大項目2 広域避難計画の策定状況と課題について 質問と答弁 未定稿
広域避難計画の策定は、原子力災害対策特別措置法により原発敷地から30キロ圏内の自治体に義務付けられていますが、その計画は机上の空論で良いはずはなく、想定される、あるいは想定外の自然災害時においても確実に実効性が伴うものでなければなりません。なぜなら、そこに住む一人一人の住民のいのちと人生がかかっているからです。形式的な避難計画を策定したと公表すれば、市民の不安は深まるばかりです。
世界レベルでの原発の大事故は、1979年のアメリカ・スリーマイル島原発事故、1986年のソ連邦・チェルノブイリ原発事故、そして2011年の福島原発事故と40年余りの間に3回も繰り返されていることを考えれば、これから先は絶対に起こらないと考えることは楽観的に過ぎます。
原発事故につながる恐れのある想定外の自然災害は昨今頻発しており、2024年元旦の日の能登地震では、予測していなかった活断層の動きや最大4メートルにも上る地面の隆起など、全く想定されなかったことが起こっています。もし、志賀原発が動いていたら、もし、珠洲市に珠洲原発が作られていたら、原発事故による放射能汚染により、被害の大きさ、深刻さは想像を絶していたかもしれません。
東海第2原発の30キロ圏内では14の自治体に広域避難計画策定が義務付けられ、現在8自治体で策定済みと公表されていますが、そのどれを見ても、複合的な自然災害時はもとより、原発の単独事故時においてさえ、実効性が伴うものとは思えません。
私は、議会の場で、これまで何度も実効性のある避難計画となるまでは策定できたと公表してはならない、と市長に質問してきました。なぜなら、自治体が形だけでも計画が策定できたと公表すれば、その先の東海第2地域の緊急時対応の取りまとめに進み、それを国が了承すれば、再稼働に向けた国のお墨付きがついてしまうと考えるからです。
そこで、本市の広域避難計画の策定状況、課題、考え方について、以下質問します。
(1)避難所確保の状況について
1点目 茨城県が避難所での一人当たりの面積を見直したことにより、本市において不足することになった避難者の人数について
2点目 現在の避難所の確保状況について
3点目 平成31年に市が取りまとめた基本方針で、コミュニティごとに避難先が割り振られましたが、避難所面積見直し後の避難先の割り振り方についてはどのように考えればよいのか伺います。
(2)広域避難計画策定の検討課題について
受け入れ先の避難所が確定した後の計画策定について、検討すべき課題は何か、伺います。
(3)緊急時対応について
国が、原発の再稼働の前提の一つとしているのは、その地域の緊急時対応が国の原子力防災会議で了承されていることです。そこで、緊急時対応について、
1点目 東海第2地域の緊急時対応は、周辺14自治体すべての広域避難計画の策定をもって、内閣府による地域原子力防災協議会において取りまとめの協議に入ると私は理解していますが、いかがでしょうか。
2点目 策定済みとした自治体では、それで完成ということではなく、その実効性については不断に高めていくとしていますが、緊急時対応の取りまとめの協議は公表されている計画をもとに行うと私は理解していますが、いかがでしょうか。
3点目 広域避難計画を策定できたと公表している自治体では、避難先が決まり避難経路が決まったことをもって策定できたと公表しているようですが、本市は、広域避難計画の公表をどのような段階で行うと考えているでしょうか。
答弁 白土市民生活部長
(1)避難所確保の状況について
1点目 避難所面積の見直しに伴い避難先が不足している本市の人数について
本市はこれまで国県と連携のもと、県内の県南および鹿行地区などの14自治体および千葉県の印旛地域を中心とする10自治体を避難先として確保し、平成31年2月に広域避難計画にかかる基本方針を取りまとめました。その後、新型コロナウイルス感染症が拡大したことを契機として、さらなる感染症対策やプライバシーの確保の観点から、県において避難所の運営のあり方が見直され、一人当たりの避難所面積の目安が2㎡から3㎡に拡大されました。これにより、避難先施設の更なる確保が必要となり、令和5年12月時点において、県全体で約12万5千人分の避難先が不足しており、本市で不足している人数は49,786人分となっております。
2点目 避難所の確保について
県は国と連携のもと、県内においてはこれまでの避難先市町村の施設に加え、国の機関や県の施設、民間企業での施設での受け入れについて協議を進めてきました。この取り組みにより、昨年6月時点で新たに約3万1千人分が確保されたことにより、県全体の避難先の不足は約94,000人分となりましたが、本市を始め避難先が不足している自治体への割り振りはまだされていない状況にあります。県は避難先施設の更なる確保を図るため、現在県外との協議を進めております。
本市がこれまで避難の受け入れに関する協議を締結している千葉県内の10自治体に対しては、本年1月に指定避難所の居住面積の調査依頼がされたところであります。今後、県において調査結果がまとめられ、改めて県外の自治体に協力を求めて行くとされております。
3点目 基本方針に示された避難先の割り振りの変更について
基本方針では地域コミュニティの維持を図ることを考慮し、自治会エリアなどまとまりのある単位ごとに避難先の設定をしています。今後、避難先を確保した後に市内の各地区の避難先について改めて割り振りを行ないますが、引き続き地域コミュニティの維持を図ることを考慮しながら、自治会エリアを基本的な単位として避難先を設定してまいります。
(2)広域避難計画策定の検討課題について
避難計画の策定を進めるにあたり、住民等が円滑に避難を行うことが出来るよう避難経路や代替経路を選定し、計画の具体化を図ってまいります。避難経路の選定に当たっては、高速道路、国道、県道等の幹線道路を基本として、可能な限り避難単位ごとの避難経路が錯綜しないよう配慮したいと考えています。また、自然災害などにより避難経路の通行に支障が生じた場合に備え、複数の代替経路を検討してまいります。
合わせて、避難先自治体においてひたちなか市民の受け入れを円滑に行っていただくためには、原子力災害時における連絡体制や避難所の開設運営の協力のあり方を共有するなど、避難者の受け入れにかかるルール作りを行う必要があると考えています。
(3)緊急時対応について
1点目 周辺14市町村の広域避難計画の策定をもって取りまとめの協議に入るのかと2点目の取りまとめの協議は公表されている計画をもとに行なうのかについては関連がありますので、一括してお答えをさせていただきます。
原子力災害時の対応については、全国13の原発所在地域ごとに設置された地域原子力防災協議会において、国の対応方針などと共に、関係自治体の地域防災計画や避難計画の内容を含め緊急時対応として取りまとめられます。また、その具体的な調整については、国、県の担当者などで構成される作業部会において行われることとなっております。
東海第2原発が所在する本地域においても東海第2地域原子力防災協議会作業部会が平成27年4月に設置され、本市もオブザーバーとして参加しています。作業部会においては、避難計画に関する国県からの情報共有や意見交換などが行われております。一方、緊急時対応の具体的な調整は進められておらず、いつどのような条件の下で取りまとめを行うか、具体的に示されていない状況にあります。
3点目 市は広域避難計画の公表をどのような段階で行うと考えているのか
避難計画につきましては、東日本大震災、福島第一原発事故を踏まえ、国が平成24年に防災基本計画を修正し、原発から30km圏内に所在する市町村に対し策定が義務付けられており、本市においても策定に取り組んでいるところであります。
計画の策定に当たっては、避難先の確定、避難先の確保が大きな課題となっています。また、避難先の確保後においても市内の各地区の避難先の割り振りや避難経路の選定、避難先自治体との協議など取り組み事項が多岐に渡ることから、計画の具体的な公表時期は見通せていない状況にあります。引き続き国や県と連携を図りながら計画の策定に向けて取り組んでいきます。
再質問 宇田
平成31年に取りまとめられた基本方針では、避難先として県内14市町村、避難所は280か所、千葉県10市町村で避難所は51か所と示されましたが、6年たって、施設の統廃合などもあるということでした。
そういう中で、避難所面積の見直しによって新たな施設の確保が必要になっているわけですが、避難所が確保された後のコミュニティごとの割り振りについて、市としては、施設を一つ一つ現地確認するのかどうか。施設の間取りや段差の有無、トイレの数、和式か洋式か、空調設備の有無、立地場所、駐車場の広さなど見てから割りふるのか、それとも地図や図面だけで割りふるのか、その点はどのように考えているのか、伺います。
答弁 白土市民生活部長
これまでも避難先となる市町村から避難先の図面等を頂いて割り振りしてまいりました。これからも新たにそういった施設が提供いただけるということであればそういった図面、それと情報ですね。避難先となる市町村の皆様から情報を頂きながら、現地を確認しながら割り振りをしたいというふうに考えています。
再質問 宇田
平成31に取りまとめた一人当たり2㎡の段階で避難所が300を超えてるんですよね。で、それが3㎡になるということですから、300から、もう400,500になるかもわからない。それを一つ一つ全部確認するのは大変な作業だと思いますけども、割りふるにあたっては、ぜひ一つ一つしっかりと現地を見ていただきたいと言うふうに思っています。
それでですね、そういう意味で、避難場所が確保された後の課題についても答弁いただいたわけですけれども、あの避難経路とか、代替経路とか言う前に、今も話しましたように、避難所が振り分けられたとしても、ほとんどの市民にとっては、行ったこともない地域の、行ったこともない施設になります。避難所までの行き方、避難所はどういうところにあるのか?トイレはどのようなトイレか?いくつどこにあるのか?駐車場は?ペットや子どもや高齢者はどんなふうに過ごせるのか?などわからないことばかりだと思います。トイレや寝る場所が心配で避難したくないという高齢の方、乳幼児の夜泣きや子どもが大声を出したりして周りに迷惑をかけるからと避難所にいけない方など、自然災害時でも課題だったと思います。
市民のこういう不安は、人格権・人権にかかわることであり、決してないがしろにされてよいことではありません。避難所が確定したとしても、そのような市民の不安について、市はどう考えているのか、どう計画に反映させようとしているのか伺います。
答弁 白土市民生活部長
事故がひとたび起きれば、この地域を離れて広域的に避難をする、当然生活環境がガラッと変わると言うような状況もございます。当然行ったことのない地域への避難ということですので、まずは円滑に避難できるような避難経路の提示、代替経路も含めてですが、そういった中で避難計画においては基幹避難所に来ていただいて、そこで避難施設を割り振るわけですけども、そういった中で、計画を作っていく中においては、市民の皆さんが、不安を少しでも払拭できるようにしっかりと説明をして参りたいというふうに考えております。
再質問 宇田
避難先が決まって、避難経路、代替経路が決まったからといって簡単に計画ができたというふうにはならないと言うことを申し上げておきたいと思います。
次に、(3)緊急事対応ですけれども、これは市長に伺います。
緊急事対応については、東海第2地域については14自治体すべてが策定をもって緊急時対応の取りまとめに入るかどうかということについては、市としても確かな明確な答弁はなかったかと思うんですけども、内閣府が出している「地域防災計画の策定と支援体制」をみますと、当該地域の緊急時対応の取りまとめとして、策定する自治体がそこには参加して、関係する自治体の避難計画をもって緊急時対応の取りまとめに入ると言うことが書かれておりますので、やはりすべての自治体の広域避難計画ができてから緊急時対応の取りまとめに入るというふうに考えて良いのではないかというふうに思っています。
避難計画は作らなければならない。しかし、作ってしまったら再稼働に一歩近づくことになってしまうと言うふうに考えています。そこが自然災害に対する避難計画との大きな決定的な違いだと思っています。原子力災害時の広域避難計画は、避難計画があれば安心する、避難計画がなければ不安だ、というものではありません。
避難計画も緊急時対応も、一度策定すればそれで終わりではない、不断に実効性を高め、適時計画は改定していく、と策定した自治体でも内閣府でも言ってますが、そう言いながら、他の地域では原発は再稼働されています。その点については、市長はどういう見解をもっているのか、伺います。
答弁 白土市民生活部長
緊急時の取りまとめのイメージでございますけれども、まあ各機関が主体的にそれぞれ作成します。地域防災計画だったり、ガイドラインであったり。市でいえば市の原子力地域防災計画、避難計画。さまざまな計画を集めまして、その計画を原子力災害対策指針に照らし合わせて、具現的かつ合理的であるかというものが確認されると言うことになります。
緊急時対応の取りまとめについては、災害対策基本法において地域防災計画の策定が義務付けられて、そういったものを持ち集めて協議がされるところですけれども、そういった地域防災計画に基づいて、避難計画の充実化統一化の観点から、原子力発電所が立地する地域ごとに地域原子力防災協議会というのが設置されて、そこで緊急事態対応がまとめられるというのが、これが一つございます。
もう一つ原子力施設の安全規制、再稼働も含まれると思いますが、核原料物質および原子炉の規制にかかる法律、いわゆる原子炉等規制法によって行われるというものが一つございます。
この緊急事対応と再稼働の関連性については、法令上は用件ではないと言うことになっておりますが、ほかの原発の立地する地域の事例を見ますと、緊急事態をまとめられて再稼働につながっていると言うふうな傾向がございます。
再質問 宇田
共通認識としたいと思っていることは、東海第2地域の避難計画が義務付けられている14の自治体ですべて避難計画ができれば、公表されれば、その次の段階に行って、地域原子力防災協議会で緊急時対応のとりまとめが行われて、そしてその先の原子力防災会議で国によって了承される流れができてしまう。そうするとそれによって再稼働につながるわけではないけれども、1つの要件をクリアしてしまうと、再稼働につながる一つの要件をクリアしてしまうと言うふうに思っていますので、本市においても広域避難計画を策定できたと公表することには本当に慎重になってほしいと言うことを申し上げておきたいと。そこは共通の認識にしたいなと思って質問をしているわけです。
この議論は、避難計画をつくることが自治体の義務であるということを前提に行っているわけですが、原点に戻って言わせていただけば、市民が避難しなければならない電気は必要ない、東海第2原発は廃炉にすべき、そうすれば避難計画自体が必要なくなります。
大谷市長には、再稼働に際して東海村と同等の事前了解権があるということなんです。この点について、市長の認識を改めて伺いたいと思うんです。
答弁 大谷市長
新安全協定においては、6市村が同等の権限を有していると言うように認識をしてございます。
再質問 宇田
新安全協定にもとづいて6市村が同等の権限を持っていると、いつも、先ほどの答弁でも大谷市長は、原子力所在地域首長懇談会の6市村が連携をして責任ある対応取っていくと言うようなことを、まあずっとおっしゃっているわけです。
東海村では今年の9月に東海村長選があります。現職の山田村長はこれまで再稼働に対しては中立の立場をとってきましたが、次の村長選では立候補する候補者は立場を明確にすべきと言っていると報道されています。
首長懇談会の6市村の連携という中身が、もう今後は問われてくると言うふうに思っているんです。連携ではなく、自らの、ひたちなか市長としての信念に基づく立場が今後は問われてくると言うふうに思っているわけです。で大谷市長は、これまで実効性ある避難計画ができない限り再稼働は認められないという発言をしてきているわけですが、その立場は今も今後も変わらないと考えてよろしいでしょうか。
答弁 大谷市長
現在市で取り組んでいる広域避難計画に関しましては、部長答弁でもこれまでお答えしているように、市単独で取り組む事項、それから国や県などと連携して取り組む事項、また市としての課題、そして市単独では解決が難しい広域的な課題等々、さまざまある中で、ひたちなか市として位置づけるべき課題に関して一つ一つ精査をしながら広域避難計画の策定をしているところです。
更には広域的に連携していかなければいけないことを実現していかなければいけないもの。これはやはり県それから国、さらに言うと緊急事対応の中で議論をして行くと言う形になるかと思われますので、そういった視野の中で、やはり実効性の高い、ある広域避難計画を作るために一連のプロセスはあるものだというふうに認識をしているところであります。
また、触れられている東海村長の発言でありますが、他地域における選挙に関するコメントに関しては、私の方で触れる必要はないのかなと言うふうに思ってございます。これまで通り6市村首長懇談会においては、同じスタンスで臨んでいくというのが私の現在の考え方でございます。
意見 宇田
再度言っておきますが、緊急時対応についても実効性を高めるプロセスはずっと続くと思うんですけれども、緊急時対応が作られたということが再稼働につながるという一つの条件をクリアするということになるということです。
それから6市村首長懇談会の連携ということの中でも、私は大谷市長が市民の安心安全を守る立場に立って発言されていくことを願いたいと思っています。