山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座152

2020-04-16 21:42:18 | 観天望気

Part152 ~雲がやる気を出した理由~

今日(2020年4月16日)は、久しぶりに雲がやる気になりました。雲がやる気になったというのは、雲が上方へモクモクと成長していくことです。夏場に見られる入道雲(にゅうどうぐも)は、“やる気になった雲”の代表格。この入道雲がさらにやる気を出していくと、積乱雲(せきらんうん、別名雷雲)になり、落雷や突風、強雨などの激しい気象現象をもたらします。

写真1 八ヶ岳方面で発達中の積乱雲(ヤマテン事務所から)

八ヶ岳の東側(写真では奥)で入道雲がやる気を出しています。今日は、奥秩父や南アルプスの一部で積乱雲が発達し、落雷や強雨(標高の高い所では雪)となりました。

雲がやる気を出すのは、

  • 上空5,500m付近に強い寒気が入ること
  • 地上付近が熱せられて温まること
  • 地上付近に湿った空気が入ること

これらの条件に当てはまるときです。詳しくは、jROで連載している「雲から山の天気を学ぼう(第10回)」をご参照ください。

https://www.sangakujro.com/%e9%9b%b2%e3%81%8b%e3%82%89%e5%b1%b1%e3%81%ae%e5%a4%a9%e6%b0%97%e3%82%92%e5%ad%a6%e3%81%bc%e3%81%86%ef%bc%88%e7%ac%ac10%e5%9b%9e%ef%bc%89/

1については500hPa面(高度5,500m付近)の気温予想図で確認します(図1)。この時期は、マイナス24℃以下の寒気が入るとき、雲がやる気を出すことが多いです。

図1 500hPa面の気温予想図(16日15時) ヤマテン専門天気図より

図1をご覧いただくと、東海・北陸地方から北ではマイナス24℃以下の寒気に覆われています。雲がやる気を出しやすいエリアです。しかしながら、今日、雲がやる気を出したのは、奥秩父、南アルプスだけでした。なぜ、これらの山でやる気を出したのかを調べるために、雲がやる気を出す条件 2.地上付近が熱せられた場所 を特定します。地上付近の気温の参考になるのは、850hPa面(上空1,500m付近)の気温です。

図2 850hPa面(上空1,500m付近)の気温予想図 ヤマテン専門天気図より

図2をご覧いただくと、中部地方に6℃以上の線が入りこんでいます。つまり、この辺りでは地上付近で気温が上がるということです。雲がやる気を出す条件の1と2が重なる所では大気が非常に不安定になり、雲がやる気を出しやすくなります。まさにその場所(5,500m付近でマイナス24℃以下の寒気に覆われていて、かつ1,500m付近では6℃以上の場所)で雲がやる気を出して落雷や強雨があった訳です。

ということで、500hPa面と850hPa面、2つの天気図から850hPaと500hPa面の気温の差を調べると、雲がやる気を出しやすい場所が分かります。その目安が以下の通りです。

  • 850-500の気温27℃以上・・・雲が非常にやる気を出す(落雷、局地豪雨のリスクが非常に高い)
  • 850-500の気温24℃以上・・・雲がやる気を出す(落雷、局地豪雨のリスクが高い
  • 850-500の気温21℃以上・・・雲が少しやる気を出す(落雷、局地豪雨のリスクがやや高い)

これを当てはめると、図2のアミカケの部分は30℃にも達し、雲がめっちゃやる気を出す条件ということが分かります。

これからの季節、地上付近が温まると、雲がやる気を出しやすくなります。これらの天気図を活用できるといいですよね。

文、図(気象庁提供を除く)、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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