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映画「スペイン広場の娘たち」

  ↑有楽町交通会館の大階段(映画とは関係ありません)

1952 伊 91分 白黒《Le ragazze di Piazza di Spagna》DVDで鑑賞 
監督 ルチアーノ・エンメル 出演 ルチア・ボゼー コゼッタ・グレコ マルチェロ・マストロヤンニ 

スペイン広場と言えば「ローマの休日」を思い出すが、この映画はその1年前に制作されている。外国の王女が旅の途中に自由な一日を味わう「ローマの休日」がおとぎ話だとすると、この映画は、地元の若者の日常と現実を描いている。戦後イタリアの厳しい状況のなか、すべてを笑い飛ばすユーモアと逞しさが見える。アン王女がアイスクリームを食べていた階段に、毎日午後1時5分、お弁当を食べにやってくる縫製工場のお針娘3人と、階段に接した赤い建物「シェリー・キーツ記念館」に通っている私。窓から彼女らの声が聞こえると、本を閉じて階段に出て、挨拶を交わす間柄だ。
お針娘の名はマリーサ、エレナ、ルチアである。
マリーサは弟妹が10人余もいる大家族の長女で、小学校も出ていないが、美貌とスタイルの良さを買われてモデルになり、華やかな世界を垣間見る。
エレナは公営住宅に母親と二人、つつましく暮らしている。
ルチアはちょっと少年ぽく気が強い、男友達が多いけれど、あわてんぼうで、他の2人の引き立て役のようである。ローマの終着(テルミニ)駅から郊外で降り、さらにかなり離れた厩舎に住んでいる。

マリーサはルチア・ボゼー(1931~2020)が演じている。彼女はミス・イタリアでこののちも映画界で活躍し、昨年コロナでなくなった。
エレナはコゼッタ・グレコ。彼女は陰のある風貌で「ダッカ・デル・ルーポの山賊(1952)」「ガラスの部屋(1969)」に出ている。

マルチェロ・マストロヤンニ(タクシー運転手)はもう名優の趣がある。

それぞれの娘は、様々な経験のすえ、身の丈にあった幸せに落ち着く。見るべきは、イタリア庶民の生活ぶりだ。夕暮れに老若男女が戸外に集いアコーデオンに合わせ、恋の歌や民謡を歌ったりする。日曜日には自転車をかついで競技会に出場したり。子沢山の父親は、子供の名前を覚えられず取り違えて叩いたりする。モニカの母親は、夫の墓参りに行って隣の墓に来る寡夫と恋仲になったりする。そして老若が肩を並べる夜学シーンがたびたび出てくる。戦後のイタリアが国民の教養を高めようとしていることが印象に残る。マリーサが、モデルと言えども教養が大事と言われて古本を買うシーンがあるが「共犯者」「怪物と乙女」など見るからに通俗的なタイトル。一番安い「ボルジア家」も250リラで、映画の5倍もする。日本でも戦後、印刷物が貴重品とされたことを連想させる。ルチアの相手の騎手志望の少年は背を伸ばす器具を買ったりする。ルチアはのっぽの青年とばかりデートするが、結局は彼らに失望し、帰ってくる。ちなみにキーツはかなり背が低かったそうだ。

→「ブライト・スター」10-12-11

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