今回は“見える雨”についてです。
「雨が見えるのは当たり前じゃん!」とせせら笑ったそこのあなた。
これはその場で降っている雨が見えるということではなく、遠くで降っている雨のことです。南の島で遠くのスコールを映している映像を見たことがあると思いますが、あれのことです。
実は、遠くで降っている雨や雪を見ることは簡単です。珍しい現象ではありません。実際、八ヶ岳山麓に住んでいる私はしょっちゅう見ています。それでは「そんなのウソだ。私は見たことがない!」とお怒りのあなた。それはビルの中で生活していると、なかなか見ることができないのです。スカイツリーやあべのハルカス、ランドマークタワーなどの最上階で仕事をしていれば、きっと容易に見ることができるはずです。
つまり、周囲に建物がない、空が広く見える場所であれば、誰でも見ることができるのです。
ということは、登山中、景色の良い場所を歩いていれば見えるチャンスがあるということです。遠くで降っている雨、特にスコールのような局地的な激しい雨は美しいものです。私なんかもついつい、カメラを構えてしまいます。
ということで、撮った写真が以下のものです。
写真1 事務所から東の八ヶ岳方向で見られたスコールを撮影
写真2 スコールは右側へ移動しながら強まっていく
でも喜んでばかりもいられないのですね。
「このスコールが自分の所に来てしまったら・・・。」「雨だけでなくて雷まで引き連れてきたら・・・」ということになる訳です。
まあ、山小屋の中にいる場合には、のんびりコーヒーでも飲みながら、高見の見物ということになりますが。
こうしたリスクを避けるためには、スコールの動きを見ておきましょう。どちらからどちらに動いているか。その場合、目印を決めておくといいでしょう。例えば、今、スコールの右端が〇〇山の肩にかかっているとすると、数分後にスコールの右端がどこまで動いているかを確認します。写真1、2の場合、画面の左から右側にスコールが動いていきました。奥側から手前に動いてくる場合は、ヤマテン事務所を直撃する可能性がありますが、今回は大丈夫そうですね。
もうひとつ、便利な機能があります。ネットが通じる所であれば、雨雲レーダーを確認しましょう。ヤマテンの会員の方は、自分のいる山の天気予報ページにあります。その動きを確認し、自分のいる場所に迫ってきているときは要注意です。ヤマテンのページは山の位置も入っているので確認しやすいですね。
図1 雨雲レーダー(今回のスコールは図の緑色のカコミの中。青い三角印は赤岳の位置。気象庁提供の図を加工したもの)
もうひとつ使えるのが上空の風。積乱雲は、その高さの中間位の高度、500hPa(高度約5,800m)面の風に流される傾向がありますので、500hPa面の風向をチェックします。
ヤマテン会員の方は「専門・高層天気図」ページの500hPa気温をチェックしましょう。
図2 500hPa面の風
上図で確認しますと、14日の午後は北西風が吹く予想です。このため、写真では左(北西側)から右(南東側)へスコールが動いていきました。
もちろん、積乱雲の動きは新たな雲の発生によって変わったり、飛び火することもありますが、どちらで発生する積乱雲が危ないのかを知る目安になります。
ぜひご活用ください。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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