ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け34年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

【拡散願います】【写真追加】那覇市長選を巡る経緯と争点、課題

2022年10月19日 | 暮らしと政治

〈Ⅰ〉那覇市長選を巡る経緯
 今回の那覇市長選(2022年10月16日告示、23日投開票)は、随分ややこしい展開になっており、今後の沖縄と「日本」を巡る政治に多大な影響を及ぼすことになるだろう。オール沖縄会議は沖縄アイデンティティーを再活性化できるのかが問われる重大局面を迎えている。

①不出馬を明らかにした城間幹子那覇市長を巡って
 城間幹子那覇市長は、2022年5月、自身の不出馬会見を行った。これで誰を後継候補にするかが問われることになった。6月8日の市議会で、「翁長雄志前知事の遺志を継承する玉城デニー知事を応援し、普天間飛行場の辺野古移設反対を堅持する立場と信念は変わっていない」と述べる一方で、「次期市長には市民福祉の向上や地域の発展に全力を挙げてほしいという一点につきる。私が市長選の支援をするのなら、その思いの有無にある。(次期市長候補に)ことさら政治姿勢を問わない」とも答えていた。
 城間市長の真意は明らかでないものの、副市長として貢献してきた知念覚氏を推したいのが本音だろう。城間氏はオール沖縄会議が擁する現職市長として、9月11日の県知事選の選挙母体の会長に就き、市長候補に出馬の意思表明を行った翁長雄治(たけはる)氏が県議を辞した後の県議補選の上原快佐候補の応援を含めて、奮闘してきたはずだ。
城間氏にとって、元知事故翁長雄志氏との関係は、雄志氏が那覇市長時代の上司と部下の関係であり、自分を引き立ててくれた雄志氏への信義と友愛が働いてきたが、玉城デニー知事の再選などで、自分の責任はここまでと考えたのだろう。
 オール沖縄側は、城間氏のこの本音と建て前のずれに気づきながら、「必勝知事選」の前に踏み込んだ対応を避けたのだろう。
 これは小さな裂け目がどんどん大きくなっていく典型的なパターンだ。自民党側にこうした城間氏とオール沖縄会議との亀裂を見抜き、策を弄した老獪な人物がいたに違いない。オール沖縄会議に、こうした可能性を見越した対応を取れる人物がいなかったことも、また明らかだと言わざるをえないだろう。
 
➁今回の市長選を巡る構図
 那覇市副市長だった知念覚氏(59)は、一時、オール沖縄会議からも自民党からも候補者として取り沙汰されていた。両方から如何なるやりとりがあったのか、明らかになっていないが、オール沖縄側は、「辺野古反対を決める覚悟」を求めたし、自民党はそこを断ち切る画策を行ったことは、それぞれの立場上間違いない。
 8月20日頃、保守系は知念覚氏を、オール沖縄は翁長雄治氏を擁立することを決めていく。この過程でも、城間市長はどちらを支持するのか、翁長元県知事の跡取りはどちらかという話も出ていた。翁長雄志氏は元那覇市長であり、知念覚氏は「できる部下」だったという。ということは、政策能力もだが、如何にまとめ上げていくのかの術も翁長雄志氏から学び、鍛えられてきたのではなかったか。彼は、9月段階の県知事選では自民党が推した佐喜真淳候補とセットになることを極力回避し(9月10日の佐喜真候補の打ち上げ式に出ず)、市長選にでたのだ。こうした経緯を振り返ると、自公保守系の推薦と、市民党的な広がりを得るためには、曖昧戦術は巧妙だといえるだろう。
 話はややこしいが、翁長雄治氏がでたことで、明確な違いをだせただろう。9月26日の出馬会見で翁長氏は、こう語った。「子どもたちの周りの環境を変えていくことが大切だ。子育て世代がどういう世帯収入で生活し、コロナ禍でどうなっているのか。親御さんをしっかりサポートする。子どもの学ぶ権利、将来を決める権利が尊重される那覇市をつくる」。「基地か経済かと問われることがそもそも政治の堕落だ。私たちが暮らしをしっかりと守れるということを示しながら、当然辺野古の問題も入ってくる」。
 ここで私たちが注目すべきことは、「子どもの貧困」に矮小化せず、大人の、社会の問題として捉える姿勢にある。子どもを前面に出すことで、前(近未来)を向いた政治を打ち出せる。また辺野古問題を明確にすることで、沖縄のあり方を問うことになっていく。辺野古問題とはいつまでも「基地の島」に組み伏せられている現状をどうやって打破していくのかを市民と共有していくことが那覇市政においても一丁目一番地の問題なのだ。

2022年10月16日 17:54 県庁前

(Ⅱ)那覇市長選を巡る争点
 知念覚氏は、「38年の行政経験、7年余りの副市長」としての「実績」を語り、「即戦力」を誇示している。那覇空港の第2滑走路建設でも那覇市の働きが効を奏したと言っている。
 対して翁長雄治候補(35)は、那覇市議、沖縄県議をそれぞれ1期目の途中で、変わっており、行政経験はない。しかし「子育て日本一」を掲げ、若さとやる気、政治信念を強調している。
 知念氏は、「那覇軍港(跡地利用)は都市基盤の要になる。那覇新都心がなければ今の那覇市がないように、軍港跡地は次の世代に残す財産だ。都市経営は難しい。本音を言うが那覇市政は甘くない。私はそれだけの覚悟をもって望んでいる」。ところが、「民意を尊重する」と言いながら、日米政府に対応を求め、自身は静観するという。渡具知名護市長の言う「国と県の間で静観する」を良しとすると言うのだ。これが「地方自治」だと主張している。

10月16日出発式で玉城デニー氏が挨拶。18:25


 翁長雄治氏は、「(県民の)苦渋の決断をないがしろにされているからこそ、私たちは苦渋の選択をしない」と主張する。また「政府との距離感で税金の使い道が変わるのはおかしな話だ。納税は平等なのに再分配で差別される。このようなことを子どもたちに引き継ぎたくない。政府にノーというべきは、しっかりとノーと突きつける。私の実績、経験は市民と協働でつくる。皆さんの声を必ず形にする」と。
 個々の政策と政治姿勢が重なり合うのが、政治の現場だろう。沖縄においてはこのことが顕著となる。沖縄が受けてきた歴史を考えれば、当然のことだと言わざるを得ないのが悲しいことだ。

堂々と政治信条を語る翁長雄治氏。18:36

(Ⅲ)私からの補足
①「中道」と「オール沖縄」について
 城間幹子氏は、自分はそもそも中道であり、変わっていない、オール沖縄が「革新共闘」のように変わったのだと言っている。この主張をいささか吟味しておきたい。
 ご本人が「中道」を自認することは、ご本人の問題だ。そこをとやかく言うつもりはない。しかし那覇市長としてオール沖縄勢力を形作ってきたことも確かなことだろう。翁長雄志氏が中央政府に揺さぶられるままの現状を直視する中で、イデオロギーよりもアイデンティティーを打ち上げたに違いないことを、城間市長はどう考えているのだろうか?
 そもそも、2014年から2022年の今日まで誰がどのように変わってきたのか。ここを問わない「中道」や「オール沖縄」もないのだ。政府は新基地建設をあからさまに強化してきた。2010年「島嶼防衛」を打ち出し、島々に基地建設を着々と進め、米日両国は2021年4月「台湾有事」まで公然と主張してきた。「敵基地攻撃能力」をもつ政治が前面に急浮上してきたのだ。沖縄を戦場とする戦争が想定されている事態なのだ。
 こうしたことを無視したまま、「私の中道は変わらない」と語ることは、戦争にみすみす引きずられていくことになる。この国の軍事予算を何倍にも増強していく動きも強まっている。このままでは、民生費や教育費の財源が軍事に剥ぎ取られていく。また消費税などの税金が値上げされていく。市民の生活は益々貧しく不安定になっていく。
 このことは「オール沖縄」にも問われている。「オール沖縄」は、新基地建設反対とオスプレイの導入反対でまとまってきた訳だが、沖縄が受けてきた歴史を顧みれば、特に沖縄戦を想起すれば、再び戦場にする道に抗うことは理の当然のことだろう。私たちは、今こそ「命どぅ宝」を想起し、沖縄アイデンティティーを練り上げていくことが重要だと私は考えている。

10月16日県庁前 18:45

 

②辺野古新基地建設と那覇市の問題
 辺野古新基地建設と那覇市に直接関わる問題もあるのだ。ここでは要点だけ述べる。米日政府は、普天間基地の返還はすべての基地機能の再編が完了するまで不可能だと言っている。普天間基地は2800mの滑走路をもち、嘉手納飛行場の補助・代替機能も持っている。辺野古への新基地建設案ではこの機能を備えていない。他に長い滑走路等の機能を整備することになっている。そこはどこかといえば、私たちの沖縄の玄関と言える那覇飛行場だ。那覇飛行場は既に軍民共用空港だが、「軍」に自衛隊プラス米軍が入ることになる。
 言うまでもなく那覇飛行場の周囲に、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の基地が密集している。そこに米軍が来たらどうなるのか。沖縄の玄関口が閉ざされ、破壊されることがありうるということだ。
 新基地建設の是非とは、かくも厳しい問いなのである。この問題は、私が那覇市長選で翁長雄治市長誕生を期待している所以でもある。  

18:48 共に那覇市をつくっていこうと訴える。



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