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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

桃の実

2022-09-14 10:13:57 | 作品に寄せて・・

今年の夏はほとんど雨が降らず、あつかった。
必要な水分をためなければならない果実は自分の糖度を上げた(ひょっとして、浸透圧の原理で・・・)
おかげで、今年の果実は何を食べても甘く、おいしかった。
中でも、桃が例年より安く手に入った。
桃は傷みやすい。
大きく甘い桃がいっせいに収穫をむかえ、値段も崩れたのだろう。
例年なら倍以上する・・いや、あの大きさだったら、3倍以上?
思い切って大人買いした。

安い桃をかって、あまりおいしくなくて
桃のコンポートをつくったこともあったが、それくらいなら、缶詰のほうがよほど良いと思った年もあった。

桃の葉は皮膚病にきくとかで、利用範囲の広い果樹である。

こんなことから、神仙樹ともよばれるのかもしれない。

**************
『人間に負けた訳ではないわ』
己の情の薄さに負けたのだと思う。
ひのえが事に一心になる余り、
大きな筋目を狂わせていた事にさえ痛みも感じていなかった。
その子蛇の痛みを今更の様に哀しくあり、かのとに言われた通りだと思う。
深き思いを見てやらず、ひのえを己が手中に収めようとした。
が、ひのえの腹にいた子は
いつも、いつも、ひのえの心の奥底を見つめていたのに違いない。
母を救う為に子蛇は敢えて刀身の下に身を投げた。
命を懸けた思いに勝てるわけがない。
その思いの峻烈な事に白峰は打ちのめされている。
「己の身勝手」
と、かのとに言われた。
確かにそうだと悟さしたのが子蛇の生き様であった。
短い生を母のために与え尽くしたのである。
「わしは・・・わしの思いが精一杯じゃった」
「判っておるわ」
何時の間にか八代神が戻って来ていた。
その手に麗しい白い実を持っている。
微かに色づいた果実のうぶ毛を布でくるりと撫で回して取り払うと
「食え」
と、白峰の手においた。
続けて自分の食う分を布に包み込んでそうと撫で回してゆく。
「のう、黙って見守ってやるしかないに。
己の思いを奥底に沈めて見守ってやるしかない。
それがうぬのあの女を愛す法じゃろう。うぬに許されるはそれしか無いに」
「・・・・」
「それを知るに千年は長かったのう。わしも黙って見ているのが辛かったわ。
うぬにこの気持ち判るかの?」
ほほほと、笑うと八代神は桃の実に齧り付いた。

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