武弘・Takehiroの部屋

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「固有名詞」の読み方の大切さ

2024年05月17日 14時36分53秒 | 芸術・文化・教育

<2008年8月5日に書いた記事を一部修正して復刻します。>

人名や地名などの「固有名詞」は、絶対に間違ってはならないというのが鉄則だから、人はそれほど字を間違わない。しかし、固有名詞の読み方・呼び方となると、日本語の場合これは多岐にわたっているので、非常に面倒なものである。
昔、私は某テレビ局の報道部で仕事をしていたが、一番厄介で面倒臭いのが固有名詞の読み方だった。その時ばかりは、テレビやラジオの記者よりも、新聞記者や雑誌記者の方がどれほど楽かと思ったものだ。
例えば、○○県○○市の「東町」である事件が起きたとする。「東町」をどう読むのか。「ひがしまち」「あずまちょう」「ひがしちょう」「あずままち」などといった読み方の中から、正しいものを選ばなければならない。警察署や地元の人に聞いても、時たま思い込みで間違えることがある。そこで、国土地理院発行の市町村別の膨大な資料と首っ引きになり、正しい読み方を確認するのだ。
時間に余裕がある場合は何ということもないが、ニュースは“追い込み”で入ってくることがしばしばある。放送直前に原稿をアナウンサーに渡し、読み方が確認できるとスタジオやアナブース室に駆け込んで行って、「あれはアズマチョウだ!」などとアナウンサーに伝えることがよくあった。そういう時は、ルビもふらず「東町」という漢字だけで済む新聞などが実に羨ましかった。

こんなことを言うのも、実は去年大騒動になった、社会保険庁のズサンな年金記録管理問題を思い出したからだ。つまり、年金保険料の納付記録が5000万件以上も不明になり、「宙に浮いた年金」だとか「消えた年金」などと騒がれた問題である。
あの時明らかになったのは、古い年金記録を電子化する際、社会保険庁は名前の漢字の「読み方」を本人や勤務先などに確認せずに、勝手にカタカナに置き換えて入力してしまったのだ。 例えば「小山佳子」という人は「こやまよしこ」「おやまよしこ」「こやまけいこ」「おやまけいこ」といった風に読めるわけだが、それを本人らに確認せずにコンピュータに打ち込んでしまった。
それが大騒動の発端だったのだが、普通名詞なら「赤ちゃん」でも「赤ん坊」でも「赤子」でもそれほど問題ではない。しかし、固有名詞となるとそうはいかない。「小山佳子」という名前の人は、全国に相当いるはずだ。しかも“同姓同名”だけでなく「読み方」まで同じという人もかなりいるはずだ。
それをいちいち調べるのは大変なことだろうが、先にも述べたように、テレビ局やラジオ局は必ずそれをやっているのだ! また、やらなければならない。しかし、社会保険庁はそれを怠ったのだ。

日本語は難しいと言われる。漢字とひらがな、カタカナが合体しているからだ。また、ローマ字もよく入ってくる。これが英語なら、アルファベット26文字で全てが片付く。えらい違いである。しかし、もっと面倒臭くて大変なのは「固有名詞」の読み方、呼び方である。
これを間違えたり疎かにすると、年金記録の大騒動みたいなのが発生するのだ。われわれ日本人は“因果”な国語を持ったものである。しかし、そういう難儀を乗り越えないと、完全な「日本語」に到達することはできないのだ。(2008年8月5日)


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