武弘・Takehiroの部屋

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参議院は必要か?

2024年06月14日 03時41分43秒 | 政治・外交・防衛

<6年ほど前に書いた以下の記事を復刻します。>

最近、大阪維新の会が現代版「船中八策」の骨子を発表して話題になっているが、その中に、一院制を目指して参議院の廃止というのがあった。私はこれに大賛成である。今日は維新の会の政策面の話は止めて、参議院問題だけを取り上げたい。
戦前、日本には衆議院と貴族院があったが、敗戦後、GHQ(連合軍総司令部)が日本国憲法の草案を作った時には、新しい日本は一院制が好ましいという方針が打ち出された。マッカーサー元帥もそういう意向だったという。 これは「史録 日本国憲法」(児島襄著 文春文庫)に出ている話だ。ところが、GHQが日本側と折衝すると、日本側は二院制が良いと主張した。折衝の詳しいことは分からないが、結局、GHQの方が妥協して、新憲法の案文では二院制が採用されることになった。それで衆議院と参議院が誕生したのだ。
歴史的な経緯をもう少し述べると、私らが子供の頃は「衆議院は政党で、参議院は人物で」選ぼうと、学校で教わったものである。私はそれが正しいと永い間信じていた。だから、参議院は“良識の府”と呼ばれ、政党に拘束されない「緑風会」というものまで出来たのである。
ところが、政治はそんな生易しいものではない。参議院もいつしか“政党化”され、やがて緑風会も消滅したのである。つまり、皮肉な言い方をすれば良識の府でなくなったのだ。 そうなると、参議院はすっかり面目を失い、いつしか衆議院の“カーボンコピー”と呼ばれるようになった。それでは良くないと、参議院側もいろいろ改革に取り組んだのだが、大した成果をあげられず今日に至っている。
したがって、参議院は国費を物凄く使うから無駄であり、時間がかかるだけだから廃止しろという声が出てきて当然である。まさに今回、維新の会がそういう主張を掲げたのだろう。
私も昔、テレビ局の政治部記者を永い間やったことがあるが、法案が衆議院を通過して参議院に回ると、とたんにやる気がなくなった。なぜなら、衆議院と同じような審議を1カ月ぐらい延々とやるのだ。“二番煎じ”もいいところである。 ニュースにはほとんどならない。他にニュースがない時に、せいぜい「穴埋め」になった程度か。あとは法案が成立したり、与党側が強行採決をする時にニュースになったぐらいだ。もちろん、参議院先議の法案もあるが、数はとても少ない。だから、ある政党関係者に「参議院なんて要らないだろう」と言ったことがあるが、その人は「う~む」と唸ったまま何も答えなかった。

参議院の廃止と言うが、要は「一院制」のことである。本当に「二院制」が必要であればそれも構わないが、日本の場合は戦前の貴族院を引きずった形で残っている。いわば旧制度の亡霊、残滓(ざんし)みたいなものだ。
日本の国会だけは二院制だが、地方は全て“一院制”である。都道府県議会も市町村議会ももちろん一つしかない。それは当たり前と思うかもしれないが、必要であれば都道府県議会もそれぞれ二つあっても良い。例えば上院と下院のように。しかし、そんなことを望む人はまずいないだろう。
国会だけが特別視されているからか、貴族院の残影なのか日本は二院制をとっているが、世界の大勢は一院制が圧倒的に多い。列国議会同盟に所属する178カ国のうち、64%が一院制である(残り36%が二院制。末尾に参照記事をリンクしておく)。ただし「連邦制国家」の場合はほとんどが二院制だ。もちろん、日本は連邦制国家ではない。
話が少し逸れたが、仮に参議院が廃止されて一院制になったとしたら、衆議院(私はこれを「国民議会」と呼びたい)は、もっと議員定数を増やしても良いではないか。ただし、今より人数が増えるから議員の報酬はもっと低く抑えるべきだ。
一院制の場合は衆参両院の統合など、いろいろな形が想定されるだろう。しかし、まだ決まったわけではないから予測、推測は止めておこう。いずれにしろ、大阪維新の会が参議院の廃止も含む「一院制」を提唱したことを高く評価したい。
この問題については話したいことが色々あるので、続編を書くことにしたい。

世界の一院制議会・・・http://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/publication/hogakuronshu/107/fujimoto.pdf

 

<続き>

参議院が国政に混乱をもたらすとはよく言われるが、別にこれは「衆参ねじれ」状態を指すとは思わない。二院制であれば「ねじれ状態」が起きても当然であり、むしろ衆議院での政権与党の暴走に歯止めをかける効果もあるのだ。二院制論者はよくそう言うが、私も同感である。
そんな「ねじれ」のことではなく、もっと大きな問題がある。参議院には「解散」がないということだ。つまり、議員が6年間身分を保証されている。それは一見良いかもしれないが、衆議院に比べると余りにも“特権階級化”していると言えよう。
その好例が7年前に実際に起きた。2005年の夏、時の小泉純一郎内閣は「郵政民営化法案」を成立させるため全力を挙げていた。いわゆる「郵政法案」は衆議院で可決され、参議院に送られた。ところが、郵政民営化に反対する自民党議員が造反し、参議院では郵政法案が否決され廃案になったのである。
その時、小泉総理は何をしたか。覚えている人も多いだろう。「国民に信を問う」と言って衆議院を解散したのだ。おかしいとは思わないか。 法案を否決したのは参議院なのに、法案を可決した衆議院を解散したのだ!
こんな道理に合わない話はない。本来なら法案を否決した参議院を解散すべきだが、日本国憲法には参議院の解散はない。したがって、衆議院を解散したというのだ。つまり、衆議院は参議院の“とばっちり”を受けたのである。国政混乱の象徴的な出来事だった。

この「郵政解散」については、ごく一部の新聞が道理に合わないと批判した。当然である。小泉内閣でも島村農水相が解散の署名を拒否し、罷免されたほどだ。小泉総理は自ら農水相を兼務し解散へ突っ走ったが、これは前代未聞の事である。ところが、ほとんどのマスコミはこれを問題視せず、郵政解散の報道に夢中になったのだ。
この解散を「7条解散」と言って、内閣の決定でいつでも衆議院を解散できるという憲法7条に基づくものだ。これを正しくないと言う学者もいるが、別に違法ではない。過去にもしょっちゅうあった事だ。
余談になるが、この郵政解散・総選挙は異常だった。小泉総理が繰り出す“刺客”と呼ばれる候補者にマスコミは目を奪われた。小池百合子氏に始まり最後は“ホリエモン”と呼ばれる有名人まで登場し、テレビなどは夢中で取材したのである。正に「小泉劇場」が花開いたのだ。総選挙の結果は“小泉自民党”が圧勝し、民主党は惨敗したのである。
あの時のことを覚えている人は多いだろう。あんな解散・総選挙はそれまでになかった。法案が参議院で否決されたから、それを可決した衆議院を解散するなど前代未聞の事である。ところが、マスコミはほとんどこれを問題視せず、選挙報道に熱中したのだ。おかしいとは思わないか。

なんだかマスコミ批判になってしまったが、本題に戻ろう。問題は参議院である。郵政法案を否決するのは良いが、自分らは解散になることがないから勝手に行動できるのだ。いわば「象牙の塔」に籠って好き勝手にやっているようなものだ。どうなろうとも、とばっちりを受けるのは衆議院だからだ。もし、参議院に解散があるなら、自民党議員も怖くなって造反しなかったかもしれない。
これほど国政を混乱させた事例はない。もちろん、小泉総理は万々歳だったかもしれないが(自民党も大勝して嬉しかっただろう)、参議院に解散がなく「特権階級化」しているのが最大の元凶である。
これには後日談がある。圧勝した小泉政権はもう一度、郵政改革法案を衆議院に提出した。もちろん賛成多数で可決され、参議院に送られた。再び参議院自民党の対応が注目されたが、今度は総選挙の「民意を尊重する」とか言って、法案を可決・成立させたのである。ところが、真意は違う。もう一度参議院で法案を否決したら、「参議院無用論」が起きると心配したからだ。つまり、二院制を維持するために、自らの信念を曲げて法案に賛成したのだろう。
参議院とはそんなものだ。衆議院の“二番煎じ”をやるだけでなく、“二度手間”をかけるためにあるようなものだ! 皆さんはどう思われるか。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めて耳にした話 (希土暁宣)
2012-10-08 17:33:56
ですが、なるほど、参議院はいらないですね。
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参議院廃止 (矢嶋武弘)
2012-10-08 18:36:42
希土さん、参議院廃止の話はけっこう前からあります。
存在価値があるなら良いのですが、そうでなければ「無用の長物」になってしまうでしょう。考えどころですね。
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おはようございます。 (希土暁宣)
2012-10-11 06:03:10
左上の、「尖閣、竹島を共同管理に」というご提案、おもしろいし、タイムリーです。記事にしてみられてはいかがでしょう?私も転載させていただきます。
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尖閣・竹島 (矢嶋武弘)
2012-10-11 06:38:46
希土さん、おはようございます。
尖閣・竹島は「共同管理」しかないでしょう。領有権を主張しあったら何も解決しません。
ただ、中国・韓国と敵対したい勢力はそれに反対します。いずれにしろ、頭の中で整理できれば、記事にしたいところですが・・・
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ブログで哲学喫茶を開店する (田の神様のつぶやき)
2013-07-05 10:44:21
「参議院を廃止せよ!」同感です。田の神様も何回かつぶやきました。しかし、皆相手にしません。参議院の廃止は、憲法改正が要り、参議院で否決されます。不可能なことを言うより、せめて参議院が国政を停滞させている憲法59条2項の改正から始めてはいかかでしょうか。
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田の神様 (矢嶋武弘)
2013-07-05 12:57:30
そうですね。59条2項の衆議院の3分の2以上の再可決規定などを、再検討すべきですね。
しかし、参議院への疑問は広がっています。
今度の選挙で、投票率が極めて低かったら、嫌でも考えざるを得なくなるでしょう。もう、そういう時代に入ったと思います。
維新の会だけでなく、真剣に考える人たちが間違いなく増えていると思います。
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無用だとは思いません (さすらい日乗)
2016-07-11 09:05:05
一応は、何らかの歯止めにはなり、ねじれ国会に象徴されるように、民主主義が時間がかかることの意味はあると思います。
そうしないと、英国のEU離脱のように、なんでもすぐ決まればよいということになってしまいます。
民主主義は、企業の運営とは違い即決即断が良いとは限らないのです。

カーボンコピーにしたのは、1980年代に全国区の個人制を廃止した自民、社会、さらにマスコミの責任です。
かつては個人で全国区に出られたのですが、今回の「国民怒りの声」の惨敗に象徴されるように、組織でないと比例区も出られません。

私は、参議院は選挙区選挙をなくして、全部比例区が良いと思います。
各地方の意志は、今回合区された高知の候補が比例区出て当選したように、比例区で救えるのですから。
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参議院 (矢嶋武弘)
2016-07-11 09:56:07
たしかに民主主義は時間や手間がかかります。二院制ならそれも良いでしょう。憲法改正でも、衆議院だけでなく参議院の発議も必要になりますからね。十分に慎重に考えることができます。
問題は、参議院の在り方にあると思います。今のままではカーボンコピーとほとんど変わりません。
参議院の在り方、選挙の方法を検証すべきです。比例区の拡充などには賛成です。今の選挙制度には多くの疑問があり、これが参議院無用論にもつながってきます。
ご意見は参考になりました。なお、いろいろ検討していきたいと思います。
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ブログで哲学喫茶を開店する (田の神様のつぶやき)
2018-11-29 18:46:35
 日本の二院制をなくすたまには、憲法改正が必要となります。政治的にも二院制は必要ではないでしょうか。ただ、今の各都道府県から参議院議員を選出すれば、衆議院と同じような国会議員が出てきます。
 田の神様は、都道府県を廃止し、日本を10ほどの道州制にして、そこから参議院議員を選ぶべしと考えています。田の神様はブログでつぶやいていますが、今県はほとんど仕事がなくなっています。
 かつて、兵庫県会議員が政務調査費を私用に使ったとメディアにたたかれて泣いていましたが、県の仕事がなくなっており、政務調査費の使いようがなくなっている証左です。
返信する
参議院は必要か? (矢嶋武弘)
2018-11-30 10:22:02
人口減少で地方がますます過疎化すれば、「道州制」を導入した方が良いと思います。
そうなれば、各道州代表の連邦議員、つまり今の参議院議員が必要になります。
それ以外では、今の参議院議員は無用の長物です。
しばらく黙っていましたが、この考えは今でも変わりません。 これこそ最大の「政治改革」でしょう。
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