玉川上水の木漏れ日

 ワヤン・トゥンジュク梅田一座のブログ

■短い秋と判官さま

2015年11月01日 | 北海道・広島
北海道の秋は短い。
札幌は都会なので、ビルばかりだけれど、ちょっと歩けば北海道大学や植物園や、大通公園や中島公園といった緑多い場所もあるけれど、のんびりできる季節は案外短いのだ。
以前、札幌のいわゆるベタの名所も行ってみよう、ということで、時計台とさっぽろテレビ塔は行ってみた(もちろんTV塔は昇っていない)けど、その他はからっきし。いつも余裕がない。

で、たまたま今回、次の打合せまで少し時間がでいたので、ホテルから打合せの場所まで歩いてみよう、ついでに「北海道神宮」にも寄ってみよう、ということになった。そういえば、まだ北海道神宮にはお参りしていなかったな・・・、よく晴れた秋晴れの日だった。紅葉がきれいだった。
途中、いろいろ寄りながらも、北海道神宮を目指してみた。だいたい2kmくらいの行程だろうか。こういう日は、たまには散歩気分も悪くない。


大通り公園にある彫刻家イサム・ノグチの作品。
北海道は実は彫刻のたくさんある場所だ。街には安田侃さんの作品もたくさんある。



途中にあったホテル。看板がホテルらしくないのでついつい惹かれて覗いてみた。
普通のホテルだったけど、安い。1週間で2万だそうだ。
高級ではないけど、ある意味シャレている。こういうところもあるんだね。



最近話題のパン屋さん(左)、右はギャラリー。
こういうのが円山辺りの路地にはたくさんある。



これでも、喫茶店である。
古い民家を買い取って、親子二人、三年がかりで手作りした喫茶店だ。
ここが話題になり、いまでは4軒の店を持っているそうだ。
つまり、ここのオーナーはアーティストで、来年展覧会を頼んだ、のだ。



左が札幌でも老舗のギャラリー兼ショップ。
来年の展覧会の件で、一応あいさつに。
右が中華&うどんという変わりものの店。どうせならということでランチをここにした。
円山周辺には、こういう古い建物を活かした店が多い。どれもセンスいい感じだ。



で、北海道神宮。以前から言われていたけどなかなか機会がなく初めて行ったけれど、ああそうか、円山公園と隣接していたのか・・・。札幌市街では、西の端、高級住宅街のはずれがこの公園と北海道神宮だ。
初詣などは、明治神宮と一緒で、大勢の人人人で前に進めないらしい。きっとさい銭だけで億だ、などとつい考えてしまうのは悪い癖。
日本は、ともかく坊主も神様も丸儲けだ。


周囲の紅葉が美しい。


逆行で写りがよくなくてすみません。でも立派なお社でした。


と、何も知らないとお参りするのもなんだから、一応、社務所に寄って祭神を覗いてみたら、基本は四柱になっていて、まずは開拓三神、大国魂、オオナムチ、少彦名、それに明治天皇ということだった。
なるほど、出雲系か・・・、出雲は国造神話があるから、明治に正式に本土になった北海道としてはそれが良かったということあたりだろうか。明治天皇はその後追加されたものとおもわれる。知らないで勝手なことをいうのもなんですが。

大国魂(おおくにたま)もオオナムチも両方とも大国主命(おおくにぬしのみこと)の別名である。ワヤン風にいうなら化身だ。府中の大国魂神社がいい例だが、祭神は大国主命である。きっとどこかで神力の分化が起きて、役割を別名でこなしたのだろう。
一方、少彦名(すくなひこな)も有名な神だが、これも出雲の国造の際に海からやって来た神とされている。だから渡来系という人もいるが、僕はあんまりそれは支持していない。むしろ、水と親和性のある概念の象徴なのではないか、と密かに勘ぐっている。だから舟でやってきたのだ。
水というのは、命の水、沖縄ならヌチミズだろうか、生命の源であり、月からやってくる、というのが呪術的神話世界の信仰につながっている。月というのは、女性の象徴、つまり懐胎の投影とされているのだ。
だから、再生や国造には必要な力なのかもしれない。これは、日本だけでなく、エリアーデなんかもさんざん書いているから、興味のある人はぜひそちらへ。

で、もうちょっとだけいうと、このオオナムチとスクナヒコナはセットでよく出てくる神様だ。大と小の対構造だね。小人と巨人の民俗文化を象徴するものだとおもう。
スクナヒコナの方は、桃太郎やお伽草紙の一寸法師に代表される小人的存在が活躍する物語のルーツだといわれて久しい。
実はこの二柱、名前の意味も対比的である。
オオは大きい、スクナは小さい、ナは大地、ヒコは男子、ムチは尊者とされているから、小人と巨人のコンビが大地をつくるというのは、きっと双方を埋め合うなんらかの人類学的コンビネーションの起源があるのではないかと密かに考えている。ただの勘だけど。
おもいきっていうと、トゥワレンとムルダを想像するとわかりやすいかもしれない。あまりに唐突なので誰にも言ったことがないんだけれど、実はこれ、ワヤンを始めた最初の頃から持っていた仮説なのだ。
それに、ま、こういうのは海外にもあって、だいたい大きい方は力持ちだけれど少し頭が弱く、小さい方はすばしっこくてずる賢い設定になっている。スターウォーズだって、トムとジェリーだって、全部同じ構成だ。
きっとそれらは、人類のなんらかの初源的イメージにあったに違いない、ということなのだ・・・。



開拓神社。北海道神宮の分社になっているらしい。

また話が逸れてしまったけど、ま、そんなわけで、初北海道神宮もお参りし、ちょっと参道から横に入ったら、開拓神社という社があった。
書いてあるものをみると、北海道開拓に尽力した功労者を祀っているそうだ。伊能忠敬や間宮林蔵の名前もあるし、松浦武四郎の名前もある。全部で三十七柱だそうだ。
例祭は、8月15日、北海道命名の日だそうだ。武四郎の功績だね。
ここに至るまでには、これ以外にも多くの苦労と功績があったことだろう。開拓の苦労は、一口には言えないし、またそこに虐げられた人々もいたのだ。そこを忘れてはならない。





店内の鉄板で焼かれる「判官さま」。

ともあれ、さらに横をみると、北海道の有名な菓子屋の茶屋があった。名物は「判官さま」というアンの入った焼きたての餅だそうだ。実はここでしか食べられないというので、多くの観光客が来ていた。
ま、一応ね、そういう体験はしておかないと、ということで、ひとつ買って、無料のお茶と一緒に外で食べた。素朴で美味しい餅だね。
気持ちよい秋日和、秋の穏やかな風がふっと吹いてきた。
北海道の秋は短い、次回来るときはあっという間に冬の気配になっている、だろうか。(は/175)




ホームページに載っているので、あえて告知はしませんでしたが、12月の光塾公演の概要をアップしました。みなさま今年もいっそうパワーアップしてお待ちしております。どうぞ、よろしくお願いします。
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