映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「アルバート氏の人生」
2011 アイルランド 113分 アイリッシュ・フィルム・デー@STICビル 2月1日
監督 ロドリコ・ガルシア 原作 ジョージ・ムア≪The Singular Life of Albert Nobbs≫
協同製作・脚本・作詞・主演 グレン・クローズ 出演 ミア・ワシコウスカ ジョナサン・リス・マイヤーズ
原題≪Albert Nobbs≫
グレン・クローズが1982年に舞台で初演し、30年間映画化を心に温めていた作品だそうだ。
1982年と言えば性的少数者の解放運動が盛んになり始めたころだろうか。
当時ならいかにも好適なテーマだったろうという感じである。
ジョージ・ムア(1852-1933)は社会の底辺に眼を注いだ自然主義作家。時代の空気や風俗は細かく描写されている。
14歳で孤児になり、独立して生きるためと、Decency(品位、慎み)のある環境を求めてホテルのウェイターになり、男性を装って生涯をおえた女性アルバート・ノッブスの物語である。
誰にも秘密を打開けずにひたすらチップを貯め、煙草屋兼サロンを開くというささやかな夢を抱いている女主人公の実直小心な生き方は、それだけ見れば今一つ魅力に欠け、状況は似ているが大胆なペンキ屋の女性(ジャネット・マクティア)の方が共感できる。
LGBT映画祭ででも上映されれば、女性と職業・異性装・同性婚の観点から論議を呼ぶかも。
ヒロインがいつもの男装から女装にもどるシーンがあり、いかにもぎこちなく滑稽でもあるのだが、それを「彼女がやっと開放された瞬間」と言うのはどうか。伝統的に男装は動きに便利なように、女装は動きを制限するためにデザインされているので見かけはともかく着ていて不自由・窮屈、機能性がない。嘘だと思ったら一度試してみればよい。
医者が「なんという悲惨な人生」と言ったのは、女性性を殺し、男と関わらない人生を男から見てそう言ったのだろうが、男に頼りたくない女性が自分の得意な分野で生計をたて曲がりなりにも一生を全うできたのは、幸せだったと言えるのではないだろうか。最後にちょっと他人の生き方に目を奪われ、他人と関わろうとして寿命を縮めるハメになったけれど。メイドのミア・ワシコウスカは美しくて皆にモテていたが結局それゆえにつまづいてしまった。あやうく「あなたを抱きしめる日まで」のヒロインのようになるところだった。
グレン・クローズは「101」「危険な関係」「危険な情事」などもっぱら悪女役で有名だ。たまには毛色の変わった善良で純真な人物を演じたいと思うのは解らないでもない。
ジョナサン・リス・マイヤーズが出ていたけれど、放恣な子爵の役で「マッチポイント」での上昇志向の青年に比べてはまり役とは思えなかった。
仕事のために女が男装するのは「ビクター/ビクトリア」(主演ジュリー・アンドリュース)
逆に男が女装するのが「トッツィー」(主演 ダスティン・ホフマン)
どちらも「アルバート氏」初演と同じ1982年作。
ロドリコ・ガルシア&グレン・クローズ
→「美しい人」10-8-10
「あなたを抱きしめる日まで」15-2-4
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