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【本】佛にひかれて

著者 丹羽文雄
中公文庫 1974年 (初出 1971年)

丹羽文雄(1904~2005)の作品を読むのは初めてだ。

67歳の時書いたこの自伝は、文庫本で150頁の薄いものだが、
父、母、祖母、姉など、家族の秘密をあらいざらいぶちまけている。
4歳で家を出た母は旅役者と恋仲になって以後、波乱万丈の人生を送る。
ずっと母を恨んでいた作者が、家出のそもそもの原因は母の実母と父の不倫にあったと、ずっと後になって知るのだ。

彼の家は浄土真宗のお寺であると聞くと、納得の行く所。
家業を嫌って作家になったという丹羽だが「他力本願」「悪人正機」など
親鸞の教えに深く帰依しているのが、彼の書く姿勢にありありと表れている。
本人はそれと自覚しないで、亀井勝一郎の指摘で知ったとか。
作家にあるまじき内省しない人で「書いたあとで考える」タイプらしい。

「た。」「た。」「た。」と短文が続く文章は読みづらく、
濃厚な内容には胸が苦しくなるほどだ。
書くことで自分を救済する彼には、
読者を思いやるゆとりは無い。

と悪口を書いたが、それなら何故読んだのかといえば、
深沢七郎のせいである。彼の「生きているのはひまつぶし」
の中に「丹羽の作品を一冊だけ読むならこれだろう」
というくだりがあったので、読まざるを得なかったという訳だ。
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