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雪の女王 

アンデルセンの「雪の女王」は、むかし創元社の世界少年少女文学全集で
読んで以来、忘れられない一篇である。

 雪の女王は、極北の地の、氷で出来た「理知の宮殿」に独りで住んでいる。
幼い男の子カイは、街で見かけた女王の魅力に惹かれて、宮殿まで
ついて行ってしまう。というのも彼は、悪魔の鏡の破片が
目に入ったために、無邪気さを失い、幼馴染の少女ゲルダや周囲の
暖かい環境にことごとく反発するようになっていたからだ。

ゲルダはカイを取り戻そうと、苦難のすえ、宮殿にたどりつく。
カイはすっかり過去を忘れ、女王の出題したパズルを解くことに
熱中しているが、ゲルダの歌う昔の懐かしい歌を聞くと、涙があふれ、
目からあのガラスの破片を押し流す。そして床に落ちた涙がバラの花の形
になってパズルが完成する。女王の試験に及第して、お暇が出て

故郷に帰り、窓辺で昔のあの歌を歌ったふたりは、
すでに子供時代が終ったことに気づくのだった。

雪の女王は知性と自我を、幼いゲルダは無私の愛と勇気を表している
とすると、これらの相反する美点を女性の中に認め、
登場人物とした作家は珍しいのではないだろうか。
アンデルセンのばあい、世の常の男性たちと違って、
現実の女性関係に恵まれなかったことが、このように魅力的な
女性像を創り出すことを可能にしたような気もする。

【八木先生評】童話とは言いながら、これも一種の「教養小説」といえるのでしょう。1人の人間の成長を、世界の全体像として捕らえるものが、それです

文章教室 課題「雪」 作成2006年1月31日 提出2月1日 返還2月15日

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「教養小説」といえば、「ウィルヘルム・マイスター」「魔の山」などの
ご大層なイメージで、好きじゃないのですが、私が書くと、つい
こういう風なニュアンスを帯びてしまうようですね。

ところで19日(金)の毎日新聞「余録」に「雪の女王」が紹介してありました。

「美しいものは小さく、醜いものだけが大きく見える鏡を悪魔が作る。その鏡が地上に落ちて粉々に割れ、人々の目や心臓にかけらが入った。アンデルセンの「雪の女王」は、かけらを身に受けて北の果てに連れ去られた男の子カイを捜す女の子ゲルダの話だ。以下省略。」

私もこういう風に書きたかったなあ、さすがは文章のプロと、ひとしきり感嘆し、わが非力さに口惜しさを感じました。というわけで、私の手になると、薫り高い童話も、嵩だかな「教養小説」になってしまいます。これも、悪魔の鏡のかけらが私の目と心に入ってまだ取れないせいでは・・・
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