積乱雲は、雲の中でもっともやる気を出した(上方に成長した)雲で、雷や強い雨(雪)をもたらします。ただし、ひとつの雲の寿命は短く、通常20~60分程度です。大気が不安定で、地上と上空とで風向きが違うときは、ひとつの積乱雲が寿命を終えても、次々と新しい子雲が生まれて、それが成長していきます。同じ場所で積乱雲が次々と成長していくと、記録的短時間大雨情報が発表されるような、局地的な豪雨になることがあります。
今日(7月21日)は、そんな積乱雲が世代交代していく様子が見られたので、ご紹介します。
写真1 積乱雲の世代交代
写真1の中には、沢山の積乱雲があります。その中には、子供の雲からお爺さんの雲まで色々な世代の雲が共存しています。お爺さん雲は、写真の上の方にある暗い雲で、既に雲の中に上昇気流がなくなり、激しい雨を降らせる力がなく、しとしととした雨が降っているエリアです。その雨のせいでもやっとした感じに見えることが多くなります。
その手前側にある雲が、もっとも積乱雲が成長した段階の大人の雲です。雲の上方がソフトクリームみたいなモコモコとした形をしていて、夏は通常、7,000m以上の高さに達します。この雲の下では激しい雨や雹(ひょう)が降ったり、雷が発生します。
大人の雲の手前側にある雲が青年の雲(若い雲)です。どんどんとやる気を出して成長していっている雲です。大粒の雨がパラパラっと降りだします。
その手前側には子供の雲、子雲があります。新しく生まれたばかりの雲で、まだ雨を降らせるところまで成長していません。
積乱雲が大人の雲になっていくと、強い雨によって空気が冷やされて、その冷たい空気が雨とともに地面に落ちていきます。地面に落ちた空気は周囲に発散して周りにある温かい空気と衝突して、そこで上昇気流が生まれ、新たな雲ができます。通常、夏の日中は谷風と言って、川や沢(谷)の下流側から上流側に風が吹きます。この谷風と積乱雲から吹き出す冷たい空気が衝突するところで新たな雲ができるので、谷の下流側に子雲ができます。したがって、積乱雲は世代交代をしながら、下流側へと移動していきます。
山で発生した雷雲が平地や、下流側に移動していくことが多いのはそのためです。
積乱雲の世代交代については、「観天望気講座68」でも書いていますので、興味のある方は是非、ご覧ください。
https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/c6048f61773b81e0d4ce08ff32b6852d
文責:猪熊隆之
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