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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

笑う女・・21

2022-08-19 20:51:43 | 笑う女

「あ・・」
俺の頭に江崎と笑子の交渉を目撃したあの日のことが
蘇ってきていた。

所長はすべてを察している。
俺がこの個室の中で笑子に何をしていたか・・・
全てを察している。

「おかしいな・・と、思っていたんだ」

きっかけは笑子の定期健診だったという。
年頃になった少女の生理周期が崩れていた。
生理異常から、
子宮などの病気も検診の対象にすべきだと
所長は婦人科の検診も定期健診の項目に加えた。

そこで、婦人科のドクターに告げられた事実。

「彼女は性的暴行を受けている」

ドクターの触診に笑子は腕を上げ
セックスを要求して見せた。

はじめは、笑子のとっぴな行動が
何を意味するか、判らなかったドクターだったが・・・。

乳がんなどのしこりを調べるだけだったのに
笑子の瞳はとろりとした快さによいはじめ
膣磯鶏部への触診にいたって
腕が舞い上がり甘ったるい咆哮が繰り返されると
それがセックス要求のサインであると確信され
恐らく、職員の誰かが
彼女に性を教え込んだ末の所作としか考えられないと
告げられたと所長が話し始めた。

「まさかと思った」

自分の職員を疑う。
そんな構造では施設の維持管理から成り立ってゆかない。

「とにかく、信じようと、考え直した」

笑子の行動は秘部に触れられたことへの
驚きの表れでしかない。
所長の宥めが均衡を崩し始めたのは
笑子の日誌のせい・・・。

「生理がずいぶん・・・滞っていた・・・」

まさか、妊娠?
不安な事実を確認するのは
簡単なことだが・・・、
それより以前に
性的暴行・・・の事実を確認しなければならない・・・。

そして・・・、
祈る気持ちで廊下に忍び寄った。

単なる生理異常・・・。

そう信じたい所長の願いを虚しく崩れさす
ドアの向こうの男と女の痴態・・・。

「妊娠・・の可能性が高い・・・だろうね」

暴行・・・レイプについての責任問題より先に
笑子の妊娠が事実なら
このままでは、とんでもない事になる。

「まずは・・・妊娠の有無を確認。
その後に君への処遇を検討する」

お、俺は警察につきだされるってことか?

「所長・・・コレは・・・あくまでもヴォランテイアです。
それに・・・、
笑子が妊娠してるとしたら・・・父親は
江崎です」

俺の悪あがきに所長は悲しく首を振った。
「そんなことが・・・通じると思うかね?
それに・・・、
その日誌が江崎君は父親にはなりえないと証明しているんだよ」

「え?」

どういう事だ?

腑に落ちない俺を見て取ると
所長はすまなさそうに、首を振った。

「確かに・・・笑子君に性的暴行を繰り返し
性を教え込んだのは
江崎君かもしれない。
だが、
もしも、笑子君が妊娠していたとする。
裁判沙汰に持ち込んだとしても
この日誌が
江崎君が此処をやめる直前に
笑子君に生理があったと証明しているわけだから、
江崎君が父親に成る可能性がない・・・。と、みなされる。
それどころか、
むしろ、君とメイン介護を交代してから
生理が途絶えていると
日誌が証明してしまっているんだよ」

つまり・・・
俺が犯人だと濡れ衣をかぶるしかない?



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