かった。ありがとう。伯父さんによろしく。」
そしてボートは向かって右側に見える基地に向かっていった。
午前9時過ぎ。久野一矢中尉は目を覚ました。充分眠ったのに疲れが取れた気がしない。原因は分かっている。昨日会った一条少佐のことだ。彼を思い出しため息をついていた。
「はぁ、いっそ降りようかな。」
そう言って彼はベッドから降り、窓の外の空母を見ていた。自分の職場となる艦だ。
「それにあの人もなぁ…。」
そしてもう一人。気になっている人物がいた。一条少佐と同じく「天龍」に配属された早瀬未沙中佐のことだ。
一矢もまたマクロスに乗っており、年少志願兵としてそこで軍に入ったのだ。当時16歳。
だが、軍に入隊した直後の訓練中にあの最終戦争が起こった為彼は実戦に参加することは無かった。
彼女とはその時に一度会ったのだ。思えばそれが一矢を軍人にさせたのかもしれない。
そして彼は着替えて部屋を出て行った。
疲れてはいるが夕方から仕事があるため一矢は重い足取りで食堂へと向かっていた。何か食べなくては後が辛いのである。
食堂は閑散としていた。時間的なものかもしれない。
すると一矢は並んだテーブルの中に自分の部下を見つけて朝食をのせたトレイを持ってその人物の元へと向かった。
無事船を係留した輝は部屋で軽くシャワーを浴び、服を着替えて沖野誠二少佐をたずねた。
しかし部屋にはおらず探し回っていた。食堂を通りかかった時輝は久野一矢中尉を発見した。彼に聞けばわかるかもしれない。そう思いながら彼の元へと向かった。
すると、輝は一矢と一緒にいる人物を見てふと懐かしさを感じたように思った。
続く
そして目を見開いた瞬間一瞬部屋が明るくなった。
バンッバンッ
音が響き、まもなく部屋の明かりがついた。
なんと男の後方には見事真ん中を撃ち抜かれた二枚の的が落ちていた。
「こんなもんかな。」
そう言うと彼は肩から掛けたホルスターに手にしていた愛銃ドイツ製“ワルサーPPK”をしまった。
その時、部屋のスピーカーから声が流れた。
「キッド、仕事だ。至急事務所へ上がってくれ。」
それを聞き男は部屋を出た。
空母「天龍」の進水式翌日。時刻は午前9時前。瀬戸基地付近では異様な集団が走り回っていた。
「探せ!!まだこの辺りに居るはずだ。」
首から掛けたカメラを抱えた集団が公園の中を通り過ぎていったのを確認して一人の男が公園の植え込みの中から顔を出した。
「ふぅ、まいったなこりゃ。」
彼の名は一条輝。「天龍」の航空隊長に任命されたパイロットである。
彼はいつものように日課のジョギングをしようと朝起きて基地を出てしばらくした時、なんと軍事マニアの集団に見つかって追いかけられていたのだ。
彼らは前日の航空ショーが目当てであったのだが翌日何か話を聞けないかと張っていたところ何と輝が出てきたので基地から離れるのを待って追いかけたのだ。
「さてと、基地に帰ると…」
その時、輝は後ろから肩を叩かれた。
驚いて振り向くと目深に帽子をかぶった人物が腰をかがめて輝に話しかけてきた。女性の声のように輝には思えた。
「入り口は固められてます。こっちへ。」
そう言ってその人物は輝を路地裏へと誘った。輝は後に続いた。
しばらく進むと目の前が開けた。そこは船を係留する桟橋になっていてその先には瀬戸内海が広がっている。
すると帽子の人物は有るボートの前へと輝を連れて行った。
「これで基地へ行ってください。西側に係留用の桟橋があります。」
「ありがとう。君は?」
そう聞かれるとその人物は帽子を取った。その人物に輝があうのは2年ぶりのことであった。
「恵美ちゃん、君だったのか。」
その人物は輝の親友であり同僚の沖野誠二少佐の従兄弟である立木恵美であった。彼女は父親(誠二の伯父)と共にマクロスに乗っていた為輝のこともよく知っていた。
「ひさしぶりね、一条さん。お兄ちゃんが多分こうなるから警戒してくれって頼んできたんです。」
「そうだったのか。おじさんは元気かい?」
「ええ、昨日も二人でてんやわんやでした。お店近くなんでまた来てくださいね。それより、人に見つからないうちに。」
「ああ、すまない。」
そう言って彼はボートのエンジンをスタートさせた。訓練生時代にボートの扱いは習っていたので大体は知っていた。
「基地に着いたらあとはお兄ちゃんに頼んでください。」
「分かった。ありがとう。伯父さんによろしく。」
そしてボートは向かって右側に見える基地に向かっていった。
午前9時過ぎ。久野一矢中尉は目を覚ました。充分眠ったのに疲れが取れた気がしない。原因は分かっている。昨日会った一条少佐のことだ。彼を思い出しため息をついていた。
「はぁ、いっそ降りようかな。」
そう言って彼はベッドから降り、窓の外の空母を見ていた。自分の職場となる艦だ。
「それにあの人もなぁ…。」
そしてもう一人。気になっている人物がいた。一条少佐と同じく「天龍」に配属された早瀬未沙中佐のことだ。
一矢もまたマクロスに乗っており、年少志願兵としてそこで軍に入ったのだ。当時16歳。
だが、軍に入隊した直後の訓練中にあの最終戦争が起こった為彼は実戦に参加することは無かった。
彼女とはその時に一度会ったのだ。思えばそれが一矢を軍人にさせたのかもしれない。
そして彼は着替えて部屋を出て行った。
疲れてはいるが夕方から仕事があるため一矢は重い足取りで食堂へと向かっていた。何か食べなくては後が辛いのである。
食堂は閑散としていた。時間的なものかもしれない。
すると一矢は並んだテーブルの中に自分の部下を見つけて朝食をのせたトレイを持ってその人物の元へと向かった。
無事船を係留した輝は部屋で軽くシャワーを浴び、服を着替えて沖野誠二少佐をたずねた。
しかし部屋にはおらず探し回っていた。食堂を通りかかった時輝は久野一矢中尉を発見した。彼に聞けばわかるかもしれない。そう思いながら彼の元へと向かった。
すると、輝は一矢と一緒にいる人物を見てふと懐かしさを感じたように思った。
続く
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