やはり、同じ結果がでる。
研究所の実験室には、
蟻とミツバチが飼育されている。
飼育箱は、それぞれに20個ある。
その飼育箱の中に、働かない蜂 働かない蟻が
必ず出てきた。
40箱の中、およそ4%の個体が、働かない。
働かない個体は、働く個体に世話をされ
餌を与えられ、水を与えられ
排泄物を掃除され・・・
ただ、生きているだけで、
時折、動き回って見せるが
「仕事」はしなかった。
ーこういう個体が生まれて来るようになっているのか
はたまた、生まれてから仕事をしないと決めるのかー
最初はその観察からだった。
観察しやすくするために
4%の働かない個体を巣箱から削除した。
すると・・・
今まで、働いていた個体が
突如、働かなくなった。
それも、1匹や2匹ではない。
数を数えると・・・
全体の4%
どうやら、全体の個体数に合わせて
働かない個体が、出現する。と、言うことになる。
たまたま、働かない個体を全部、削除してしまったため
ピンチヒッターとして
働く個体が働かない個体に成り代わっただけで、
生まれてくる個体からでも、
働く個体からでも
4%を維持する「働かない個体」が出て来る。
しかし、首をひねる。
1万匹の4%は良いとして
最小数は、25匹に1匹ということになる。
24匹で、巣を管理し、餌をあつめ、
女王の産んだ子の世話をする・・
と、いうのは、無理だろう。
すると、働かない個体は出現しても、
それを世話するどころじゃなくなる。
もしかすると、
働かない個体が出現しない―存在できない上限数があるのではないか?
そして、
この仮説を確かめることになった。
1万匹の4% 400匹を削除
9600匹の4%を削除
9216匹の4%を削除
8847匹の4%を削除
8493匹の4%を削除
と、削除し続けていったとき
1000匹あたりから、
働かない個体が出現しない―存在できなくなってきた。
約1万匹の働き手がいた巣の、維持は
働く個体が1/10にまでになったら、成り立たない。
私は政府の某機関に送る報告書を作り上げることにした。
助手たちのリーダーである準教授の矢崎が
報告書をのぞき込んで
質問してきた。
教授、いったい何の実験だったのですか?
働かない個体がなぜ、出現するか?
と、いうことだと推察していたのですが・・・
違いますね?
今の人間社会もそうだと思わないかい。
働かない個体のために
無駄な金を使い、徒労でしかない労働が必要になる。
これを削除出来て
かつ、精鋭人数で、社会を動かしていけたら・・・
え?
精鋭人数で動かすということは、
いったん、大きな巣?都市機能をつくる必要があるんじゃないですか?
それこそ、無駄じゃないですか?
いや、それは、問題ないだろう。
最小限の働く者たちで維持できるのだから
で・・でも
最小限の働く者だけにするために・・・
働かない者を削除する・・ん・・でしょ?
矢崎準教授の声が震えていた。
が、
でも、人間の集団と虫の集団
おなじ仕組みじゃないですから
4%理論と1/10理論は
成り立ちませんよね
矢崎準教授が、不安を覚えるのは
無理がない。
報告書を送る機関が政府所属だからだ。
でもね、矢崎君
実際にやってみないとわからないだろう?
こんな実証実験ができるチャンスは
もう2度とない。
社会を健全に維持するための
素晴らしい実験になる。
私はそう思う。
いや、そう思った。
私の報告書も
私自身も
矢崎準教授に握りつぶされてしまった。
そして、矢崎準教授は
留置所にいれられた。
死刑になるかもしれない。
天国にあがってきた矢崎君に
私は
働かない個体を削除するという案を握りつぶしたことは、
君こそが働かない個体になってしまうことだったのだと
伝えてやろうと思った。
そして、私をなきものにしたところで
すでに、報告書は機関の手に渡っている。
まさしく、徒労、無駄死に
機関の為に働かない者の末路はあわれなものだと思った。
想定外は
私の死だけだったが
あとのこと、世の中は、
うまく、変わっていくだろう。
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