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〔本〕黒木和雄とその時代

著者:佐藤忠男 
発行所:現代書館 
2006年8月15日刊
(図書館より)

黒木和雄は、「紙屋悦子の青春」を遺作として、今年4月に
76歳で亡くなった映画監督であり、佐藤忠男は、日本・アジア
系には特に強い映画評論家だ。

二人とも、私には気になる存在である。その二人が組み合わさったのだから、ここは見逃すわけにいかない。

黒木は1930年生まれで、満州で子供時代を過ごし、宮崎で中学を出、同志社大の政治学科を中退し、岩波映画でドキュメンタリーを作っていたが、1966年の「飛べない沈黙」で劇映画監督として私たちの前にデビューした。「飛べない沈黙」「竜馬暗殺」「祭りの準備」「Tomorrow 明日」「キリシマ美しい夏」「紙屋悦子の青春」を作った監督である。初期の多彩な実験から晩年が近づくにつれて、自分の戦争体験を語り始めたころから、親しくなった。

黒木和雄の一生を辿ることで、日本の戦中戦後の歴史、映画の歴史(とくに岩波映画とATG)をおさらいすることが出来る。

同じ1930年生まれの佐藤忠男にとっては、それは自分を語ることにもなり、興味深い作業だったろうと思う。

佐藤忠男の文章は、野球にたとえれば、打席に立ったら必ず出塁する選手のような、信頼感が持てる。もともと投稿家から出発しただけに、心をつかむ文章のうまさがある。学歴がなく(中学受験失敗後、少年航空兵で終戦、鉄道教習所を出て14歳から自活)その上地方(新潟)出身である。そのせいでもないだろうが、ひたむきに対象に迫る誠実さが感じられし、問題を見落とさない鋭さと、緻密さがある。

彼には「映画館が学校だった」と言う著書がある。(講談社文庫1985年 380円)

心に痛いように響く、好著だ。

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