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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

竈の神・・22

2022-11-12 19:21:52 | 竈の神  白蛇抄第18話

白銅からの伝えを聞くと、

澄明は、また、善嬉のもとへ出向いた。

「白銅を通して、男のことは読めるのですが」

気になるのは、男 榊十郎の息子、榊縅之輔の

思念に混ざり込んできた白い大きな犬だった。

「白銅は、犬神のもとに成ったのではないか、と考えている様です」

あとは、善嬉が白い犬を読み下すだろう。

しばらく、善嬉は、黙りこくっていた。

やがて

「澄明、白銅の思う通りだの。

榊一族は、サンカの末裔だった。

随分前になるが、

阿波の山奥で、猟をしながらひっそりと

暮らしていたようだ。

その猟のために、何頭かの猟犬を飼っていたのだが

その中に、白い大きな犬がおる。

白い犬は、人間になりたいと思うだけのことはあって、

ずいぶん、榊一族のために尽くしていたのだが・・・

あるとき、猟にでた、榊縅之輔の前世だろう。

猪を追いこんださいに、崖の端から身を落とした。

白い犬は、三、四か月の幼犬のときにやってきて

榊縅之輔が十五の時から、ずっと面倒をみて育てたのだ。

特に、榊縅之輔には恩義に感じ、

兄のように、榊縅之輔を慕っていた。

その榊縅之輔が、崖から落ち、

その怪我が元で、帰らぬ人になったのだが・・・

二親は白い犬を、ずいぶん責めての」

あとを、話すのがつらそうな善嬉だった。

「おまえがいきておるのも、腹が立つ・・と」

むごい、仕打ちで、白い犬の命を取ってしまった。

「判りました」

白い犬の、思いは、大きく二つに分かれた。

榊縅之輔を慕う本来の気持ち

二親の仕打ちに、怨恨の気持ち

「おそらく、本来の気持ちのまま、榊縅之輔を

慕って亡くなったのだろうが、

湧いてしまった、怨恨の憎悪は、

白い犬も自分でどうしようもなかったのだろう。

それが、犬神に転生した理由だ」

深いため息で頷く澄明に成る。

ー榊一族を護ろうとしながら、

怨恨を晴らすかのように、破滅に導いてしまう。

「恐ろしい程、暖かな想いに飢えている」

「それが、生気をむさぼる理由ですね・・・」

ただ、ひとつ、変転の兆しがあるとすれば

榊縅之輔が転生してきたことかもしれない。

いづなが銀狼の座にいた間

犬神の差配はなく、

銀狼がいづなに転生した時に、

本来の犬神の座がもどり

犬神は榊一族に戻った。

二十年ほどの歳月がたっているとわからず

榊十郎によりついてみたものの

二十を超えている榊縅之輔に気が付いた。

白い犬の存念の継承により

怨念を持ちながら

榊一族を護ろうとする思念もわかされるのだろう。

それが、榊縅之輔が居ると判れば、なおさら・・・

「犬神も、榊縅之輔を慕う。

ゆえに、榊十郎の欲・身勝手な想いは

二親から受けた仕打ちによる、怨念を揺さぶってしまう・・・

犬神も・・・苦しかろう・・・」

「うむ・・」

善嬉が頷くと

「もうひとつな・・竈の神も、

なにか、それににたような事をやらかしたのではないかと思うのだ」

「例えば?」

「いや、読み切れる相手でないから、

当て推量だ。

法祥をみて、白い犬をみておると

竈の神は、八代神に逆らって

曲げてはいかぬ運命を変えてしまったのではないかと思うのだ」

善嬉の当て推量がおぼろげすぎる。

「白い犬は、思ってはならぬ思いに揺さぶられて苦しんで居ろう。

法祥は、どうしてもー何とかしようーという覇気が薄い。

これが・・・竈の神の失態ではなかろうか?

例えば、ある人間の定めが死を暗示していた時

竈の神は、なんとかして、思い、因を変えて

変転させようとするのでなく

八代神の閻魔帳・・人の寿命とか・・

そういうのを書き換えたのではなかろうか?

根本を変えようとせず、寿命を書き換えよう、ということは

おもってはいけない事だろう。

だが、その人間を何とかして引っ張り上げてやりたいと

逸った」

「思いを見定めるは、八代神の定法・・・

その人間の思いを変えてやることが出来なければ

諦めるしかない。

娘婿の竈の神は、その苦しさに負けてしまった・・」

「そういうことだと思う。

そして、地、に落とされ、

人間の行状をたんたんと

八代神に報せる・・・

それが、罪の償いであるとともに

それでも、人間をなんとかしてやりたいという思いにたったとき

思いを換えることが、できる竈の神の器が必要だと・・・

きがついてほしいというのが

八代神の思惑ではないかな?

それを、今回の犬神のことで、

竈の神に見せてやってくれという親心だろう」

「確かに・・・。

白銅も

ー思いを救わねば本当の救いにならぬー

と、思わされております」

「そうだと思う・・・」

犬神の怨恨の想いを

どうすれば、変えてやれるか・・・

塞ぎをする犬神に、ちかづく術がないなら

白い犬の怨恨をなくさせる?

と、思い付きはするが・・・

やはり、どうすれば・・・

「善嬉・・・おそらく察しがついている・・」

「みなまで言うな。わしも、都にゆく。

それで良いのだろう?」

「私も・・・参りましょうか?」

尋ねた澄明の脳裏に竈の神の姿が浮かぶ。

姿を現せる場所が白銅と澄明のくどしかないのかもしれないと

気になって、善嬉に尋ねた。

「とりあえず・・・良かろう。

竈の神はお前の思念を読んでいるだろうが

おまえの家のくど・竈を通してのことだろう」

そうだろうと思う。

その家の竈でその家に住む人々の行状を知る。

そういう役目の方が強く働くとおもえた。



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