≪ 消費税を上げて法人税を下げるなら、せめて「法人間配当無税」を廃止しろ! そのくらいのことが出来なければ、消費税の引き上げには反対である。 以下に、2012年12月19日に書いた記事を復刻します。≫
☆ 消費税の引き上げ問題が大きな争点になっているが、消費増税をしなくても、財源はいろいろあるのだ。例えば「法人間配当無税」という制度を廃止・見直しすれば、巨額の財源が国庫に納まるはずである。
これは中央大学の富岡幸雄(ゆきお)名誉教授が昨年1月19日の朝日新聞朝刊「オピニオン」欄に載せた「巨額の代替財源見逃すな」という記事で分かったものだ。
要するに、法人税制の改善によって巨額の財源を確保するよう提言したもので、以下、富岡教授の記事を引用しながら話を進めていきたい。
それによると先ず、今の法人税制では、企業が他社の株式を持った場合、受取配当金は「課税益金」に算入しなくてもよい、という措置が取られているという。
えっ!? 税制に素人の私はびっくりした。当然、課税されるものと思っていたからだ。なぜ課税されないかと言うと、法人は個人株主の集合体であり、法人税は個人株主にかける所得税の代替だと見なしているからだ。つまり、法人と株主に対する“二重課税”を排除するという考えなのだ。
おい、ちょっと待ってくれ。法人、つまり大企業などを個人株主の集合体と見るのはおかしいのではないか。むろん、企業には個人株主がいるが、大企業の株主は大部分が法人ではないか。富岡教授はこれを「法人間配当無税」と呼んで、巨大な優遇税制だと指摘している。
私もそう思う。数多くの他社の株式を所有し、巨額の配当金を受け取る大企業が“配当無税”なのだ。優遇税制以外の何ものでもない。富岡教授は、こんな優遇策は見直すべきだと提言している。これは当然だろう。
企業が受け取る配当金は次第に膨らんでいるそうだ。富岡教授の試算によると(国税庁の資料を元に)、過去6年間の合計額は45兆7966億円に達するという。このうち、巨大企業(資本金10億円以上の法人など)の占める分が9割、40兆4344億円に達するというのだ。
さらに「法人間配当無税」による課税除外分は31兆6938億円あり、このうち巨大企業の分が9割、27兆9003億円を占めているというのだ。これは国ベースの法人税だけで、実に8兆3700億円もの財源を失っていると推定され、少し古いが2008年度の1年間で推定すると、失った財源は1兆9807億円になるという。つまり、単年度でも2兆円近い税収減になっているのだ。
富岡教授は、少なくともこの巨大企業分は課税対象にすべきだと主張しているが、私も同感である。
そもそも、「大企業を個人株主の集合体」と見る考えが間違っている。そんなものは経営の実態から完全にかけ離れている。誰が見ても明らかだろう。
「法人間配当無税」の廃止・見直しには、財界や大企業が反対するに決まっている。また、これは法人税の引き下げ問題と絡んでくるだろう。しかし、こんな不公正税制を放置しておくのはおかしい。本当の個人株主には“二重課税”を排除するのは良いとしても、法人株主は別である。
われわれは富岡教授の提言を真摯に受け止め、法人税制の改善に取り組むべきだと考える。(2012年12月19日)