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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 30

2022-09-03 16:54:47 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
「ここが?」高い塀がどこまで続くか。量王の居所は平城であるが、堅固な要塞を呈している。同道した役人は門前の警護兵に何か告げると有馬たちを招き入れる者をしばらく、一緒に待ち受けていた。警護塀が量王に取り次いだか、見るからに重職と思われる高官が現れ有馬たちを塀の中に招じいれた。 いきなり通された部屋は晩餐の用意がすでに整っている。大きな長い大理石の卓がしつらえてあり、隙間もないほどに豪華な食事が並ん . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 31

2022-09-03 16:54:30 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
「瑠璃波の妹御だな」と、声をかけた量王をまじまじと見つめながら絹は「絹波と申します」と、渤国での名前を名乗った。量王は姉、瑠璃波の想い人である。正式に婚姻をかわしていないが、兄といっても良いかもしれない。だが、絹が量王を見つめる瞳の中に非難がある。瑠璃波を正后に迎えず星読みの才を利用し瑠璃波の女をむさぼる。姉の恋心を考えると量王ばかりを責めるわけには行かない。量王が悪いのではない。瑠璃波がかなわぬ . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 32

2022-09-03 16:54:16 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
そして、翌朝。有馬たちは出立を余儀なくされることになる。 有馬がひょいと立ち上がると絹に声をかけた。歓待の礼にもなりませぬが、和国の踊りにてひとつ、返礼をとお伝え下さい。そして、数馬と象二郎を促す。「馬鹿になりきりましょう」歓待の宴に興じるお調子ものになると有馬が言う。はあ、と、頷いたものの踊りなぞ、知ったものではない。「どじょう掬いでよいです」とにかく、宴に酔う。これに徹するだけでよいという。 . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 33

2022-09-03 16:54:01 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
有馬もそうだが、象二郎も数馬も寝付けずにいる。庭に人影が映るとそれが空を見上げている。星読みであろう。と、いう事は 「絹さんはひとりですね」有馬がつぶやくと象二郎が付け加えた。「星読みに近づいているものがいる」その背格好からみても、「量王ですね」瑠璃波が絹に何をはなしたか、それが一番気に架かる。 「きいてきましょう」数馬を制し有馬が行くという。「貴方はいま、嫉妬と不安で、冷静ではありません。冷 . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 34

2022-09-03 16:53:46 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
星読みの想念のさなかに、混ざりこむ声は量王のものだ。「量王さま」瑠璃波が選んだ言葉は僕としての瑠璃波を表明していた。「少しばかり、おまえの言うた事がわかってきた」―絹波にあえば判る―その意味である。「おまえが、暇乞いをしたくなる気持ちも察する。すまないと思う」絹波を一目みて、運命の相手だと悟ったという。「はい」瑠璃波もとうに覚悟はついている。遅かれ、早かれ、告げられる決別に逆らう術はない。「おまえ . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 35

2022-09-03 16:53:32 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
翌朝になると、有馬たちは量王の居城からおいたてられた。「さて・・・こまったものですね」有馬は同伴する役人3人をみつめ、つぶやいた。門兵は黙って突っ立て居る。門兵と役人。―どう、くらますか―有馬は突然、象二郎と数馬に声をかける。「私のように」深々と門兵と役人に頭をさげると、有馬は昨晩の泥鰌掬いをおどりはじめた。「通じなくて良いのです。歓待の礼に踊りを披露しているとそれだけ、判ってもらえばよいのです」 . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 36

2022-09-03 16:53:16 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
なんとか、夕刻までに絹の元へ。数馬の焦りが手に取るように判る。絹にほれた男であればこそ、絹に惹かれた量王の心が読める。有無を言わせず、量王は絹を済し崩す。元々の絹の宿星が呼応して絹を正后に収める。その第一歩が始まる。なんとしても、食い止めたいのは和国のためではない。絹に焦がれた男のやむえぬ心情でしかなく絹なくして、生きてはおらぬ。は、数馬の本心である。 有馬たちが和国に帰っていく姿を見届けると絹 . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 37

2022-09-03 16:53:02 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
「絹波は和国でどうやって暮らしておった」量王の問いに絹は我に帰った。「小さなはたごのした働きを」6畳ほどの女中部屋に3人の女子衆と一緒に寝起きしていた。「和国にはひとりでいったのか?」「もちろんです。仲間連れではすぐに危ぶまれます」思わず渤国の言葉でやり取りをしてしまったりお互いのことを聞かれたときに、ちぐはぐな部分も出てきかねない。独りのほうが何かと都合は良い。「あやつらとは?」有馬たちのことを . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 38

2022-09-03 16:52:47 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
―自分勝手な思いに絹さんが、自分を殺すまねをしちゃいけない。貴方は優しすぎる。お人よしすぎる―自分のそこから沸いてくる思いをつかんでいかなければ見せ掛けの思いに流されるだけ。それは、ひいてはまたも量王を寂しさに突き落とす結果を生む。また、量王も寂しさ、悲しさが深すぎて、もがいてるだけかもしれない。寂しさに耐えかね、絹で埋め合わせられると思い込んでるに過ぎない。おぼれるものはわらをもすがる。そんな量 . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 39

2022-09-03 16:52:29 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
絹は空耳かと思った。昨日の夜のあの印がなっている。その叩き方はあの碑の有馬と同じ。三つならして、ひとつ。三つならして、ひとつ。まさかと思いながら絹は懐の印を鳴らし返した。まちがいなく、呼応する。三つならして、ひとつ。三つならして、ひとつ。有馬に違いない。数馬が象二郎が有馬が戻ってきている。だけど、ここ。敵地の真っ只中。姉さん・・・・。絹波のすがる眼に瑠璃波がうなづいた。「判ってる」有馬が箒星。輝き . . . 本文を読む

宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや 終

2022-09-03 16:52:11 | 宿根の星 幾たび 煌輝を知らんや
さあ、絹にどう話すか、瑠璃波が絹をみつめた。絹波?絹の胸の下、腹の中に小さな命の息吹が光っている。絹波・・?このこ・・まだ気がついていない。「絹波・・あなた・・わかっているの?あなたは、私を「おばさん」にしてしまったのよ」キョトンとした顔で瑠璃波の言葉を考えてる絹に瑠璃波は笑い出してしまった。「あなたは、量王の正后になれないってことよ。ちゃんと、別の人の妻ですって、貴方のおなかの中の子供が怒ってい . . . 本文を読む