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虞美人草(ぐびじんそう)

漱石全集(第4巻)

他人はどういうか、この小説が大好きである。

主役「甲野欽吾」が素敵な27歳なので、10代の頃は憧れて「哲学者」になりたいと思ったこともある。妹・藤尾も大層魅力的に見えた。「悪い人なのよ」と母が呆れて笑っていた。

漱石がプロの作家になる、新聞連載の第1号なので、今見てもおかしいほど、気合が入っている。きらびやかな言葉遣い、勧善懲悪の筋立てとで、文学的価値は疑問視されており、のちに作家自身が嫌いになって、自作集から抹殺したがったこともある。書簡集によれば「あれは悪い女です。惚れてはいけない」と読者に注意したり、翻訳したいというドイツからの申し出を断ったりしている。

漱石の文章力があまりに優れているので、それ自体が、魅力を持ち、独走して、意図とは別の効果が生まれるのかも知れない。

それにしても、作家は自作の価値を十分に知ることはないということがよく分かる。作家自身を越えた価値が、生まれるのだ。時を越えて・・・

「虞美人草」は1933年と1941年映画化されている。①溝口健二監督、夏川大二郎・月田一郎主演 ②中川信夫監督、高田稔・霧立のぼる主演(①を見たような・・・)
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コメント
 
 
 
Unknown (稲みのる)
2008-03-16 15:22:03
昔、友人と冬の比叡山登山に挑戦したことがあります。虞美人草の冒頭を洒落ての登山でしたが、大原女にも会えず、雪は降ってくるわ、道に迷ってしまうわの散々の無茶苦茶登山。命拾いしたものです。
漱石作品中では異色の七五調で、みのる君は大分影響を受けました。藤尾の強烈な個性には圧倒されました。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-17 05:42:37
稲みのる様
こちらは暑い盛りでしたが、乗換えの電車を間違え、比叡山に行くつもりが鞍馬山に行ってしまったことがあります。何といっても主人公が「ホホホ、妙(けったい)な所に寝てはる」と大原女に笑われるシーンは強烈ですね。
 
 
 
Unknown (JT)
2008-03-18 00:40:23
こんばんはー
漱石の時代の小説は、言葉の宝庫みたいなところがありますよね。私にはそれが新鮮であったりします。現代の小説はストーリーがメインで、なるべく平易な言葉をつかって読みやすくしてますけど・・・

以前、大原の民宿に泊まり、早起きして早朝の朝霧を眺めましたが、とても幻想的だったのを覚えています。また夕闇が迫る頃、大津の琵琶湖畔から、遊覧船を背景に比叡山方向を望む景色もなかなかのものでした。
そうそう、ベルギーのフラワーアーティストのダニエル・オストが、仁和寺で数年前に行ったフラワーイベントのドキュメント番組を再放送してましたが、ああいった素敵な試みができるのも京都ならでは。漱石は京都文化に批判的だったようですが…外側から見てる分にはいいなぁ。
あれ、あんまり記事に関係のない内容で失礼しました(笑)
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-19 12:03:44
JTさん、コメント有難うございます。先人の豊かな語彙を失いつつあるのは淋しいです。せめて読むことは忘れたくないもの。京都・滋賀などの古都の風情がお好きなようですね。外国人なら魅力を感じると思います。たまに訪れるのは別、住むと寒いし暑いし、人事面で色々面倒が多いような気がします。漱石は、京都のみならず江戸と会津をのぞくあらゆる地方[そしてあらゆる国)の文化に対して批判的だったかも知れませんね。特に妻や息子など家族には困った人で・・・それも皆かれの胃弱に源を発している?
 
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