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映画「鉄道員」

1956 伊 モノクロ 製作 カルロ・ポンティ 音楽 カルロ・ルスティケリ 監督 ピエトロ・ジェルミ 出演 ピエトロ・ジェルミ エドアルド・ネボラ シルヴァ・コシナ 午前十時の映画祭 松江SATY東宝

部屋の片隅で、コオロギが鳴いていた。まるで、ここが田舎の小さな映画館みたいに。
ルスティケリの美しい音楽は有名だ。あるページで、みな90点、95点、100点とつけていたが、私はまあ68点~72点。減点の分は作品の値打ちというより、ジェルミとの思想的な違い=登場人物への好き嫌いが影響している。作品は極上です!

 【ネタバレ注意です!】

勤続何十年の国鉄の機関士である父親。仕事と仲間との付き合いに明け暮れ、家庭は妻任せ。この父親と忍耐と愛情の権化のような母親とが理想的な夫婦のように見なされているのだが、私はそう思えない。亭主はどう見てもアルコール依存症、運転席でタバコはすうわ、酒は飲むわ、それで自殺志願者をはねたのは仕方ないとしても、仲間が運転を代わろうと申し出たのに拒否した挙句に、信号見落としであやうく正面衝突しかける始末。かれのアルコール依存に妻は気づいていない。左遷され、組合は守ってくれない。その組合への腹いせと、昔の特急に戻りたい気持ちもあって、スト破りをしてしまう。これでは仲間はずれになっても仕方ないだろう。聖母マリアのように(ちょっと沢村貞子に似た顔だ)静かな愛情で家族を包む母親だが、実は長男を溺愛し、スポイルしている。娘はグレて男から男へ渡り歩く。ただ末息子だけがちゃんと育っているのは、まだ小さくて父と母を尊敬しているからだろう。「自転車泥棒」の息子を連想するが、父親は対照的だ。威圧的な専制君主と気の弱い頼りない男。どちらが肌が合うかはその人の好みだが、私は後者のほうがいい。どちらにしろ、子どもに比べると情けない。あれこれあるが最後は家族も友人も和解してハッピーエンドになる。

息子のサンドロ(エドアルド・ネボラ)は無邪気ではしっこい。悪い成績表を隠したり、パチンコで人を射たり、車のガラスを割ったりする幼さとともに、兄姉や父母への観察眼と洞察力を持っていて、この映画で最も魅力的な人物。姉のシルヴァ・コシナの妖艶さをあげる人もいるかもしれないが、私は断然この子である。エドアルド・ネボラは映画には数本出ているだけで、その後の消息は不明だが、彼ならどこの世界に行っても成功するだろうと思わせる。
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