感想:いけない 道尾秀介

2019-09-23 19:31:02 | ミステリ

そーーーーいや。
自分でミステリのカテゴリを作っておいてすっかり忘れていた。
それなりに本も読んでいるんだが感想を書くのが面倒でいかん…。
というわけで少しずつ増やしていきます。




いけない 道尾秀介 2019年出版


言わずと知れた直木賞作家。
なにやらここ数年テレビでよく見る。
クイズ番組に出ていたり、タモリ倶楽部でおっぱいネタの空耳を投稿したり。
結構ダークな作風の小説が多い作家だが、そういう人ほど根は明るいのかもしれん。
楳図かずおとかな。



閑静な住宅街が広がる白沢(はくたく)市と蝦蟇倉(がまくら)市。
平和に見える街だが、たびたび凄惨な事件に見舞われる。
いくつもの隠された悪意や憎悪が表面化することなく
住人たちは毎日を過ごしていく。



収められているのは4篇。
それぞれの話の最後に1枚の写真が載っていて、
それを見ることで事件の真相がわかる仕組み。


たとえば最初の1篇。
数人の人間が各自のルートである地点を目指し走っている。
その中の誰かが走ってきた車の前に飛び出して事故死してしまう。

そこで表示される街のマップ。
どの場所からどういうルートで移動したかを文章に基づいて考えると答えがわかる。



オチを投げて読者に考えさせるあたり
「ああ、要は推理クイズみたいなもんか」と納得していたが
4篇それぞれのラストの写真で少しずつ意味合いが変わっていて
フィニッシングストロークの代わりであったり
事件の意味をがらりと変えてしまうものであったり。
推理クイズとしての統一感を出してももちろん面白かったと思うが、
小説としての面白さを引き立てるスパイスとしての要素が強い。

「意味がわかると怖い話」なんてのが最近ではひとつのジャンルとして成立しているが
ただ漫然と読むだけで内容を説明してくれるのではなく、
読者が頭を使って読み解いていく小説が今後は増えていくかもしれない。



そんな中、ストーリーも面白い。
ふたつの街で起こる様々な事件と、警察内部の人間関係の描写、
やばいカルト宗教に支配されつつある人々。

写真を見てその話の結末を理解しても、次の話ではそれと齟齬があったり
逆に結末を間違って理解していてもさりげなく軌道修正してくれたり
普通に小説としてのストーリーのつながりも楽しめる。
ボリューム的にもう1篇あればストーリー的にもトリック的にも満足できた感じ。

一気に読んでしまうほど楽しかったので
同じ手法を使ったシリーズとして、また別の作品も読んでみたい。



唯一気に入らなかったのが本の帯。

「本書のご使用法」
・まずは各章の物語に集中します。
・章末の写真をご覧ください。
・隠された真相に気づきましたか?
・「そういうことだったのか!!」
だまされる快感をお楽しみください。
※再読ではさらなる驚きを味わえます。


これを書いたやつは本当にこの本を読んだのか…?
最初からそういうメディア展開を狙ったおかげでかなり売れてるっぽいが
この素晴らしい作品を山田悠介みたいにしてほしくなかったよ…。



満足度(星5個で満点)
文章   ★★★★
プロット ★★★★
トリック ★★★☆

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