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映画「第三の男」

1949 英 105分 原作 グレアム・グリーン 監督 キャロル・リード 出演 オーソン・ウェルズ トレヴァー・ハワード アリダ・ヴァリ ジョゼフ・コットン 音楽 アントン・カラス  鑑賞「午前十時の映画祭」松江SATY東宝

戦後すぐ作られたとは思えぬほど、今でもなお新鮮な驚きと喜びを与えてくれる名作。
軽快なテンポの音楽で始まるのは、主人公の心理状態を表すのか。

英米仏露が管理する第二次大戦後のウィーンに現れた純真なアメリカ人、ホリー・マーティンを、若々しいジョセフ・コットンが演じる。彼がたずねてきた友人ハリー・ライムは直前に姿を消している。家主や恋人、そして英国の警察や仲間らしい怪しい貴族たちの間をホリーは友人の死の真相を探し回る。

英国協会の文学講演会に講師として招かれるシーンは秀逸だ。西部劇が専門の彼が純文学の作家と間違われて、聴衆は中高年層ばかり「意識の流れとは」「ジョイスをどう思うか」とかみつくように質問する男など傑作で、このような層への原作者の皮肉が感じられる。しかしBritish Coucilは世界のどこでも、いつの時代・どんな世相でも、脈々と活動を続けてきたのだと、東京・飯田橋のそれを思い出して、懐かしく感じた。

プラーターの観覧車、並木道、猫、オウム、幼い子供、にじり寄る老人たち、開いてはしまる窓とわけのわからない言葉で文句を言う老女や中年女、地下道に追い詰められた男の指だけが出る舗道、これはワイダの「地下水道」1956に影響を与えているのだろう。

はしっこくて頭が回り、憎めない悪戯小僧が大きくなり、大人になりきれないままにちょいと金儲けしようと軽い気持ちで行った法律違反、それが重大な結果を惹き起す、というこの筋書きは、世界で起きる戦争や犯罪とは大半が「大人になりきれない悪戯小僧」の仕業ではないかと、ふと思わせるものがある。

アリダ・ヴァリ(アラブ風の名前が気になる)はこのとき28歳、若々しく、憂愁を秘めて気品がある。彼女のコートのシルエットは、地下水道のホリー・マーティンのコート姿と、直につながる。この男女は、ハリー・ライムという一人の男を愛し且つ失うという共通の経験を持つのだが、結局は墓場で出会い、墓場で別れる運命でしかなかった。舞い散る枯葉のようにはかない関係だ。
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日本インターネット映画大賞募集中 (日本インターネット映画大賞)
2011-12-26 23:19:49
突然で申しわけありません。
現在2011年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。
投票は1/19(木)締切です。
ふるってご参加いただくようよろしくお願いいたします。
なお、twitterも開設しましたので、フォローいただければ最新情報等配信する予定です。
 
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