いいゲームだった。すごく頑張った。とても惜しかった。勝利まであと少し。でもその「あと少し」の差が大きい。初出場のフランスの時も日韓の時も「あと少し」の差だったと言っていた。日本サッカーのレベルは確実に上がっているが、トップレベルとの差が縮まったとはいえない。
8大会続けて予選リーグを突破したメキシコは、ドイツ相手に1-0で逃げ切る力がある。6年前のオリンピックでも優勝している。そのメキシコもベスト8(ベスト16)の壁を越えるのに、「あと少し」足りない。ワールドカップ優勝までには、どれだけ「あと少し」の″厚い″壁があるのだろう。
このゲームでみえた「あと少し」の壁。
①2点目を取ったあとの試合運びのまずさ
2-0で逃げきるしたたかさがない。(ボールをつなげても、相手をいなすようなパス回しができない)
2-2のあの時間帯にCB を2人上げて、点を取りにいく必要があったかどうかの判断。
馬鹿正直にゴール正面に上げてGKにキャッチされたCK。
②選手交代のまずさ
状況に合っていない。(決まった選手交代しかできない)
悪い状況を打開するための選手がいないなら、選び方が悪い。
③意識の甘さ
延長になると思っていた日本と延長にはしないと考えていたベルギー。(最後のCK からの切り替えの速さが違う)
④戦術眼の差
(自分たちが)身長で勝る相手に対して、交代選手が狙い通りのヘディングで得点を奪うことができる。
(決勝点になったプレーの時)あのタイミングで「いける」と感じた選手がベルギーには4人いて、「危ない」と感じた選手が日本には1人だけだった。(ペナルティエリアからペナルティエリアにスプリントした日本の選手は昌子だけ)
⑤ワールドクラスの個人能力と技術の差
交代で出てくる選手に特長や武器がある。
あの時間帯に80mのスプリントをしたあとに、1タッチで正確なラストパスを出せる選手と1タッチでゴールを決める選手がいる。
⑥世界トップレベルの選手がいる
速いドリブルで持ち上がる状況判断と技術に加え、ここしかないタイミングで絶妙のスルーパスが出せるデブルイネ。
(右サイドから)上がってくる選手のために斜めの動きでスペースを作り、ゴール前ではボールに寄る動きからのスルーで(左サイドから)上がってくる選手をフリーにしたプレー(素晴らしい状況判断)ができるルカク。
何が起こってもいいように、ゴールを決めた選手のすぐ後ろに全力でついてきていたアザール。
ベルギーよりもたくさん動き、ベルギーにたくさん動かされた日本。いいプレーをしてゴールも奪ったが、15(アシストした選手)と22(ゴールした選手)について戻れなかった香川と乾。あの時間帯にゴール前まで戻る気力と体力とスピードがあれば、ワールドクラス。(モドリッチなら絶対戻る)
日本は120%のプレーをして、観る者に驚きと感動を与えた。ベルギーは100%ではなく、ギアを上げる余力や冷静な判断ができる体力を残しながら戦って、最後に勝利をつかんだ。ホイッスルがなるまで虎視眈々とチャンスをうかがい、(準々決勝をにらんで)疲れを残したくないからこその速攻。優勝を目指すチームの底力。
ベルギーの攻撃力はワールドクラス。でも守備力はワールドクラスではなかった。あのDFでは優勝できないだろうと感じる。世界は遠い…。