矢倉岳から見えた興味深い雲の2つ目は、富士山の風下側に形成された幅の広い雲です。
この雲は冬型が強いときに良くできる雲で、強い西風が富士山の西側にぶつかり(図中①)、これが南北に分かれて(②)再度、風下側でぶつかって上昇気流が発生することによってできる雲です。日中の日射によって発生する、里から山への谷風(③)が加わると、雲はさらに発達します。
さらに、西風が非常に強いときには、山頂から吹き下りる風によって空気が風上側から風下側へ運ばれていくため、それを補うために反流と呼ばれる山麓から山頂へ向かう風ができることがあります。そうすると、複雑な渦が発生して、渦を巻いたような雲ができます(下の写真)。このようなときは富士山では暴風が吹き荒れており、登山は極めて危険です。
文責:猪熊隆之 ※禁無断転載・転用