2009年 東宝 鑑賞@松江SATY東宝 131分 原作 松本清張
監督・脚本 犬堂一心 出演 広末涼子 中谷美紀 木村多江
もう、松本清張に何ということをしてくれたのかというのが第一印象。
松江の60代以上が大半の観客たちもそう思ったに違いない。
犬堂氏の生れていない50年代の東京ー金沢間の夜汽車をリアルに再現しろというのは酷だろうが、しかしこれほど時代考証を閑却してもいいのか?例えば日本で初の女性市長が1957年に金沢市に誕生したように脚色している。たしかに戦争直後、大勢の婦人代議士が誕生したが、市長は1991年に芦屋で初めて生れたのでは?
監督の犬堂氏(1960年~)は「グーグーだって猫である」の作者だが、
ホラー映画のファンであるとのこと。道理で随所(特に殺人時)にそれらしき場面が出てきた。ホラーが苦手の私としては〈!!)そして〈??〉であった。
室田社長の一家3人の描写に一番力を入れたようだが、夫の室田氏(加賀丈史)の乱暴・強欲さはいくらなんでもあんまりだ。妻の弟(崎本大海)の存在はたしか原作には無かったと思うが、室田氏と対照的な草食系男子で、これは現代人からも共感できそう。言い換えると当時にはいそうにない。
進駐軍(アメリカ占領軍のこと)のMPがパンパン狩りに出動し、日本人警官(のちの広末の夫=西島秀俊)が彼女達をかくまってやり、その後の関係の伏線になるのだが、その時MPが日本人警官を「役立たず」と殴る罵るとか、女性にも暴力を振うとか言うのは、どうにも信じられない。史料とか証言があるのだろうか。最近の刑事ドラマや、沖縄の事件と混同してはいないのかな?
広末は、主役の禎子よりも田沼久子の役の方が似合いそうだ。
その久子を演じた木村多江の英語が、前回の有馬稲子と比べて余りにも稚拙。実地に鍛えたパンパンの英語はもっと迫力があるはず。脚本家は前作を見ていないのか。
中谷美紀は容貌からしてホラー映画向きであるが、傷だらけで多人数の前に出るのはマンガである。色々な場面で、清張を換骨奪胎してマンガにしてしまったなあ、という感じだ。