大項目2 海浜鉄道湊線の延伸計画は再考を 質問と答弁 未定稿
海浜鉄道湊線の延伸計画のうち、先行する第1工区の工事施行認可が11月18日におりました。工事期間は来年度から令和11年度までの5年間、現在終点の阿字ヶ浦駅から海浜公園南口近くまでの1.4㎞の延伸に約60億円です。実に100mの延伸に4億2千万円の経費がかかることになります。
全くの第3者的な立場なら、ローカル鉄道の延伸に夢やロマンを感じるかもしれませんが、市の財政状況のことを真剣に考えれば、そんな無責任なことはできません。
老朽化した図書館の建設計画が40億円の予算規模で始まっています。市庁舎の改築も議論が始まりました。先日特別委員会で視察に行った人口16万人規模の大垣市の新庁舎建設費用は、物価高騰が始まるコロナ禍前で約100億円ということでした。市内の小中学校の校舎の多くは老朽化してあちこち不具合を起こしていますが、修繕が追い付いているとは思えません。高齢化が進む市民の暮らしを支える交通施策や様々な福祉施策も求められます。
「自治体の役割は住民福祉の増進」であるとする地方自治法に定められた自治体本来の役割に照らして、決して潤沢とは言えない市の予算を何に使うのかが、問われています。
私は、現在の湊線自体に反対しているわけではありません。現在の湊線を維持するということと湊線を延伸するということを切り分けて、延伸することに市の税金が優先的に使われるのであれば、そのメリットは何か、それは投資に見合った効果なのか、将来にわたって正しい選択と言えるのか、冷静に詳細に検討されなければならないと考えます。
そのような立場から、主に12月5日の全員協議会に提出された資料を基に以下質問します。
(1)湊線利用者の状況について
1点目 過去3年間の通学・通勤定期利用者、定期外利用者の人数とその傾向について、さらに運賃収入の推移とその傾向について
2点目 観光シーズンに阿字ヶ浦駅から海浜公園に行くための、令和5年度のシャトルバス利用者の海浜公園入園者数に対する割合について
3点目 令和5年度のシャトルバス運行にかかる経費と、それに対する補助について、伺います。
(2)延伸後の需要予測について
1点目 通学定期利用の見込みについて
全協に提出された資料によれば、延伸後においても通学定期が増えることはなく、年々減少していくと推計されています。その理由について、伺います。
2点目 通勤定期利用の見込みについて
令和11年度に15万9千人にまで減少した通勤定期利用者が新駅1開業後に5万6千人増えて21万5千人と推計しています。この推計の根拠について、伺います。
3点目 定期外利用者の見込みとして、新駅1開業後1年目に76万2千人と推計し、前年の38万人から倍増しています。この推計の根拠について、伺います。
また、新駅1開業後、阿字ヶ浦土地区画整理地内の住民が新駅1を利用する見込み数について、伺います。
4点目 新駅2開業後の推計において、通勤・通学定期ともに減少傾向としているなか、定期外利用者の見込みが、4万5千人増となっています。この試算の根拠について伺います。
(3)延伸後の損益収支及び資金収支の推移について
1点目 開業後の税の優遇措置などが終わった後の損益収支について、年間どの程度と見込んでいるのか伺います。
また、優遇措置などが終わった後においても損益収支を黒字にする主な要因について、伺います。
2点目 資金収支について、金利と毎年度の返済額の見込みについて、伺います。
(4)100億円にふくれあがった市の負担について
当初、延伸計画の事業費は78億円、国・自治体・事業者で3分の1ずつの負担割合なので、市の負担は13億円だとして始まりましたが、コロナ後の物価高騰などの影響を受け、事業費126億円と試算しなおされました。
現在、国県の補助の確約もない中、事業者負担を26億円に据え置いたことで、市の負担は100億円に膨れ上がりました。しかも、事業者負担分の26億円も市が借金したうえで事業者に貸し付けるともいわれています。このような借金が、本来あるべき市民サービスに長期間にわたり与える影響は計り知れないと考えますが、いかがでしょうか。
答弁 森山企画部長
(1)湊線利用者の状況について
1点目 過去3年間の通学・通勤定期利用者、定期外利用者の人数とその傾向について、さらに運賃収入の推移とその傾向について
まず、過去三年間の通学定期・通勤定期、定期外の利用者数についてお答えいたします。項目別に申し上げますと、通学定期は令和3年度61万5350人、令和4年度60万780人、令和5年度59万9172人となっています。通勤定期は、令和3年度18万3158人、令和4年度17万1674人、令和5年度は、17万332人となっています。定期外は、令和3年度28万7444人、令和4年度34万3896人、令和5年度39万8740人となっています。合計では、令和3年度108万5952人、令和4年度111万6350人、令和5年度116万8244人となっています。
それぞれの傾向としては、通学定期については、沿線に所在する高校および美乃浜学園の通学者に加え、沿線に住む生徒や学生の利用です。美乃浜学園の開校に伴い、令和3年度に大きく利用者が増加したものの、直近の3年間の推移をみると少子化の影響により微減傾向となっています。通勤定期については、令和元年度まで微増傾向でしたが、コロナ禍以降テレワークなどの勤務形態の変化などの影響により通学定期同様に微減となっています。一方、定期外利用については、コロナ禍からの観光需要の回復に伴い、各年度とも5万人を超える増加となっています。
次に、過去3年間の運輸収入について、通学定期は令和3年度4961万9千円、令和4年度4739万4千円、令和5年度は4796万1千円となっています。通勤定期は令和3年度3015万5千円、令和4年度2871万5千円、令和5年度2780万7千円となっています。定期外は令和3年度7891万6千円、令和4年度9623万2千円、令和5年度1億1084万3千円となっています。合計では、令和3年度1億5869万円、令和4年度1億7234万1千円、令和5年度1億8661万1千円となっています。運輸収入の傾向としては、全体としてコロナ禍からの観光需要の回復に伴い、定期外収入が増加し、コロナ禍前の令和元年度と比べ、92.4%まで回復しています。また、定期外が全体の半分以上を占めている状況となっています。
2点目 観光シーズンに阿字ヶ浦駅から海浜公園に行くための、令和5年度のシャトルバス利用者の海浜公園入園者数に対する割合について
観光シーズンにおける湊線利用者に対するシャトルバスの運行については、海浜公園来園者のハイシーズンとなるネモフィラの開花時期、そして秋のコキアの紅葉時期に合わせて、阿字ヶ浦駅から海浜公園海浜口の間を無料シャトルバスとして平成24年度より海浜鉄道が実施しています。令和5年度のシャトルバス利用者については、春が27日間の運行で16920人、秋が14日間の運行で5076人、合計21996人となっています。
公園来園者数に対する割合については、シャトルバス運行日の公園来園者数の合計は約84万人であり、シャトルバス利用者の割合は約2.6%となります。
3点目 令和5年度のシャトルバス運行にかかる経費と、それに対する補助について、
令和5年度のシャトルバス運行経費については、506万1千円となっています。それに対する補助については、市が負担金を拠出している湊鉄道対策協議会から57万5千円を拠出しています。
(2)延伸後の需要予測について
1点目 通学定期利用の見込みについて
通学定期利用者が減少傾向となる理由としては、少子化の影響により通学定期の利用者である児童や生徒学生が減少するため、低減していくと見込んでいます。
2点目 通勤定期の利用者の見込みについて
新駅1の開業に伴い通勤利用者が増加する根拠については、隣接する工業団地への利用者と阿字ヶ浦土地区画整理事業の進捗に伴う区域内の住民の利用者を見込んでいます。
3点目 定期外利用者の見込み数について
まず、新駅1の開業に伴い、定期外利用者が増加すると見込んでいる根拠については、新駅1が海浜公園南口ゲートに近接する位置にあることから海浜公園の来園者を見込んでのものです。
次に土地区画整理事業区域内の住民の利用者数については、約4千人の増を見込んでいます。
4点目 新駅2開業後の定期外利用者の見込みについて
新駅2開業に伴い、定期外利用者が増加する根拠については、新駅2が海浜公園西口ゲート前に位置していることから、海浜公園来園者のさらなる利用増を見込んでいます。
(3) 延伸後の損益収支及び資金収支の推移について
1点目 開業後の税の優遇措置終了後における損益収支の見込みについて、
損益収支の算出過程で計上する税は、固定資産税、不動産取得税、法人税等が対象となります。そのうち固定資産税においては、鉄道事業の新たな営業区間に対する特例措置があり、税額が軽減されることとなります。特例措置の期間は、対象となる固定資産の引き渡しを受けた翌年から10年間であり第1工区分については新駅1の開業翌年から10年間、第2工区分については新駅2の開業翌年から10年間となります。
現在の収支計画においては、その特例措置を考慮して試算を行っており、固定資産税の特例措置が終了する新駅1の開業後17年目の損益収支は約40万円の黒字を見込んでおり、以降も黒字が続くと見込んでいます。
次に、優遇措置などが終わった後においても損益収支を黒字にする主な要因について、
損益収支は、収入としては運輸収入の売上高を計上し、支出としては人件費や動力費等の営業経費を計上したものです。固定資産税の特例措置が終了した後においても、延伸に伴う利用者の増加によって運輸収入等の売り上げ高が、人件費等の営業経費を上回る見込みのため黒字となります。
2点目 金利と毎年度の返済額の見込みについて
現在の収支計画においては、海浜鉄道が負担する約26億円について、市が金利なしで貸し付ける想定をしていますが、金融支援策は多様ですので今後最適な方策を選択していきます。なお、収支の見通しが好転すれば、貸付額の変更などを総合的に判断し共有していきたいと考えています。
次に、毎年度の返済額の見込みについては、延伸事業に伴う借り入れは、建設費総額を一括で行うのではなく、事業期間において年度ごとに必要な建設費を借り入れることを想定しています。このため年度ごとに借り入れる金額は異なり返済額も一定ではありません。
(4)100億円にふくれあがった市の負担について
湊線の延伸は、単なる大型の公共事業ではなく様々な相乗効果による市全体の活性化によるまちづくり事業であると認識しています。市では、ひたちなか海浜鉄道の開業後まちの活性化等に大きく寄与する地域資源であるとともに、道路などと同じく公共的なインフラ施設であるという考え方のもと国や県をはじめおらが湊鐡道応援団や商工会議所など多くの関係者と連携しながら様々な支援を行ってきました。
しかし、廃線の危機を一度は乗り切ったものの沿線住民の人口減少が著しく進むことは予想され、再び存続の危機が訪れることが危惧されています。
そのため国営ひたち海浜公園来園者の需要や現在造成が進められている工業団地の通勤者の需要を湊線利用に取り込むことで鉄道会社の経営の安定化を図り、地域生活に欠かせない基幹交通である湊線を将来に引き継ぐために湊線の延伸に取り組んできました。
ひたちなか地区への湊線の延伸は、沿線住民をはじめとした市民の移動手段としての利便性の向上をはじめ、国営ひたち海浜公園のアクセス性の向上、また沿線の観光施設や商店街などへの来訪者の回遊を促すことになる交流人口の拡大や地域の活性化などを目的として進めてきたものです。
市としては、引き続き国の補助制度を活用するなど、より多くの財源確保に努めながら湊線の延伸事業を支援していきます。
再質問 宇田議員
(2)2点目で、通勤定期利用の見込みについて伺いました。延伸後新駅1ができてから通勤定期5万6千人増えますということですが、そのうち新駅1を利用して近隣の企業に通う定期利用者の見込みの実数について、伺います。
答弁 森山企画部長
新駅1開業時の通勤定期利用者のうち、開業した際の工業団地への利用者数は年間4万8千人を見込んでいます。
再質問 宇田議員
年間4万8千人ということは、同じ人が定期券を使って毎日毎日使ってその合計が4万8千人という計算だと思いますので、実数にすると4万8千人というのは何人になりますか。
答弁 森山企画部長
年間利用者数4万8千人については、出勤日数を240日、往復2回という想定の下、利用者数を100名と見込んでいます。
再質問 宇田議員
実数にすると100人程度だということがわかりました。
次に、(3)の延伸後の湊線の経営を黒字にする要因ということで伺ったわけですが、これは実際には主に観光客の利用だということの理解でよろしいでしょうか。
答弁 森山企画部長
定期外利用者による大幅な増加の見込みのうち、その内訳としては海浜公園等の観光客を見込んでいるものです。
再質問 宇田議員
そうしますと、最初に延伸前の現在の湊線の利用者数と運賃収入の傾向について伺ったわけです。現在は、定期外利用者の方が通期通学定期利用者よりも少ないけれども、運賃収入は定期外収入の運賃収入が半分以上になっていると、現在でもそういう傾向だということでしたが、延伸後は観光客の割合がさらに増えるということになると、湊線の全体の運賃収入に占める、定期外主に観光客の利用による運賃収入というのは、全体の何割くらいになると見込まれているでしょうか。
答弁 森山企画部長
新駅1開業後の開業年度ですと、総運輸収入のうち何割程度が定期外収入かということになると、割合としては約4分の3、75%程度になると見込んでいます。
再質問 宇田議員
最後に市長に答弁を求めますが、延伸後、運賃収入は、湊線を黒字にするのは圧倒的に定期外、観光客の収入に頼るということになるわけです。しかし、観光客の収入に経営を依存するということは、非常にリスクが高いというふうに思うわけです。
新駅2まで延伸して、126億円かけて延伸しても、地元の方の利用や通勤通学に使うなど地域住民にとっての利便性の向上はわずかだということがわかりました。それにもかかわらず、この先、20年、30年と安定的に、観光客が湊線に乗ってくれることをあてにして税金を投入するのか、それが本当に自治体として正しい税金の使い方かと思いますが、いかがでしょうか。
答弁 森山企画部長
一般的に観光収入に頼る懸念というのはあるようですが、本事業をみた場合観光地としての国営公園の持つポテンシャルと、そして新たな終着点は国営公園とする海浜鉄道の運行ルートを勘案すると当てはまりにくいのではと考えています。
一般的には、安定性、季節性、乗車率等の懸念がありますが、国営公園の性質上そこが経営上移転してしまうということは非常に想定しにくいものでして、また、始発から終点までの観光ルートであるということは非常に乗車効率性の高い観光収入、定期外収入としては利点があると思うと見込んでいます。
そのうえで先ほども申し上げましたが、この事業を進めていくためには、私どもも含めて国に支援をいただきたいと考えています。現在、その前提となる「鉄道事業再構築実施計画」を海浜鉄道と策定していますので、市としては国の支援が得られるよう引き続き計画策定に注力していきたいと考えています。
意見 宇田議員
国の支援が得られるようにということですが、補助金が得られると確証がある前に新しい予算をつけて事業を進めるのは、ちょっと市民の理解が得られないと言っておきたいと思います。