鮫島、最後の十五日 全20巻
漫画、佐藤タカヒロ
相撲漫画。
バチバチシリーズ3部作の最終章。
全20巻としてますが、未完です。
最初のページ
“俺は相撲に選ばれちゃいない…”
という文字から始まります。
鮫島が体格に恵まれてないこと
体がボロボロなことを椿が回想。
“俺の全部を…くれてやる”というセリフの後
床に突っ伏して涙を流す鮫島。
これが、どのタイミングのシーンなのか
わからないけれど、
鮫島が終わりを覚悟した瞬間なんだろうと
思われます。
タイトルも最後の十五日ですしね。
そして、二場所前の十二日目、
鮫島は東前頭十枚目で大関相手に九勝目を
あげます。
そして、最後の十五日スタート。
東前頭十四枚目になってます。
初日、鮫島と同期入門で
同じ小兵(体が小さい)の飛天翔と対戦。
バチバチの対戦で力を出し切る2人。
勝ったのは鮫島。
飛天翔は慢性外傷性脳症で引退しないと
死んでしまうと診断されていて、
鮫島との対戦を最後に
引退する覚悟だったことを知らされる。
引退する飛天翔に
“お前は相撲を振り向かせろ”と託される。
それに笑顔で答える鮫島だが
その直後に手の震えを感じて愕然とする。
ここから、
因縁の相手や初めての相手、
飛天翔と同じく同期の相手などなどから
連勝を重ね満身創痍になっていく。
飛天翔や椿は、
鮫島も慢性外傷性脳症なのではと疑い
やめるよう説得しようと思うが
鮫島の相撲が日を追うごとに洗練され
充実していくのに気圧されて説得できない。
そして十二日目、
対戦相手は鮫島と同じく全勝中の
因縁の同期、大関 王虎。
王虎は、鮫島がここまで来ると信じてた。
そして、これが最後の対戦になることも
予感していた。
全力を出し切る2人。
鮫島が勝利を掴む。
この対戦で横綱 泡影は鮫島に何かを感じる。
十三日目、
同じく全勝中で横綱に1番近いとされる
王虎の兄弟子、大関 猛虎。
猛虎は、鮫島の中に同部屋の王虎と
その父親である元横綱の親方 虎城の相撲が
入っているからこそ食らいつくして勝とうと
全力でぶつかってくる。
そして、最後の最後に鮫島の中の
父親である元大関 火竜の相撲で勝利する。
『十四日目 vs 泡影』の文字がドドンと出る。
それが、この作品のラストとなりました。
作者さんは41歳で
急性冠症候群で突然亡くなられたそうです。
ここで未完なのが悔しく、
しかしここで未完で終わる決断をした
秋田書店さんは凄いと思います。
この先を想像する余白を残して下さったことで
最後の十五日だったはずの鮫島が
ずっと相撲を取り続けてくれてます。
神がかった強さの横綱相手に
どんな取組みをしたんだろう。
途中から、その神がかった横綱の纒う何かが
鮫島に移っていく描写があります。
(四股を踏むときの違和感)
相撲は鮫島に振り向いたのか、
相撲に選ばれたのか、
きっと選ばれたに違いないと思いつつ、
でも満身創痍の鮫島は
相撲に全部をくれてしまうに違いなく
その後に鮫島はどうなってしまうのか。
そして、
そんな戦いが予想される十四日目の後に
十五日目はどうなるのか。
タイトルをそのまま読めば
十五日目まで相撲を取ってるハズと
思うのですが、それも想像するしかないです。
そして最初に描かれた二場所前は
鮫島は東前頭十枚目なのに、
この場所では東前頭十四枚目まで
番付を落としてるんですよね。
間の場所で鮫島に何があったのか。
十三日目に突如現れてた実母とは
どんな再会をしたんだろうか。
もう、色んなことを考えてしまいます。
部を重ねるごとに、
鮫島が喧嘩上等な暴れん坊から
芯の強い相撲を愛する力士へと成長していき
相撲の描写が深くなっていく漫画でした。
なので、後半になるほどに
相撲って面白い、
相撲が見たいと思うようになりました。
そして、今日の千秋楽まで相撲を見ましたが
今までとは一味も二味も違う感じ方を
するようになってました。
私は千代の富士から若貴全盛期の頃
相撲を見てきましたが、
その時は一瞬で決まるスポーツという
イメージだったんですが、
その一瞬に色んな技が繰り出されてて
一瞬の判断が勝敗を分けるということを
知ることができました。
漫画で読むと1つの取組が
凄く長く感じますが、
実際の取組を見て、解説を聞いて、
スローの再生VTRを見ると、
漫画がそんな誇張ではないんだなと
そんな凄いことやってるんだなと
相撲の面白さを知ることができました。
そして、相撲というスポーツの
体の向き不向き、
センスや才能が重要な残酷さも
また魅力なんだなと感じました。
私は食べれないし、
大きく太ることが出来ません。
半端な太さの自分が凄く嫌で
痩せてみたけど
気を抜くとやっぱり半端な太さに戻り
ライザップの最初の状態とかやれるぐらい
大きく太ってみようと頑張ってみたことが
あるんですが、
70kgの壁が超えれませんでした。
その時に、太れるって才能なんだなと、
残念に思ったことを思い出しました。
一生懸命に体を作ろうと努力して
作れなかった鯉太郎は、辛かっただろうな。
それでも相撲が好きで闘志を燃やす鯉太郎は
とても格好良かったです。
この漫画を読めて良かった。
今頃ではございますが、
作者さまのご逝去をお悼み申し上げます。
ありがとうございました。
最後の表紙絵は下書き状態の鮫島です。
これが最終巻だと感じさせる表紙で
見てるの涙が溢れます。