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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

―アマロ― 31  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:34:32 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
ジニーを船底への扉の前まで先導すると、アマロはマストの先のあほう鳥をさがした。ロァの姿はもうそこにはなく、ロァの部屋をめざし、アマロはゆっくり、歩み続けた。時間を見計らって第3倉庫をぬけだしたリカルドがアマロの目の端にはいってきていた。「ジニーと、楽しく話せたかね?」なにごともなければ、いつものリカルドが吐くせりふにすぎない。「もちろんよ。この船のなかには、あなたほど、つまらない相手などいないのよ . . . 本文を読む

―アマロ― 32  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:34:11 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
アマロの心の底を見切った男はただ、アマロへの忠誠をみせるふりをして、元凶をたちきることをきめていた。二日後に現れたシュタルトの船に足場をかけると、采配を振るうリカルドの近くにロァはちかづいていった。身をかがめ、小声でリカルドに指図を与えるロァの姿を目で追いながら、ロァの選んだ事実を見届けるだけのアマロに徹していた。『リカルド・・おまえの小娘も・・』ロァの指示にリカルドは従う以外ない。「そして・・・ . . . 本文を読む

―アマロ― 33  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:33:53 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
船の横へりに渡されたシュタルトへの通路は細い板一枚。ロープを手すり代わりに左右にひきのばし、男たちは荷物を抱えてわたっていく。その作業がおわると、次はあの隅っこで固まってる女たちが順繰りにロープをたぐりながら、シュタルトの船に乗り込むしかない。板場一枚、地獄沙汰というとおり、船と船のすきまを覗き込めば青黒いさめのひれがいくつもみえている。足をすくめながら、大きな身震いに打ち勝ちながら、シュタルトの . . . 本文を読む

―アマロ― 34  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:33:29 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
「あ?」小さな驚きの声は悲鳴にもきこえ、ジニーの瞳は確かにあの娘を見つけていた。「アマローーー」甲高い声がジニーの喉からほとばしり、ジニーはつきつけられた事実を受け止められなかった。「なぜ?なぜ?なぜ?」よってきたジニーの恐ろしい形相を真正面から受け止めるとアマロはうっすらと笑って見せた。「なぜ?・・それは、私がいいたいせりふよ」「アマロ?」 アマロへ罵声を浴びせかけようとしたジニーだったが、ア . . . 本文を読む

―アマロ― 35  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:33:11 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
その疑問の回答はすぐにやってきた。自ら、シュタルトの船への足場に向かった娘は半分も歩かないうちにその身を板のうえからよろめかしていた。まさに・・・。殉死。こういってもいいのだろう。あっけなく、板場の上から姿を消して海に踊りこんだ娘の姿をジニーもアマロは見つめ続けていた。「あ?あ?あ?」なんで?なぜ?わかるけどわかりたくない。なんで・・なんで・・・とめられなかった結末をいやがおうもなくうけとめざるを . . . 本文を読む

―アマロ― 36  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:32:55 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
「リカルド・・が怖いか?」自分の一言がリカルドを制していると信じきっている男は臆病な子猫を笑う。すでに、リカルドに漁られている事実を気取られないように、用心深くアマロは答える。「そうじゃないの・・。日差しがきつくて・・」伯爵夫人だったころには光沢のある白い厚地の布に家紋の刺繍を施した日傘を使っていた。ここでは、そんなものもないし、船の甲板を日傘をさして、歩くは滑稽だと付け足した。「ふん・・どうせ、 . . . 本文を読む

―アマロ― 37  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:32:40 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
ロァがわざわざ、隠し立ている事実を横からすっぱ抜けるのは、島に上がる男たちしかいない。仮にジニーから、聞いたとアマロがいいぬけたとしても、そのジニーにマリーンの名前まで知らせることができるのも、やはり、男たちの誰かでしかない。いずれにせよ、ロァの女にいらぬ告げ口をするような男は、ろくな考えを持っていないことは確かだ。ろくな考え。わざわざ、ロァの女に女房の存在を教えなければ成らない裏側の心理。ふたつ . . . 本文を読む

―アマロ― 38  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:32:21 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
「おまえは・・最近・・ちょいと、おかしい」そう、あの娘が海にとびこんじまってから。ジニーがシュタルトの船に乗ってから・・・。ロァだって、判っている事実だ。むごい事をしている。生身の女を手下どものなぐさみものにさせて・・。あげく、女がはらんでいようが、おかまいなし。女の顛末がかきだししかないと判っていながら、物、金と女を交換する。自分だって、島に帰れば、3人の子供の父親だ。むごい仕打ちと引き換えに得 . . . 本文を読む

―アマロ― 39  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:32:07 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
ロァを送り出すとアマロはベッドの上に身体を投げた。「ジパング・・・?」男のでかす心の底をよみとることは、アマロには不可能だ。だが、なによりも、ロァが果てしない航海の道連れにアマロを必要としていることには、確信を得た。これが、最後の逢瀬になるかもしれないマリーンへの惜別は、アマロにとって、むしろ、心機一転のロァのいっそう深い覚悟に見えた。『ロァ・・・』胸の中でロァを呼ぶと、アマロは睡魔の手に自分をゆ . . . 本文を読む

―アマロ― 40  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:31:52 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
「いつまで、そうやってる?」ロァはアマロの屈辱をあざ笑う。いつまでも、なにも、命をなくした物体がどんなに重いものか。「死体が腐るのが先か、私が飢え死にするのが先か・・」どう生きようもない女にとって、どう死ぬもさほど重大な問題じゃない。腐っていく男にがんじがらめになって、飢えに苦しみながら死んでいく。大笑いもいいとこ・・・。だけど、ロァはアマロの皮肉を知らぬ顔で聞く。「おまえほどの女が・・そんな男の . . . 本文を読む

―アマロ― 41  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:31:36 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
マリーンと過ごすわずかの日々の間に大きな変化があった。リカルドを海に投げ込んで5日。ガスを含んだ腐乱死体が島に打ち寄せられた。「リカルド?」泣き崩れる知己を目の端に変わり果てた姿を目にやきつけ、ロァは出発の日を手繰りなおした。リカルドを失いジパングに発つ。無謀ともいえる。だが、それでも、ロァはアマロを選んだ。その証ともいえる出帆は、ロァの人生のおおきな賭けだった。一介の海賊で終わるか、一国を脅かす . . . 本文を読む

―アマロ― 42  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:31:22 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
アマロの日中は陽光の中のおいて燦然と輝いているかのように見えた。だが、闇が忍び寄ってくると、アマロの瞳はうつろい、影を見つめ始める。ドアを開けたそのうしろにふと女の影がうずくまる。つかの間の残像を追うアマロの傍らに立ったもうひとつの影はアマロの耳元で荒い息を吐く。忍び寄ってくる劣情はリカルドの亡霊が発するものでしかない。 アマロは瞳を閉じて神に祈る。神は無言のままアマロの祈りを聞き届けてくれ、ふ . . . 本文を読む

―アマロ― 43  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:31:03 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
「おかしい・・・」 甲板を吹きぬけた風がロァの頬に異様な生暖かさを感じさせていた。そのわずか、瞬きをする間も無く風の流れが変わった。 「どこかで雲が湧き上がっている」大気が流れが変えて雲に向かう。暖かな空気が上空に吸いあげられ大気が希薄になった空間にむかい、別の場所から、大気が流れ込み、風が起きる。 それが急激に起きるということは、スコールか?タイフーンか?いずれにしろ、早く、陸地を見つけて . . . 本文を読む

―アマロ― 終  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:30:44 | ―アマロ―  白蛇抄第15話
打ち寄せる波の音を耳にした覚えがある。水の中に身を横たえたまま身動きできずに死を待つばかりのアマロを抱きかかえ暖かな火の傍らで誰かの肌に凍える身体をぬくめられた覚えがある。 粉々に砕け散った船は船人もろとも、海の藻屑になった。アマロと何人かの男たちは島の磯辺に流れついたが助かったのはアマロだけだったに違いない。 何故なら如月童子が息あるものだけを確かめていたから。 浜辺に流れ着いた船の破片や . . . 本文を読む