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映画「マーガレットと素敵な何か」


2010 仏 89分 ★島根県民会館名画劇場★4月14日(土)2:00~ 
原題「L'age de raison」監督・脚本 ヤン・サミュエル 
出演 ソフィー・マルソー マートン・ソーカス

「分別ざかり」というサルトルの小説と同じタイトルのこの映画は「人間のもっとも分別のある年齢とは7歳である」という逆説で始まる。

子供のころの自分に今の自分を見せたらどう思うだろうか?40歳の女ざかりで仕事に恋愛にと忙しく日々を送っていると、そんな反省が心に浮かぶことも稀。しかし、ここがフランス的というのだろうか、40歳の自分に7歳のとき書いた手紙を公証人がわざわざ上京して手渡ししたら?で映画が始まる。

兄弟や幼なじみなど、7歳の時の自分に大切だったものを思い出し、自分の本当の望みを探し当てる…そういう設定は分るけれど、そのためにちりばめられている小道具とか周囲の人物が、ことごとく、浅薄で表面的な感じなので、(まさにこれが素敵と感じる人もいると想像はつくが)私の心には一向にしみない。昔「シャンソン人形」という歌があったが、その歌を聞いているかのよう。ハンサムな恋人と、(原発を中国に売るような)やり手のキャリアウーマン、女性週刊誌的な人物像だ。

彼女の映画は「ラ・ブーム2」「007 ワールドis not Enough」「女優マルキーズ」「女写真家ソフィー」など11本も見ている。しかし、見ているときは結構楽しいが、どれも記憶に残らない。よく言うと自分を出さず役になりきっていると言う事かも知れないが、彼女自身の主張がなく、人間としての存在感が希薄ということだ。

ソフィー・マルソーが17歳のころの1984年、欧州ひとり旅で出会った同じく17歳のフランス人少女に彼女をどう思うか(英語で)聞くと「Snobです」とただ一言。スノッブとは俗物ということ。確かに恵まれない生立ちからしゃにむに成功への道を駆け上り、未婚のまま2人の母にもなり、いまや長者番付に載っている彼女のその後を見ると、本質を突いた一言だったかも。自伝のタイトルが「嘘をつく女」だと聞くと本人も自覚しているのではと思われる。考えれば、人生に適応し成功するために、つまり俗物となるために切り捨てたもの=幼い日の自分を振返る、というこの映画のヒロイン像は、ソフィー・マルソーの姿とかぶるようでもある。

ところで、主人公の本名「マルグリット」は「椿姫」にも出てくる古典的なフランスの名前、それを仕事のできるイメージにと「マーガレット」と英国風に変える彼女だが、ちょうど英国ではマーガレット・サッチャーの時代。しかもこの首相は少女期にクラリネットが得意だったそうで、映画にその楽器も出てくるのがほほえましい。

→2008-11-15 ポワチエの少女
→2012-03-26 マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
お久しぶりです。 (オカピー)
2012-11-24 22:13:24
前回書き込みをしたのは二年くらい前ですかねえ。
少なくとも昨年4月に母親が亡くなるよりは前だと思います。今年6月には父も亡くなりまして、随分寂しくなりました。

本作のヒロインは勤め先は変えていないんじゃないかと思うんですよね。劇中「プラント」という言葉が出てきたので、工場や発電所などの設備を作る会社で事務系管理職をしていたのが、現場に出て行ったのではないかと思っております。そうであってもなくても、もう少し上手く作ってくれないと、最後は?で終りますね。

>ソフィー・マルソー
俗物・・・あちらの少女は言いますね^^;
僕は彼女と同じ世代ではダイアン・レインがご贔屓です。インタビューの答えなどを聞いても大変頭が良さそう。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2012-11-25 23:19:20
オカピーさま
コメント有難うございます。ご両親を続けざまに亡くされ、さぞお寂しいことでしょう。お悔やみ申し上げます。
ダイアン・レインは「リトル・ロマンス」でデビューしたんですね。オカピーさんと同世代でしたか。ソフィー・マルソーは女スパイの頭領に扮する「レディー・エージェント」を見ましたが、どう感想をいえばいいのか絶句と言う所でした。
 
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