映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
A.モラヴィア「軽蔑」
2010年06月14日 / 本

映画と小説の舞台になったカプリ島
アルベルト・モラヴィア(1907~1990)著 大久保昭男訳 原題 <IL DISPREZZO> 2009年刊 初出1954年 河出書房新社世界文学全集Ⅱ-3 池澤夏樹個人編集
1963年制作の映画「軽蔑」を見たあとで1969年に本を読んだことがある。
(あら筋)シナリオライターの主人公はいつ頃からか、妻の愛が失われ、自分を軽蔑していることに気づく。それは誤解に基づくことを説明し、自分を軽蔑すべきではないと、男性得意のワザだが論理的に説得しようとするが、妻の軽蔑は益々募るだけ。現代の日本でも寝耳に水の離婚話が持上った時など、男性の心理状態がこのようになるのではないだろうか。両性の考え方や行動の仕方の違いが、くっきりと浮びあがる。
この歳になると、夫婦間のイザコザは読むだけでこたえる。主人公は2人の不和は、生まれ育った環境や価値観が違いすぎるところにあったと言う結論を下す。若いときも小説の方には感銘を受けた。18章と21章に、素晴しい文章がある。カプリ島の海を見て自殺への誘惑を感じるところ(18章)と、永遠に去っていった妻を呼び戻すために本を書こうと決意するところ(21章)は詩的な文体で感動を与える。
映画の方は、大勢が絶賛しているが、わたしは感銘を受けなかった。バルドーやミシェル・ピコリ、ジャック・パランス、更に巨匠フリッツ・ラングなどの豪華俳優陣、100万ドルの予算で、ゴダールが初めて商業大作に挑んだのだが、私にとってはそれが逆効果だったようだ。私はまだ世間を知らない理想主義者だったので、こういう大人の映画を味わうことは無理だったのだろう、と言いたいが、年齢や経験とは関係ないのかも知れない。
ところで池澤夏樹(福永武彦はかれの父親)の解説によると、モラヴィアの妻の不貞の相手が何と映画界の巨星ルキノ・ヴィスコンティだったと言う!映画にもなったモラヴィアの「金曜日の別荘で」はそれを物語っている。妻エルサ・モランテも戦後イタリアで最大の女性作家と言われ、夫と同じ全集に収録されている。→モランテ「アルトゥーロの島」10-06-24
アルベルト・モラヴィア(1907~1990)著 大久保昭男訳 原題 <IL DISPREZZO> 2009年刊 初出1954年 河出書房新社世界文学全集Ⅱ-3 池澤夏樹個人編集
1963年制作の映画「軽蔑」を見たあとで1969年に本を読んだことがある。
(あら筋)シナリオライターの主人公はいつ頃からか、妻の愛が失われ、自分を軽蔑していることに気づく。それは誤解に基づくことを説明し、自分を軽蔑すべきではないと、男性得意のワザだが論理的に説得しようとするが、妻の軽蔑は益々募るだけ。現代の日本でも寝耳に水の離婚話が持上った時など、男性の心理状態がこのようになるのではないだろうか。両性の考え方や行動の仕方の違いが、くっきりと浮びあがる。
この歳になると、夫婦間のイザコザは読むだけでこたえる。主人公は2人の不和は、生まれ育った環境や価値観が違いすぎるところにあったと言う結論を下す。若いときも小説の方には感銘を受けた。18章と21章に、素晴しい文章がある。カプリ島の海を見て自殺への誘惑を感じるところ(18章)と、永遠に去っていった妻を呼び戻すために本を書こうと決意するところ(21章)は詩的な文体で感動を与える。
映画の方は、大勢が絶賛しているが、わたしは感銘を受けなかった。バルドーやミシェル・ピコリ、ジャック・パランス、更に巨匠フリッツ・ラングなどの豪華俳優陣、100万ドルの予算で、ゴダールが初めて商業大作に挑んだのだが、私にとってはそれが逆効果だったようだ。私はまだ世間を知らない理想主義者だったので、こういう大人の映画を味わうことは無理だったのだろう、と言いたいが、年齢や経験とは関係ないのかも知れない。
ところで池澤夏樹(福永武彦はかれの父親)の解説によると、モラヴィアの妻の不貞の相手が何と映画界の巨星ルキノ・ヴィスコンティだったと言う!映画にもなったモラヴィアの「金曜日の別荘で」はそれを物語っている。妻エルサ・モランテも戦後イタリアで最大の女性作家と言われ、夫と同じ全集に収録されている。→モランテ「アルトゥーロの島」10-06-24
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
« 【映画】僕が... | 万歩計とより... » |
映画をよく観て居られるのですね。私も高校生の頃は毎週映画館へ行っておりましたが、結婚と同時にすっかり映画とはご無沙汰になってしまいました。
「軽蔑」本を読んでみたくなりました。池澤夏樹が福永の息子さんだと知ったとき、池澤の本を1冊買いましたが、まだ読まないでそのままになっています。
私の友人たちの中で夫を軽蔑していない人が居るのだろうかと見回してみましたが、残念ながら殆どおりません。長い結婚生活の中でホトホト愛想をつかしてしまったようです。理由は妻を自分の隷属物だと思っているからです。経済的な理由で別れる人はいませんが、心の中は夫への軽蔑で一杯なのです。「長生きしてやるからな」と言われて鳥肌が立ったという奥さんがいます。聞いた人は笑いながら頷いていました。
最近見たゴダールとトリュフォーのドキュメンタリーでは、「アメリカの夜」をつくったトリュフォーに、貴様は商業的だとののしった手紙を送り2人の関係は永遠に破壊されたとありましたけど、ゴダールも「軽蔑」のような商業的なも手がけてますよね???
『ドクトルマンボウ』も面白かったですね。私が一番心に沁みた航海記は水産大学の練習船「海鷹丸」の周航記でした。日下実男『海鷹丸周航記』は何度も読み返しました。なぜか悲しい時に読んだ覚えがあります。今も手元にあります。内容は忘れていますので、そのうち読み返そうと思っています。